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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
192/235

ある日の一日

ある日、男子寮の談話室でアルベルトは溜息ついた。


見かねたシャルエラントとヴィクトルが声を掛ける。


「どうした?元気が無いな」

「アル様、悩み毎?」

「アルの悩み事など、せティー関係に決まっている」


「最近せティーと過ごせていない」


アルベルトは答えると更に溜息をつく。


「ほらな」

「あぁー。セティーもマリアと同じく、家族との思い出作りの為に週末は帰ってるもんね。ジルさんの結婚式も控えているし、今しか時間が取れないから仕方ないよ」

「そうだぞ。俺だって我慢しているだ。大体、嫁に嫁いでもらう立場なんだ、それくらい我慢しろ。学園では一緒に居られるだろ」


2人の言葉にアルベルトは不満そうに答える。


「頭ではわかっている。だが私達だって、今しかゆっくりと、自由に過ごす時間が無いというのも事実だ!」


婚姻後に行う伝統ある行事や公務。

さらにセレスティーヌも王太子妃としての公務や規則に縛られる。

住む場所も王太子妃宮になり、アルベルトが訪ねて行かなければ、一緒に過ごす事も出来ず、2人きりの時間は今よりも圧倒的に少なくなる。


「お前の所はしがらみが多いからな。伝統や習慣、規則。挙げたらキリが無い程。息が詰まりそうだな」

「アル様、それを守っていくのも王族、貴族の務めだけどさ、変えていくのも俺らの役割だと思うよ」

「伝統と呼べば立派に聞こえるが、古く今の生活や文化に合っていない事もあるからな。変える事が出来るのはお前やヴィのような高位の者だけだ」


「はぁ。骨が折れるな」

「俺のように力づくで改革するのもありだが、この国では、おすすめ出来んな」

「でもさ、国王陛下は今王妃宮に住んでるけど、反発もそこまで大きくないし、この際アル様も結婚後からそうしちゃえば?それに乗じて少しずつ王族の暮らしを変えてくのはどう?」

「そうしたいのはやまやまだが、皇太后陛下が五月蝿くてな」

「皇太后陛下かぁ。俺、あそこの護衛隊の配属だけは嫌だな」


「ヴィが嫌がる程なのか」

「規則と伝統を重んじる方だから。護衛の仕方も昔ながらのやり方じゃないと駄目なんだよ。時代と共に敵だって攻め方が変わってくるのに。守り辛いし、何より息が詰まりそうで俺は向いて無いだろうね」


ヴィクトルは話終わるとやれやれといったポーズを取る。


アルベルトが表情を歪めて話し出す。


「そんな人が頻繁に王妃宮に苦言を呈しているんだ」

「はぁー、それはそれは。お前の母親だから耐えられるのだろな」

「そうだ。セティーにまで苦言を頻繁に言いに来られるのはかなわん」

「嫁姑の問題に首を突っ込むのは大変だと思うが、嫁の味方でいられるのは夫だけだぞ。そうなったらアルが何とかしろ」

「そうだね。立場が上なのってアル様と国王陛下だけだし。マリアは嫁姑問題無さそうで安心しているよ」

「あぁ安心してくれ。ついでに大臣達にもマリアを軽視する様ならそれ相応の対応をする事を既に通達している」


シャルエラントは自信に溢れた顔をヴィクトルに向け、ヴィクトルは笑顔で頷く。


「お前ばかりズルいな」

「俺の国はある程度自由だからな。その代わりこの国より治安が良く無い上に、上層部も悪事が横行しやすい。規則の縛りが少ない自由である事の弊害だな。だから俺は力で縛る」

「文化的価値観の違いだよね。どっちにもメリット、デメリットがあるよ。アル様、話を戻すけど、セティーには正直に2人の時間が欲しいって言った方が良いよ」

「そうだな。ウダウダと悩んでないでハッキリ伝えろ。明日のランチは2人で取ったらどうだ?」


アルベルトは眉間に皺を寄せて答える。


「今度は私の方が時間が取れなくなりそうなんだ。東の国から姫が3人来訪する。応対しなければいけない」

「あぁ!あれか!その役目、誰かに他の人じゃ駄目なの?国交の為に、なんて表向きで婿探しに付いて来るって聞いたけど」

「あぁ恐らくその理由だろうな。そうでなければわざわざ第6、第7、第8の姫が特使に付いて来ないだろ」


シャルエラントはふむと納得し、ヴィクトルに向かって揶揄うような表情をする。


「ヴィ、そのは目的なら姫をもてなす役目は未婚男子の居る家だ」 

「そうだね。相手するついでに息子を紹介したらお互い良いよね」

「そうなると、その役目の1人にエルランジェ家が選ばれるんじゃないか?ヴィは高位の未婚男子だろ」

「あっ!あぁー!またお見合いは嫌だー!」

「ハハハ。まぁエルランジェ侯爵殿は王女をヴィに無理に当てがう様な事はしないだろ。だが、王女との婚姻を前向きに検討したい家はあるだろ。大臣達にそれとなく話題にしてみろ」

「あぁそうしよう」


それから数日。

アルベルトはセレスティーヌと2人でランチをしていた。


「セティー。今度の週末、何処かへ行かないか?」

「え?東の国から姫様達が来るから忙しいんじゃないの?」

「来訪中は接待するが、他の者にも任せる事が出来た。姫達は来週には来る予定だから、今週末は時間があるなら一緒に過ごしたい」

「そうなのね。それなら、週末のどちらかなら予定を取りやめて空けるわ」


アルベルトは隣に座るセレスティーヌの手を握る。


「良かった。公爵家に帰っているのは良いが、私とも思い出を作ってほしい」

「えぇもちろんよ」

「それと、私達もシャル達の様に結婚式を写真に残そうと考えているのだが、どうだろうか?」

「…。いいの?反発されるんじゃないかしら?」

「写真くらい良いだろう。それに新しい文化を取り入れるのも大事な事だ」

「嬉しい…。実は少し…ほんの少しだけ、羨ましかったの」

「良かった。私達も良い写真が撮れると良いな(やはり、マリア達が羨ましいと言う気持ちがあるんだな。セティーには我慢ばかりさせて申し訳ない)」

「えぇ!楽しみだわ!」


アルベルトとセレスティーヌが教室に戻るとクラスの中は普段より騒がしかった。


「なにかあったのか?」

「いや、何もないよ。アルベール侯爵も例の姫様達の接待役を買って出た事が令嬢達をざわつかせているんだよ」


ヴィクトルの話にマリアが溜息を付きながら続けて話す。


「レニーさんの事を噂しているのよ。音楽祭前にカミーユ様とは恋中だと言っていたけど、破局したのではないかって」

「なるほどね。皆んな噂話に夢中って事ね(レニーさんも気の毒に)」



---------------------------


「レニー。気を落とさないで」

「そうよ。噂なんて直ぐに消えますわ」

「えぇ。ありがとう」


ここ数日レニーば表情が暗く沈んでいる。

そこに加えて今回の噂があがり、レニーを更に追い詰めている。


逆にクリスティーヌばイキイキとしている。


音楽祭以降、レニーとカミーユの仲を確かめたい令嬢達から連日お茶会の誘いがあり、社交が上手くいっている様だ。


レニーの友人達がクリスティーヌが中庭に1人で居るのを見つけ話しかける。


「クリスティーヌ様、レニーとカミーユの仲を取り持って下さい」

「そうですよ。クリスティーヌ様からカミーユ様にレニーを大事にする様言って下さいませ」


レニーの事を思っての発言だろう。

そんな友人達に対し、クリスティーヌは扇子を広げ、鼻で笑ってあしらう。


「何故そんな事を私がしなければいけませんの?そもそも、私はお義兄様からレニーとの事、聞いておりませんの。レニーの勘違いではなくて?」

「なっ!?レニーが嘘を付いていると!?」

「例えそうで合っても、レニーへの暴言のお詫びとして力添えをしたらどうです?」

「例の噂でしたらデタラメですから、詫びる必要なんてありませんわ」

「私達はクリスティーヌ様がレニーへ酷い言葉を言っているのを見たのですよ!?」


クリスティーヌはひと睨みしてから反論する。


「貴方達が来たあの時が初めてレニーとの練習でしたわ。それに、実際には見ていませんわよね?あの時演奏していたのは私ですわ」

「でも確かにクリスティーヌ様の声でした。それに他にも聞いたと言う方が居ます!」

「声を聞いたとされる日時に私は学園に居ませんわ。証拠なら門を通った記録が残っておりますわ」

「そんな…でもレニーは」

「これ以上身に覚えなの罪を押し付けられるなら、侯爵家の名誉に関わりますわ。きちんと証拠を揃えてもらいますわよ?」

「うっそれは…」


友人達は言葉を詰まらせる。

話は終わったと感じたクリスティーヌはその場を後にしようとしたが、一旦を足を止めて振り返る。


「あっそうそう、レニーの特技は私の声真似ですの。とっても上手でしてよ」


廊下を1人歩くクリスティーヌ。


「お義兄様から噂が嘘だという証拠について教えられていて良かったですわ。それに、レニーの声真似をお義兄様が信じて下さって、私が何かしなくても、レニーとの関係が解消されたようですし。後はお義兄様が言っていたように、学園で1人にならない様に出来れば、何かあっても証言者が得られますが…それが難しいのですわ」


「クリスティーヌ様、私達と良ければお話ししませんか?」


3年の令嬢達がクリスティーヌに話しかけた。


「私達、クリスティーヌ様に聞きたい事がありまして」

「(お義兄様とレニーのことですわね。好意からではないでしょうけど、ここは利用させてもらいますわ)えぇよろしいですわよ」


「さっそくですが、カミーユ様とレニーさんは実の所どうなのですか?」

「レニーさんは恋仲と仰ってましたが…」

「私ははお義兄様から何も言われておりませんわ。音楽祭でもレニーを恋人だとは言ってませんでしたし」


クリスティーヌの返答に令嬢達は嬉しそうにする。


「そうなのですね!この間のパーティーでダンスを踊っていましたが、お2人でデートしている所は誰も見た事はありませんし、気になっていましたの」

「この間のパーティーは私の代わりに踊っただけですわ。レニーは謂わば幼馴染。その為、我が家に来る事はありますが、お義兄様と親密な様子を私は見た事はありませんわね」

「まぁそうなのですね」


クリスティーヌは令嬢達に向けてニッコリ笑う。


「お義兄様には素敵な方と結婚してほしいですわ。生憎お見合いした方は私と折り合いが悪くて。お義兄様もそこが引っかかってしまう様ですわ」


社交界でもカミーユがクリスティーヌを大事にしているのは知られている。

といってもジェラルドとセレスティーヌとは違い、悪評のあるクリスティーヌをどうしてそこまで大事に出来るのかと不思議に思われている。


クリスティーヌの発言に対し、令嬢達はカミーユと親密になるには、クリスティーヌと仲良くしなければいけないと改めて認識する。


「そっそうですわね。義妹になられるクリスティーヌ様とは親しく出来る方がよろしいですわね」

「クリスティーヌ様、良ければ今度も私達のお茶会に参加して下さいませ」

「えぇもちろんですわ」


(今までお見合いをした方々は、私の事を嫌って、お義兄様からお断りされていますわ。逆を言えば、私と仲良く出来ればお義兄様に近づく事が出来ますわ。それを言えば、私を誘って下さると思ってましたの。これで学園で1人になる時間が減りますわ!リーゼさんから習った処世術、上手く出来ましたわね!お義兄様に良い方を紹介出来たら、お義父様から評価され、あの男との婚姻も考え直してもらえるかもしれないですわ!)


「「「「オホホホ」」」」


クリスティーヌと令嬢達は互いに顔を見合わせ、愛想笑いをする。

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