写真モデル
今日はリーゼ義姉様の写真撮影の見学にマリアとエメリアの3人で来ているわ。
「わぁ!凄い綺麗!あのトレーンとベールはいったい何メートルあるのかしら?」
「あんなに長くて歩けるのですか?」
「スタッフ数名で持って移動するみたいよ」
リーゼ義姉様の撮影用ドレスはトレーンとベールが凄く長くて写真映えする様に作られてるの。
「それでは階段へ移動をお願いします」
リュカの合図でリーゼ義姉様は階段を登る。
「おっ重そうね…」
「あれは大変ですね」
数人でドレスとベールを持って移動しているわ。
そして階段を3分の2程上がった所でドレスと
ベールを階段に広げたわ。
オペラ劇場の赤い絨毯が轢かれた大きな階段に広がるドレスとベール。
赤い絨毯がウェディングドレスとベールが引き立たせている。
そして見返りのポーズを決めたリーゼ義姉様の凛とした表情。
なんて綺麗なの!
前世のウェディングポスターと同じ構図!
「「「はぁ〜綺麗〜」」」
「これは綺麗過ぎるわ」
「昨日の新聞の写真も凄かったですけど、この写真はまた一段と凄いです!」
結婚式の写真をリュカはお兄様達の許可を得て新聞社に一枚だけ売ったの。
フラワーシャーを浴びて幸せそうな笑顔の2人の写真。
新聞だから白黒なんだけど、凄く素敵な写真だったわ。
「これちゃんと色付きで飾られるんですよね!?」
「世間は驚くわよ。写真の技術だけでも驚きなのに、色付きだなんて」
「画家達が仕事が無くなると騒ぎになりそう。芸術の棲み分けが必要だわ」
「そうね。王宮画家達は声を上げるかもしれないから、対策は必用だわ」
アルに相談して絵の品評会や展示会を開こうかしら。
「リーゼ義姉様、お疲れ様です。とっても素敵でした!」
「ありがとうございますわ。でもこのドレス、とても重くて、着てるだけ疲れましたわ」
やっぱり重いんだ。
完全に撮影用のドレスよね。
でも良い写真が撮れてリュカはニコニコと喜んでいるわ。
「良い写真が撮れました。明日には店に飾れますが、その前に写真を確認しますか?」
「見たいのですが、明日から旅行に行きますし、無理ですわね。でも大丈夫ですわ。リュカさんの技術と審美眼は信頼してますわ」
「ありがとうございます」
「リュカ!私見たい!明日お店に行けば見れる?」
「そうだね。明日の朝にお店に来れる?」
「うん!楽しみ!」
「セティー様とマリア様も如何ですか?」
「「もちろん私達も行くわ」」
仕上がりが楽しみだわ。
翌日の朝私達はリュカのお店を訪ねたわ。
「「「わぁー!!!」」」
仕上がった写真を見た私達は揃って声を上げてたわ。
まず大きく引き伸ばされた写真に圧倒され、次に美しい写真に感激したわ。
長いベールとドレスの先にリーゼ義姉様が居る構図。
そして引で撮った階段全体が写っている構図の写真。
どちらも何処か幻想的で素晴らしい出来だわ。
「凄いわ!私もこんな風に撮ってもらいたい!」
「これは憧れるわね」
「セティーさんとマリアさんの写真も絶対素敵なはずです!でも、あの重たいドレスを着るんですか?」
「「うっ」」
思わず素敵!私も撮ってほしい!って思ったけど、ドレスの重さを思うと躊躇うわ。
まぁそれ以前に王族の品位とか色々と言われてしまうから無理だけどね。
「お2人の写真なら是非お願いしたいです。一生に一度ですし、普通のドレスでも良い写真が取れると思いますよ」
「そうね。私はこの国に居るうちに撮っておきたいわ。普通のドレスでもって言ったけど、どうせならこの写真みたいに撮りたいから、頑張って重たいドレスも着るわ!」
「全く同じドレスでも良いですが、せっかくですからベールやトレーンのデザインを変えてもいいですよ。ウチのデザイナーがデッサンしますので」
「そうね。後日正式に依頼するわ」
「ありがとうございます」
マリアは写真を撮る決心をしたわ。
「セティーは?セティーも撮りましょうよ!この写真は非公式の個人的な物なんだし、セティーの好きなドレスが着れるわよ」
「好きなドレス…」
前にマリア達のウェディングドレス選びで見たマダムフルールのドレス。
あのドレスが頭に浮かんだわ。
あのドレスに長いトレーンを足したら綺麗だろうなぁ。
私だって一度くらい好きなウェディングドレスが着たい。
一度は蓋をした気持ちが蘇ってきちゃった。
「少し…考えるわ」
「セティー様ならいつでもスケジュールを空けますので、撮りたくなりましたら言って下さい」
「ありがとう」
その日、リュカのカメラと写真のお店は華々しくオープンを迎え、表に飾られたリーゼ義姉様の写真はあっという間に街中の話題になったわ。
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マリアside
「それで私もリュカに写真を撮ってもらう事にしたの。せっかくだからエリザベート様の様に撮影用のドレスにするの」
「それは良いな。だが写真も良いが、直接見たいな」
「見学に来ると良いわ!」
「アルも行くか?」
「いや、私は遠慮しておく」
王宮のシャルが借りている部屋でアル様とシャルの3人でお茶を飲んでいるわ。
「アル様、セティーも写真撮影したいみたいなのだけど、我慢しているみたいなの。背中を押してあげてくれないかしら」
「セティーが…」
「王宮の人にバレるのは不味いと思ってるみたいよ。伝統とか評判を気にしているみたい」
「そうか…。」
アル様はシュンと落ち込んでいるわ。
「写真くらい大丈夫だろ。背中を押してやれ。ジルや俺達のように非公式で式を挙げれるわけじゃないからな」
ジル様はエリザベート様に内緒で非公式の結婚式を用意しているの。
それを聞いてアル様は自分もって考えたけど、厳しい現実に直面しているみたい。
護衛や側使えを下げるわけにはいかない。
ジル様の様に家の者達だけで固め、情報統制をしたいけど、政治上それも難しい。
味方側ではない大臣や皇太后陛下に漏れる可能性があるわ。
その結果、セティーが攻撃されるくらいならと、諦める事にしたのよ。
「アル様。今は貴族の令嬢であるセティーが個人的にドレスを着て写真を撮るだけ。世に出す事も無い写真だから大丈夫よ」
「セティーのウェディングドレス姿…私が最初に見るという事が叶わなくなるのか」
あぁ…それはそうかも…。
それはアル様的に嫌…よね。
「アルが来たら護衛や影からバレる可能性があるな。良い案が無いか考えるとしよう。とにかくセティーに写真を撮るよう勧めたらどうだ。きっと喜ぶだろう。自分やお前の立場を考えて我慢し続けるのでは、セティーが可哀想だろ」
「それは…そうだな。写真の事はセティーに話す」
シャルの説得のおかげでセティーも写真撮影出来そう。
セティーのアイディアを自分達ばかり実現させて後ろめたさが少しあったの。
良かった。
これでセティーが喜ぶ姿が見れそうだわ。




