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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
202/235

帰国

リーファン姫がベスタトール国に来て数ヶ月。

他の姫は既に帰国している。

現在は自国に戻り、世話役を行った家の令息と文通している。


リーファン姫はテストで上位に入るほど勉学に打ち込み、その姿は他の生徒達へ良い影響となった。

そのため、学園側から滞在期間を延長してはどうかと打診され、リーファン姫は喜んで滞在期間を伸ばした。


学年末試験も終え、間もなく学園は休みに入る。

生徒達は王都の屋敷や領都へ帰る準備を始めている。

そんな中、リーファンも姫国へ帰る為の荷造りをしている。


「本当に帰ってしまいますの?」


荷造りをしているリーファン姫にクリスティーヌが話しかけた。


「延長に延長を重ね、随分長く居てしまいましたから。流石に父も心配していますし」


リーファン姫の帰国にクリティーヌは焦っている。

リーファン姫とカミーユがまだ恋仲へと発展していないからだ。

度々アルベール家でお茶会を行い、リーファン姫とカミーユが話す機会を作り、時には2人でオペラや美術館へ行くよう仕向けた。

そのおかげか2人はとても仲が良くなった。

今では、クリスティーヌが促さずとも2人で楽しく会話するほどだ。

しかし、恋仲にはなっておらず、侯爵からせっつかれていた。


リーファン姫が帰国する前にどうにかして2人の仲を深めさせようとするが、最近のカミーユは休日になると出掛けて留守にしていた。


「お義兄様!やっと会えましたわ!ここ最近ずっと留守にしておりましたが、お仕事ではないですわよね。私ずっとお義兄様に会う為に帰ってきてましたのよ」

「ごめんね。ずっと私用で出掛けてたんだ。でも、もう用事は終わったよ。それで僕に用って何かな?」

「リーファン姫が帰ってしまいますわ!お義兄様も引き留めて下さいませ!」

「え?どうして?期末試験も終わって学園は長期休暇に入るんだから、帰国するのは当然でしょう?」


クリスティーヌの言葉にカミーユはキョトンと不思議そうな顔をする。


「お義兄様は寂しくないのですか?」

「王族の留学には国家間のやり取りが必要だし、元国王陛下はリーファン姫をこれ以上外に出さないだろうから仕方ないよ。寂しくはなるけど、手紙のやり取りは出来るよ」


カミーユの言う事は至極真っ当である。


「クリス。前々から感じていたけど、リーファン姫と僕をくっつけようとしてる?」

「そっそれは…。お義兄様にはレニーではなく、一国の姫であるリーファン姫が相応しいと思ったからですわ!」

「そう。クリス、恋愛は当人同士が気持ちを向けていなければ成立しないよ」

「でっではリーファン姫以外に良いと思う女性は居ますの!?」

「そのような女性は居ないよ」

「ではリーファン姫のこと、お義兄様はどう思っておりますの!?」


クリスティーヌの質問にカミーユはしばらく考える。


「美しいのはもちろん、勤勉でとても一生懸命な方。僕や母さんと同じような感性や価値観で、話していると安心するし、面白い方だと思うよ」

「まぁ!好印象なのですわね!」

「だけど、僕もリーファン姫もお互いに特別な気持ちがあるわけじゃないよ」

「そっそんな…でっでも気持ちが恋愛に発展するかもしれませんわ!」

「無いとは断言しないけど。やっとレニーの事、心の整理が出来そうなんだ。今はまだ他の方をなんて考えられないよ」

「そう…ですの。わかりましたわ。ですが、せめてリーファン姫の御見送りには、居らして下さいませ(レニーったら忌々しい…居なくなったというのに、どこまでも邪魔な存在ですわ!)」

「うん。見送りはさせて頂くよ」


数日後。

いよいよリーファン姫が帰国する日となった。

港には見送りにクリスティーヌやカミーユの他にセレスティーヌ達も来ていた。


「クリスティーヌ様、カミーユ様。お世話になりました!とても楽しい日々でした」

「お気を付けてお帰りください」

「もっと居たらよろしいのに」


リーファン姫はカミーユとクリスティーヌと握手を交わし別れの挨拶をする。

その際クリスティーヌに耳打ちをする。


「実はセレスティーヌ様が正式に留学出来るよう、国に手紙を書いてくれました。父の説得が必要なので、まだ確定はしてませんが、私は来年もここで学びたいと思っています」

「まぁ!お待ちしてますわ!(癪ですが、セレスティーヌ、ナイスですわ!まだチャンスはありますわね!)」


「セレスティーヌ様、ありがとうございます。またこの地に来られるよう、頑張ってみます」

「またお会いできる事を楽しみにしております。少しでもお力になれればと思い、新たに書状も送りました」

「わぁ!ありがとうございます!」


リーファン姫は船に乗り込み、港が見えなくなるまで手を振り、国へと帰っていった。


「クリスティーヌ様」


リーファン姫の見送りが終わり、セレスティーヌはクリスティーヌに声を掛けた。


「なっ何かしら?セレスティーヌ…さ…ま」

「!?」


始めてクリスティーヌから敬称を付けて呼ばれた事にセレスティーヌは驚いた。


以前とは違い、他の令嬢や義母には敬称を付けて呼ぶ事が出来ていたが、セレスティーヌやマリアに対しては昔からの凝り固まった感情から敬称を付けて呼ぶ事が出来なかった。

しかし、公の場で今までの様ではいけないとクリスティーヌも理解しており、ぎこちなさはあるものの、セレスティーヌに対して敬称を付ける事が出来た。


「お聞きしたかもしれませんが、リーファン姫が新年度から留学される可能性があります。留学されるとなったらリーファン姫の世話役を、再びお願いするかもしれません」

「私とリーファン姫は旧知の仲となりました。私以外に相応しい者はおりませんわ。もちろん引き受けますわ」

「そうですか。ありがとうございます」


------------------------------

港から帰りってマリア達とお茶会をしているわ。


「それにしても驚いたわね。クリスティーヌがセティーに敬称を付けて呼ぶなんて」

「そうね。思わず固まっちゃいそうになったわ」

「セティーさんが言ってだ通り、クリスティーヌ様は良い方へ変わってきましたね」

「そうね。一時はどうなるかと思ったけど。リーファン姫からも良い影響を受けて、成績も持ち直しいるし」


更生に一歩近づいたかしら。


「良かったわねセティー。私は後一年の付き合いだけど、セティーは今後も顔を合わさないといけないもの。王太子妃になっても今までの様な態度を取れたら困るもの」

「そうね。他の令嬢達へのは示しがつかないし、嗜めて揉めるのも面倒だわ」


「リーファン姫、留学が決まると良いですね」

「難色を示してるのは元国王陛下だけみたい。国としては留学は問題なさそうよ」

「娘可愛さに手放したくないのね」

「カミーユ様との関係が気になるみたいよ。他の姫はともかく、リーファン姫はまだ嫁に出すつもりは無いみたいね」


「カミーユ様と言えば、レニー様の事、わかりました?」

「それが…全くなのよ。レニーさんの婚姻の記録があると思って閲覧の許可を取って調べたけど、何も無かったのよ」

「それって、国外に嫁いだのではないのですか?」

「そう思ったのだけど…それならそれで、出国の記録があるだろうし」


「あっあのね…」

「ん?マリアどうしたの?」


マリアが言いづらそうな表情をしているわ。


「マリア、何か知ってるの?」

「少し離れた街でレニーさんを見たの。カフェの制服を着ていたわ…。たぶん…街で働いているのだと思うの」

「どう言う事ですか!?」

「結婚相手の領地で事業に関わり、働く事もあるでしょうけど、街のカフェでなんて有りはしないわ」

「だから私、結婚したんじゃないのかもって思ったの。セティーから記録が無かったと聞いて確信したわ」

「結婚でなければ、どうして街で働いているのでしょう?」

「あくまで、私の推測だけど…家を追放されたのだと思うの」

「「えぇ!?」」


私とエメリアは驚きの声を上げる。


家を追い出されるなんて、よっぽどの事だけど、一つだけ…一つだけ心当たりがあるわ。


私が誘拐された事件。

クリスティーヌ様の他にもう1人犯人が居る。

まさか…レニーさんが…。


あの事件は表に出せない。

だから秘密裏に処罰されたのだとしたら、レニーさんが急に居なくなった事に納得が出来るわ。


家を追い出されて、生きて行く為に街で働く事になった。

子爵家の面目を保つ為に嫁いだ事にされた。

急な退学も、嫁いだ記録が無いのも、言われてみれば辻褄が合うわ。


「セティー。私は例の事件に関わっていたのだと思うの」

「そうね。私もそう思うわ」

「でっでも、レニー様はセティーさんにどんな恨みを!?」

「セティーに恨みは無くても、クリスティーヌにはあるわ。学園でクリスティーヌの為に動いていると聞いてずっと疑問だったの。彼女はクリスティーヌに対して、幼い頃からの恨みがあるはずだから…。きっとクリスティーヌの罪を重くする為に…」

「そっそんな…。セティーさんは関係ないのに…」


暗い雰囲気が流れるわ。


「犯人の証言だけど、ハッキリとセティー殺害する事を依頼していないあたり、計算高いと思っていたの。捕まっても自分の罪が重くならないようにしている気がしていたの」

「マリアの言う通り、公爵令嬢殺害を手引きするなんて、死罪になってもおかしくないわ」


もし本当にレニーさんがもう1人の犯人なら、アル様とお兄様が関わっているはずだわ。


「アル様にレニーさんについて聞いてみては如何ですか?」

「えぇそうね。あっそういえば…アル様はレニーさんを積極的に調べる事に反対だったような…」

「それは…この仮説が当たりって事ですかね?」

「何にせよ確認した方が良いわ。長期休暇中に学園の生徒が訪れて、知られたら騒然とするわ」

「そうね」


王都から少し離れた街なら領地へ帰る人が見かける可能性がらあるもの。

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