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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
198/236

エスコート②-刑罰-

会場の片隅で東の国の第6.第8の姫がリーファン姫に詰め寄っている。


「どういう事ですの!?どうして貴方がカミーユ様にエスコートされていますの!?」

「クリスティーヌ様にお願いして抜け駆けしたのですか?」

「えっと、これにはワケが…」

「それにそのドレス!まさか、お父様が用意した物ですの!?」

「お姉様、ドレスだけではありませんわ。飾りだって見た事無い物です」

「お父様からこっそり金品を渡されていましたのね。いつだって貴方には甘いですものね!」

「いっいえお父様が用意して下さったものでは。これにもワケが…」


リーファン姫はドレスや飾り、それにカミーユのエスコート。

これら全てにクリスティーヌによる計らいによるもので、クリスティーヌに迷惑が掛かってしまうのではと心配し、上手く説明出来ずにいた。


「お父様の寵妃である母親そっくりの姿。お父様がこっそり貴方を贔屓していたのは知ってますわ」

「お父様ではないなら、城の騎士あたりではないかしら?殿方に好かれる容姿ですもの。流石は『妖精姫』と言われるだけありますわ」


リーファン姫は自国の王宮内での地位は高くなく、母親と共に畑仕事も行う、気位の高くない姫である。

それに加え妖精の様な容姿から爵位や位の低い騎士から人気があった。


普段の装いから、リーファン姫は扱いが低いと思われるが、他国と争いをしていた事もあり、他の姫達も同様に潤沢な資金を渡されていない。

単純に母親である妃の資金力の差である。


リーファン姫の母親の実家は爵位こそ伯爵であるが、貧乏であった。

そのため病弱であった母親はまともな治療が受ける事が出来なかった。

元国王に見初められ、皇妃となる事で治療を受ける事が出来たが、流行病で亡くなってしまった。


娘が皇妃となる事で実家は持ち直しはしたが、戦争もあり、リーファン姫を支援する程の余裕は無かった。


リーファン姫の母親を、深く愛していた父親である元国王は、リーファン姫の事も愛していた。

金貨を直接渡さずとも小さな宝石や調度品を渡していた。

国王を退位し、移り住んだ宮殿はリーファン姫の住む宮殿の近くである。

愛する娘と一緒に過ごしたいという表れだった。


王宮の者にとって、リーファン姫は地位や力こそないが、父親である元国王に愛されている姫という認識があった。

その為他の2人の姫はリーファン姫に負けないようにと母親から資金を渡されていた。


「あっあの、このドレスは元々クリスティーヌ様が着る予定だったもので、欠席のクリスティーヌ様に代わり、宣伝の為私が着る事に。カミーユ様のエスコートもクリスティーヌ様の心遣いですので…」

「やっぱりクリスティーヌ様に取り入ってましたのね」

「そっそんな事は…」


実際、クリスティーヌに良くしてもらっていると思っているリーファン姫は、姉妹である姫達に強く言えなかった。


「姫君達、そこまでです」

「「カミーユ様!」」


カミーユは仕事関係の話で場を離れていたが、騒ぎを聞きつけリーファン姫の所へ戻ってきた。


「今回はそもそもクリスが体調を崩した事が理由です。ドレスは広告塔になる事を約束していた為、リーファン姫に着て頂くよう、クリスが頼んだのです。その際に私がリーファン姫にエスコートを申し入れました。リーファン姫は我々の都合に巻き込まれたのです。ですからリーファン姫を咎める様な発言はお控え下さい」

「わっわかりましたわ。リーファンごめんなさいね」

「わっ私は大丈夫です」


「リーファン姫大丈夫でしたか?1人にして申し訳ありません」

「だっ大丈夫です!それより私のせいでお仕事のお話が途中なのではありませんか?」

「仕事の話は終わりましたので、ご心配には及びませんよ」

「それなら良かったです」


カミーユはリーファン姫に一礼をする。


「リーファン姫。よろしければ私と一曲ダンスを踊って頂けませんか?」

「えっあっあの私あまり上手くないですよ?」


リーファン姫は戸惑いながら不安そうに答える。


「私がちゃんとリードしますよ」

「でっではお願いします」


カミーユとリーファン姫のダンスは注目を集めた。


実際リーファン姫はカミーユの足を踏まないように踊るのに精一杯であったが、カミーユのリードにより、側からは綺麗に踊れている様に見えている。

また踊りで揺れる度にドレスの飾りが煌めき周りから賞賛の声が上がる。


「リーファン姫」

「なっなんでしょう?」

「心配せずとも、お上手ですよ。ですから、楽しんで下さい」

「あっ。そうですよね。私ったら、せっかくのパーティーなのに」


リーファン姫の国は戦争をしていたため、パーティーが開かれる事は少なく、人前でダンスを踊るのはこれが初めてであった。


「ダンスはどうでした?」

「緊張しましたけど、カミーユ様のおかげで楽しかったです」

「それは良かった。喉が渇いたでしょうから、シャンパンでも飲みましょうか」

「はい!是非!」


カミーユはボーイにシャンパンを頼み、リーファン姫をソファの方へとエスコートする。


「カミーユ様」


会場の隅に置かれたソファの近くでカミーユは呼び止められた。


呼び止めたのはレニーだった。


カミーユはレニーの呼び止めを無視し、リーファンをエスコートし続ける。


「カミーユ様お話を。お願いします」


レニーは必死にカミーユを呼び止めるが、それでもカミーユはレニーに応えようとはしない。


「カミーユ様…お話をしなくてよろしいのですか?私ならここで座って休んでますから」

「彼女と話す事はありません。それに、貴方を1人にする方が心配です」


カミーユはチラリと周囲を伺うとリーファン姫に近づきたい男性が複数人居るのを確認した。

パーティーや男性に慣れていないリーファン姫では、上手く対応出来ないだろうとカミーユは考えている。


そして自分とレニーの様子を伺う女性達の視線も感じていた。

とはいえレニーが近くに居ては落ち着かない為、カミーユはレニーに冷たく言い放つ。


「君と話をする様な事はない。今後気安く話し掛けないでほしい(ここで話をするべきではないし。それに、ここで突き放してレニーとの関係に区切りをつけないと)」


カミーユの言葉にレニーはショックを受け、その場に立ち尽くす。


「(もしかして彼女はクリスティーヌ様が言っていた…)」


リーファン姫は、レニーがクリスティーヌが言っていた、カミーユの恋人だと風聴している人物なのだと勘づく。


ボーイが持っきたシャンパンを2人で飲むが、レニーが近くでこちらを伺っているので落ち着かない。


「(シャンパンはとても美味しいけど、これでは落ち着きませんね。カミーユ様の手助けをしなければ。)カミーユ様、よろしければお母様をご紹介して頂けませんか?お庭のお話が出来たら嬉しいのですが」

「母も姫とは話しが合いそうです。早速紹介させて下さい」

「はい。お願いします」


カミーユは父親と一緒にいる母の元へリーファン姫をエスコートする。

その際2人はレニーの横を何もなかったように通り過ぎた。


レニーも流石にアルベール侯爵と夫人の前に現れる事は無く、穏やかな雰囲気でカミーユは母親をリーファン姫に紹介し、2人は畑の話しで盛り上がった。


「アルベール家はカミーユ様の伴侶にリーファン姫をお考えなのかしら」

「夫人との相性も良さそうですし、次期侯爵夫人になられるなら、リーファン姫は身分的にも適してますわ」

「それにしても。あの令嬢は何を勘違いしているのかしら」

「カミーユ様と本当は親しくないのではありませんか?」

「クスクス。クリスティーヌ様の側にいただけで、カミーユ様とも親しいと勘違いされたのでしょう」


レニーはこの会場内で居場所を無くしていた。

友人達もカミーユとのやり取りを見て、レニーが恋人だと言っていたのは噂通り嘘なのではと感じていた。


このパーティーでカミーユとの仲を取り戻そうと必死であったが、無理だと悟ったレニーは静かに会場を出た。


「令嬢。御同行をお願い致します」


会場を出て馬車へ乗る前にレニーは騎士に話し掛けられた。


「私を何処へ連れて行こうと?」

「私の口からは何も。御同行願えない場合は連行する様にと仰せ使っています」

「わっわかりました」


レニーは王宮の一室に通された。


「あっあの…」

「こちらでしばらくお待ち下さい」


そう言って騎士は退室した。

騎士は部屋の前で待機し、レニーが逃げない様に監視している。


時間が経過し、パーティーが終わり、出席者が帰宅した頃。


「時間になりました。御同行願います」

「あっあの。ここは…」


レニーが連れてこられたのは、王宮から少し離れた塔だった。


セレスティーヌの件で裁かれるならば、司法の所へ連れて行かれると思っていたレニーは不安が込み上げる。


「お連れしました」

「ご苦労。控えていてくれ」


「!?」


塔の部屋に入り、レニーの目の前には、アルベルトとジェラルドが居た。


「呼ばれた理由はわかっているな」

「はっはい」


カミーユからこの2人に話が伝わっているのだと察し、やはり自分がここに呼ばれたのはセレスティーヌの件だと察した。


「ではさっそく罰を言い渡そう」


アルベルトとジェラルドにより冷たい視線が注がれ、レニーは小さくなり震えている。


「身分剥奪のうえ王都追放とする」

「そっそんな!?重罪人に科せられる罰ではありませんか!?」

「お前は高位貴族令嬢の殺害未遂という重罪を犯した」

「元々はクリスティーヌのせいなのです!」


「本来なら髪を落とし、重罪人の烙印を押したのち、国外へ追放に処す所だ」

「!?」


重罪人の烙印は一生付き纏う。

平民よりも低い立場となり、人としての幸せを望む事が難しくなる。


「どうして…クリスティーヌはそこまで重くない罰なのに」

「お前の方がセティーに危害を加える内容を依頼した」

「そんな…」


レニーはその場で力無く座り込む。


「それに彼女も領地幽閉の刑罰だ。王都追放と同じだ」

「でっでも貴族の身分は保証されているではありませんか」

「侯爵令嬢と子爵令嬢。身分の差だ」

「クリスティーヌは侯爵家の血を引いてません!母親が不貞を犯して生まれたのです!」

「例え血筋が違っていてもあの者は侯爵家の人間だ。それに、侯爵の血を引かないという事実を我々に伝えたとて、自身の刑は覆る事はない」


アルベルトの言葉にレニーは項垂れる。


「子爵は貴方を既に除名をする事を受け入れました。一度屋敷に戻らせてあげますので、身支度し、速やかに王都から消えて下さい」


ジェラルドは満面の笑みでレニーへ伝える。


「!?そっそんな…いきなり放り出されて、どうやって生きていけば…」

「まぁ持てるだけの金品を持ち出す事ですね。それが尽きたらどうなるかは、自分で考えて下さい」

「そっそんな!そっそうだわ!セレスティーヌ様にお目通を!」


レニーはクリスティーヌが学園で更生出来る様にとカミーユから願われ、更生出来たら処遇が変わるかもしれないとの話から、クリスティーヌにはセレスティーヌからの慈悲があったと考えた。

そして自分もセレスティーヌに慈悲を願い乞いたいと考えたのだ。


「そうです、この件は公に出来ないのですよね。その分私の刑が軽くなっても良いのではありませんか?セレスティーヌ様ならきっとお慈悲を掛けて下さいます」


セレスティーヌの名前を出した事でアルベルトとジェラルド2人から、より一層冷たい視線が注がれた。


「連れて行け。本日中に王都から出て行くように」

「そっそんな…イヤァー!」


レニーは控えていた騎士によって連行され一度屋敷へと帰った。


「子爵家の領地に身を寄せると思うか?」

「どうでしょう。子爵家にはアルベール家とマルヴィン家が圧力を掛けますから」

「そうか。とにかく、今後王都に現れる事は無い。セティーの視界に入らなけば良い」

「学園の方も既に退学の手続きが受理されています。セティーが気にかける様なら、誤魔化しておいて下さいね」

「子爵と話はつけてある。表上は遠方に嫁いだ事になっている」


その日のうちにレニーは荷物と共に屋敷から出され、王都を出ていった。

私事ですが先日第一子が誕生しました。

終日泣いている子でして、続きを書く事が難しくなりましたが、時間が掛かっても最後まで書きますので、どうかお付き合い下さい。

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