結婚式(ジルとリーゼ)
お兄様とリーゼ義姉様の結婚式当日。
大聖堂の花嫁控え室を訪ねる。
「リーゼ義姉様、セレスティーヌです。入ってもよろしいですか?」
「どうぞ。ちょうど支度が終わりましたわ」
「わぁ!」
入室してすぐにリーゼ義姉様の花嫁姿が見えたわ。
ドレスの繊細なレース。
腰からお尻にかけてラインストーンの装飾。
お尻から足元へ人魚のヒレのようなフリルが広がり、トレーンが長く美しいドレス。
髪型も普段と違って、ゆるふわに巻かれ、編み下ろしているわ。
髪にもラインストーンの飾りがついてキラキラと光っているわ。
そして長く、裾には刺繍が施されたウェディングベール。
「凄く綺麗です!美しい上に上品!それでいて普段のリーゼ義姉様とは雰囲気が違いますね!」
「ありがとうございますわ。きっと髪型のおかげですわ。こんなにふんわりとさせるのに、皆が頑張ってくれましたわ」
「普段は綺麗なストレートですからね」
「褒めて頂けて嬉しいですが、柔らかい雰囲気が出せなくて、悩みの種でもありますわ」
「私はその髪が羨ましいですが、お互い無いものねだりですね」
「この髪型、セティーさんの書いた本にあったものですわ。どうしてもこの髪型にしたくて、色々と試行錯誤しましたの」
「お役に立てて嬉しいです」
「この髪型絶対に流行りますわ。他にも試したい髪型がありましたの」
そういえば髪型も書いたかも。
クラシカルなシニヨンも良いけど、編み下ろしやダウンスタイルも良いなって思ったのよね。
「セティーさんのドレスもとてもお似合いで、素敵ですわ」
「ありがとうございます。そろそろミッドランド公爵とマティアス様がいらっしゃる頃ですから、失礼しますね」
「えぇ。また式で会いましょう」
次はお兄様に会いに行きましょう。
「お兄様。結婚おめでとうございます」
「セティー来てくれたんだ。ありがとう」
真っ白のタキシードを着たお兄様は輝いて見えたわ。
「お兄様綺麗…」
「ふふ。ありがとう。でもリーゼはもっと美しかっただろう?」
「えぇ!それはもう!」
「リーゼの花嫁姿。想像するだけで胸が高鳴るけど、実際は想像の何倍も美しいのだろうな」
「お兄様幸せなのですね」
「凄くね。今私は世界一幸せな男だよ」
お兄様は幸せそうに微笑んでいるわ。
それから家族揃って少し会話をした後、私達は聖堂へ移動したわ。
「アル様」
「セティー。そのドレスよく似合っている」
「ありがとう。アル様も素敵ね」
アル様だけじゃなく、国王陛下や王妃様、それにアナスタシア姫も来ているわ。
ロイヤルティウェディングと同等の扱いなだけあって、招待客も豪華。
王宮内、社交界で地位の高い人ばかりだわ。
ちなみに、エメリアとリュカは後列に居るわ。
リュカが手配したカメラマンは既にスタンバイしているわね。
パイプオルガンの音色が鳴り響きわたる。
いよいよ結婚式が始まるわ。
ゆっくりと大聖堂の扉が開き、お兄様とリーゼ義姉様が入場してきたわ。
2人とも凄く素敵!
リーゼ義姉様の長いベールとドレスのトレーンが綺麗に床に広がり、その形を保つように2人は寄り添いながらゆっくりと歩んで来たわ。
お兄様とリーゼ義姉様、本当に幸せそうに笑っているわ。
大司教の前まで来た2人は、ステンドグラスから差し込む日の光に照らされ、輝いている。
大司教の祝詞が告げられ、誓いの宣言が行われる。
そして誓いのキスが行われ、招待客からの拍手と大聖堂の鐘の音が2人を包んだ。
はぁ。
なんて素敵なの。
2人の姿はまるでスチル絵の様だわ。
私も来年にはアルと。
あぁ待ち遠しいわ。
チラリとアルを見たら、視線に気づいてニコリと微笑まれる。
アルも同じ気持ちなのだと思うと嬉しくて、幸せな気持ちになるわ。
ミッドランド公爵とマティアス様は感極まり、目に涙を浮かべているわ。
公爵にとって1人娘だものね。
リーゼ義姉様とパーティーや茶会で色々あった事、ドレスを贈った事。
そして、お兄様の秘書になるために変装したリーゼ義姉様が面接に来た事が懐かしい。
リーゼ義姉様と会った時、まさかお兄様と結婚するなんて思いもしなかったわ。
私達は大聖堂の外に出て、2人が出てくるの待っているわ。
私達の手元にはフラワーシャワーの為の花びらが配られた。
フラワーシャワーに包まれた2人の写真、絶対新聞の一面になるわ。
「私なんだかドキドキします!結婚式って見てるだけだと思ってましたけど、こうして2人の門出にお手伝いが出来るなんて!」
「私達から花びらによる祝福って感じよね!」
エメリアとマリアが興奮気味に話しているわ。
大聖堂を出た所でエメリアやリュカと合流出来たのよ。
「あの、僕がこの位置に居て大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。ここからは伝統的な催しではないし」
リュカは不安そうに聞いてきたけど、無理もないかも。
周りは新郎新婦の家族に、マリアやヴィクトル、それにエルランジェ侯爵夫婦。
そしてシャル様が居る。
招待客の中で爵位が高い人しか居ないものね。
昔はエメリアも不安そうにしてたけど、私達と居て注目されるのに慣れたみたいね。
「そうだぞ。リュカは俺達の友だろ。それに、新郎新婦とも親しい仲だしな」
ベスタトールの結婚式は誓いのキスが終わったら新郎新婦が退場して結婚式は終わり。
招待客はその後教会から出て、夜のパーティーまで休むものなのよ。
だからここからは新郎新婦側が用意した催し物扱いよ。
だから親しい人が積極的に前に出て良いはずよ。
「鐘が鳴った!出てくるよ!」
ヴィクトルの言葉で扉を見ると、2人が腕を組んで出て来たわ。
「お兄様!リーゼ義姉様!おめでとうございます!」
私達は持っていた花びらを2人に向かって放つ。
花びらが2人を包んだ。
階段や階段下に居る招待客も私達に習って花びらを放つ。
「綺麗だわー!!」
「これ絶対に私もやるわ!」
「そうだな。楽しそうに、それでいて幸せそうな2人を見ると是非ともやりたいな」
半年後にはマリアとシャル様の結婚式かぁ。
2人の結婚式も素敵なんだろうなぁ。
ナハラセスでの結婚式も楽しみだわ。
「はぁ。やっぱり結婚式って素敵ですね。マリアさんとセティーさんの結婚式も凄く楽しみです!」
「エメリアは自分が結婚したいとは思わないの?」
「私は結婚の前にまずは官僚になる事ですよ!目指すはセティーさん付きの女官です!血統に負けぬ様に頑張らないと!」
「ありがとう、エメリア。私もエメリアが女官になってくれたら嬉しいわ」
「嬉しいです!あっだからって贔屓目で選んではいけませんよ!」
「わかっているわ」
エメリアなら絶対に実力で合格してくれるはずだわ。
でもそっかあ。
エメリアはまだ結婚する気はないのね。
もうゲーム通りではないし、残りの攻略対象者であるヴィクトルとは友情エンドみたいだわ。
他の誰かと結婚するのかもだけだど、女官の仕事をしていたら、良い出会いを逃してしまうらかもしれないわ。
もし、そうなったら私が全力でエメリアに相応しい方を探してみせるわ!
「じゃあまた、夜のパーティーで会いましょう」
「はい!」
パーティーは夜だから皆んな一度帰って支度するのよ。
リーゼ義姉様は今から我が家へ来るわ。
少し休んだらパーティーの為に支度するの。
我が家のメイド達が力の見せ所だと張り切ってたわ。
「セティー。パーティー用のドレスは公爵家に届けてあるから」
「ありがとう。それじゃあまた夜にね」
「あぁ。支度等で忙しいだろうが、休める時に体を休めてくれ」
「えぇそうね。今日は私も忙しくなるもの」
屋敷に帰ったら家の使用人達は慌ただしくパーティーの準備を行っていた。
「お嬢様!若奥様をお迎えする前に入浴されますか?」
「そうねお願いするわ。あっリーゼ義姉様が来られたらすぐに支度に入られるよう準備しておいてね」
「それはもう既に完璧揃えているようです。もし手が足りない場合は私達の誰かがサポートに行かせて頂きます」
リーゼ義姉様を迎える為の部屋、今日着るドレスや髪型等は何度も確認したわ。
入浴後、パーティーまで時間があるから普通のドレスを着て、リーゼ義姉様を出迎える。
使用人達が左右一列に並び、リーゼ義姉様とお兄様を迎え入れる。
「我がマルヴィン家へようこそ」
「今日からここが貴方の家よ。新たに義娘が出来て嬉しいわ」
「不束者ではありますが、よろしくお願い致します」
「リーゼ義姉様!さっそくお部屋へ案内させて下さい」
両親とリーゼ義姉様が挨拶をして、私達兄妹がリーゼ義姉様を部屋へ案内するわ。
「ジルとセティーさんに直接案内して頂くとは思ってませんでしたわ」
「私とお兄様で家具を決めたので、好みとズレていたら遠慮なく言って下さいね!」
「そんな、恐縮ですわ」
お兄様が部屋の扉を開け、中へ案内する。
「!?まぁ…」
気に入ってもらえたら嬉しいのだけど。
目指したのは大人可愛い部屋。
くすみピンクやライトグレーを基調にクラシカルな家具を使ってシックな姫系の部屋にしたのだけど。
「素敵ですわ…(凄く可愛いですわ!)」
「気に入ってもらえて嬉しいです」
「ありがとうございますわ。全ての家具が素敵ですわ」
「気に入ったようで良かった。リーゼ付きのメイドが挨拶に来るから部屋でゆっくり待ってて。それじゃあまた夜に。楽しみにしてるよ」
「私も失礼しますね」
「えぇまた夜に」
気に入ってもらえて良かった。
「気に入ってもらえて良かったですね」
「セティーのおかげだよ。さぁセティーも支度の前にゆっくり休んで」
「はい」
仮眠をとって、パーティーの支度をして、お客様をお出迎えするわ。
招待客が全員会場に入り、パーティーが始まるわ。




