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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
203/235

答え合わせ/結婚式目前

私はすぐにアル様と会ったわ。


「もうすぐジルとエリザベート嬢の結婚式だ」

「えぇ!凄く楽しみだわ!」

「大聖堂での結婚式は数年振りだ。王都の民も待ち遠しいようだな」

「看板が出てたわ。記念品も売られてて、お祭りみたいね。ウチの領地の住人達は今から盛り上がっているわ」


お兄様の結婚式は本当に楽しみ。

そして自分達の結婚式も待ち遠しい気持ちでいっぱいだわ。


さてと。

アル様と一緒に楽しくお茶を飲める貴重な時間だけど、聞かなきゃ。


「アルに聞きたい事があるの。レニーさんは例の事件の犯人の1人だったの?」


私はジッとアル様の目を見て伝えた。

アル様は一呼吸ついて答えてくれた。


「やはり…気づいてしまったのだな」

「マリアが王都から少し離れた街でレニーさんを見たの。急に居なくなったし、婚姻や出国の記録が無かったから、私達は家を追い出されたのだと考えたわ。結果として、例の事件の犯人かもと考えたわ」

「そうか。やはり王都追放ではすぐに見つかってしまったか」


アル様はまた溜息をついたわ。


「王都追放がレニーさんへの処罰なの?」

「あぁ。身分剥奪の上、王都追放とした」

「クリスティーヌ様とは処罰が違うのね」

「罪状は公爵令嬢殺害未遂だ。誘拐とは罪が違う。極刑にならないだけマシだ。それに、クリスティーヌは本来領地幽閉、生活の保障があるとは言え、一生飼い殺される生活。一方、身分は平民になり、保障は無いが、自分自身でどうにかすれば自由に生きていける」

「どちらの方が良いとは、言い難いと思うわ」

「レニーはクリスティーヌの方が罪は軽いと取った様だ」

「そうなの。でもレニーさんは私を恨んで行った事じゃ無いと思うから、情状酌量の余地はあったと思うわ」


アル様は頭をに手を置き、再び溜息をついた。


「やはりか。優しいセティーの事だから、処罰された者へ罪悪感を抱いてしまうかもしれないと懸念した。実際、あの者はセティーに慈悲を掛けてもらおうとした」

「そうだったの!?」

「おそらくクリスティーヌへの慈悲があったと知っていたのだろう。自分も慈悲を掛けてもらえると思ったのだろう」


アル様、怖い顔してるわ。


「私の為に怒ってくれてありがとう。そうね。知ったらきっと、クリスティーヌ様と同じ様に条件を出したかもしれないわ」


アル様とお兄様は嫌よね。

クリスティーヌ様の時だって本当は反対したい気持ちが強かったはずだもの。

私から遠ざけたかったはずだわ。

溜息が多いのは、私を心配してくれている事への反応だもの。


アル様とお兄様には、余計な心配を掛けてしまっていたのね。

私も厳しく切り捨てることが出来るようにならないと。

王太子妃が務まらないわ。

きちんと裁けないと見なされるのは困るわ。


「アル。心配を掛けてごめんなさい。私も時には心を閉ざして罰していかなきゃいけないわ。今後は無闇に慈悲を掛けないと約束するわ」

「公的な場ではそうしてほしい。セティーの優しい所、私は好きだ。だが、その優しさを利用されるのは我慢がならない」

「ありがとう…アル」


それからアル様に休暇中に生徒がレニーさんを見たら学園は騒然としたり、探りを入れる人が出ると伝えたわ。


「しばらくは話題になるだらうが、すぐに新しい話題が出来るさ。何より皆、卒業後の結婚準備に忙しいだろう。早期卒業をする者は特に忙しい。他人の没落を探る余裕はないだろう」

「そうかもしれないわね。レニーさんの友人達は熱心に調べるかもしれないけど」

「そのうち社交界にも知れるだろう。そうなれば、家の者が止める筈だ。嫁入り前の大事な時だ。悪縁は断ち切っておきたいはずだ」


身分剥奪された方と親しかった事で嫁ぎ先で非難されても嫌だものね。

貴族社会は見栄や肩書きが大事だし。


「よし。もし何か聞かれても知らないで通しきるわ。王家から情報が回ってきていないと思われても構わないわ」

「そうなったら教える義務はないとだけ伝えれば良い。真摯に相手にする必要はない。そんな事でセティーの評価は下がりはしない」

「ありがとう。そう言ってもらえて安心するわ」


学園内での評価とは言え、社交界、市民からの評価に関わってしまうもの。

相談や助けを求める者を蔑ろにするなんて言われたり、王太子妃に相応しくないと思われてしまうわ。


「話はまとまったな。ジルには私の方から話しておく」

「ありがとう。お兄様、連日王宮に泊まり込みで忙しいみたいね」

「いや、泊まり込むほどではないはずだ。結婚式数日前から長期間の休みを確保する為だろう」

「それなら良かったわ。そうよね、仕事に邪魔されたくないわよね。ハネムーンはゆっくり2人で各地を巡って来るって言ってたわ」

「他国へも行くようだな」

「えぇ。リーゼ義姉様のお母様の母国へも旅行する予定よ。結婚後はゆっくり外国へ旅行に行けないかもしれないから、この機会に行きたい所へは全て行く事にしたみたい」

「はぁ。その為に2ヶ月以上も休みを取るとはな。ジルの部下は今から覚悟した方が良いな」


確かに上司が長期間不在だなんて不安よね。

ただでさえ忙しいのに、お兄様がこなしていた分も仕事が回ってくるし。


「でも旅行の予定を立ててる2人はとても楽しそうなの」


お兄様もリーゼ義姉様もお土産をたくさん買って来るって言ってくれたから楽しみだわ。


「私達のハネムーンはジル達程期間は長くはないが、他国を訪れてみようか?」

「国家間のやり取りも必要で面倒にならないかしら?」

「複数の国は難しいが、2カ国ぐらいなら調整がつくだろう」

「いいの!?嬉しいわ!」


結婚したら公務以外で他国へ行く事が出来ないだろうから、嬉しいわ。

きっと来賓扱いで、パーティーへの参加もあるだろうけど、旅行だから少しは自由に観光出来るだろうし。


「あっでも、休みを確保する為にお兄様みたいに頑張り過ぎないでね」

「そこは頑張らせてほしい所だが、そうだな。セティーを寂しがらせない程度に頑張るとしよう」

「もうアル様ったら!」

「セティー」


2人きりなのに、照れてつい様付けで呼んじゃったわ。


「ごめんなさい。まだ咄嗟に敬称を付けちゃうみたい」

「セティー。まさか心の中でも敬称ありで呼んでいないだろうな」

「それは…目下修正中よ」


バッバレてるわ。

でも慣れなきゃね。

心の中でも敬称ありで呼んでると聞いてシュンとしてしまっているアルのためにも!


----------------------|


お兄様とリーゼ義姉様の結婚式まであと1週間。

私はミッドランド公爵家でリーゼ義姉様とお茶をしているわ。


「いよいよ結婚式ですね!」

「えぇ。先程ドレスの最終確認をしましたの」

「あぁ早くリーゼ義姉様の花嫁姿が見たいです」

「ふふ。そう言って頂けて何よりですわ」


お兄様もようやく仕事を休む事が出来て、式に向けて身体を休めてるわ。


「リーゼ義姉様は疲れてませんか?花嫁修行以外に連日お茶会に呼ばれてましたけど」

「ありがとうございますわ。お茶会は花嫁修行の一貫ですし、羨望と嫉妬の両方の視線を浴びて中々楽しかったですわ」

「嫉妬の視線が楽しいですか…」

「えぇ。嫉妬の視線でジルを諦める事が出来ていない人を知れますわ。ジルと私が結ばれるだなんて思ってもみなかったという人は多いですし、そんな人達に思う存分幸せだと伝えるのが楽しいですわ」

「つっ強い…」

「まぁ公爵令嬢で、次期公爵夫人ですもの。表立って私を害そうとする人が居ないから出来る事ですわね」

「それもそうですけど」

「お茶を掛けられたり、ジルを私から奪うと宣言されるくらいの事は覚悟してましたわ。でも実際は睨まれるだけで終わりでしたわ」

「リーゼ義姉様を睨むなんて相当ですけどね」


身分制度の頂点側の人間を睨むなんて、普通しないわ。

相当な嫉妬ね。


「結婚式の2日後にカメラモデルの撮影を行いますの。よろしければ観に来られます?」

「是非!撮影用のドレス姿も楽しみなんです!」

「ふふ。ありがとうございますわ。私としては、セティーさんのドレスが気になりますわ。アルベルト王子とお揃いなのでしょう?」

「そうですけど、主役はお兄様とリーゼ義姉様なので、派手にはしませんよ」

「ですが、王子は正装ですもの。という事はセティーさんは初めて王家の正装に合わせたドレスを着用するのでしょう?楽しみですわ」


アル様の正装と同じデザインのドレスを着る事になってるわ。


「当日の朝、控え室に伺って良いですか?」

「もちろんですわ!是非お越し下さいませ。私もじっくりセティーさんのドレスを見たいですし」

「ありがとうございます!」


ゆっくりリーゼ義姉様の花嫁姿が見れるわ。

もちろんミッドランド公爵家の方々の迷惑にならないようにするけど。


そうしてお兄様達の結婚式前夜となったわ。

今日は家族揃って食事をしているわ。


「ついにジルも結婚かぁ」

「大きくなったわねぇ」


お父様とお母様が感慨深そうに呟く。


「あのですね。私はとっくに成人を過ぎている上に、お2人が私を産んだ年齢も超えてますが」


お兄様は呆れた顔をしているわ。


「まぁ良いじゃないか。ジルが一人前になるのは変わりないのだから」

「はぁ。セティーの時は号泣するのでしょうね」


お父様はお兄様の言葉を聞いてワインを煽って叫んだわ。

「セティーはまだまだ父様の娘だー!嫁ぐだなんて許さなーい!」

「ゆるちゃなーい!」

「「「……」」」


お父様が叫んだ後、レオ君がお父様の真似をして声を上げたわ。


私、お兄様、お母様は呆れて言葉が出てこなかったわ。


「おぉ!レオは父様と同じ気持ちなんだね。お姉様にはずっとずっと後の屋敷で過ごしてもらおう!王宮には通いで良いだろう」

「あい!」

「お父様!レオ君!良いわけありません!私は来年の卒業後嫁ぎますからね!」

「あぁー!後1年でセティーが結婚だなんてー!!」


全く明日はお兄様の結婚式だというのに。

お父様ったら相変わらずだわ。


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