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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
186/236

音楽祭③

「良かった。逃げずにちゃんと来たんですね」

「レニー!いったい何を考えてますの!?」


放課後、レニーはクリスティーヌを空き教室に伸び出した。

呼び出されたクリスティーヌは声を上げる。


「そんな大きな声出さないで下さいよ。まぁ貴方が考えているとおり、仲違いの解消なんて望んでません」

「ではいったい何の為に」

「強いて言えばカミーユ様の為。貴方の様な不出来な人のせいでカミーユ様が傷ついてしまってしまっている。そんな事あってはならないのに」


レニーはクリスティーヌに向かって静かに沸々とした怒りを向ける。


「中途半端に反省なんかしても、簡単に許される筈が無いというのに」

「わっ私はちゃんと反省してますわ」

「貴方の謝罪に何の価値が?やった事も、言った事も覆らないというのに」

「そっそれは…」


レニーは自分の髪をなびかせる。


「貴方は私の髪が気に入らないと切り刻んだ事がありましたね。お陰で私はしばらくウィッグを被る羽目になりました」

「っ!そっそれは本当に申し訳無かったと思っていますわ」


「今更謝れても。池に落とされた事もありましたね」

「うっ」

「貴方が本物の侯爵令嬢なら、辛くとも耐え忍んだ苦労も報われたというのに…。はぁ、話は逸れましたが、演奏はこの曲でよろしいですよね」


レニーはクリスティーヌに楽曲の楽譜を手渡す。


「こっこんな難曲にしますの!?」

「それくらい弾きこなせないのですか?私よりも優秀な先生に習っていると自慢してましたよね?それに、難曲と言っても、そこそこの難易度ですけど」

「うっ…(こんな難しい曲弾けた事ありませんわ)」

「まぁまともに演奏会も出来なかっですもんね」

「(グゥの根も出ませんわ。お義父様が演奏会を開いてくださらなかったのは、私がそこまでの腕前では無いからですわ)」


クリスティーヌはシズシズとレニーに向かって頭を下げる。


「もっもう少し…難易度を下げて下さいませ」

「ふっふふふ。貴方が頭を下げる姿、なんて滑稽なんでしょう!お似合いですよその姿」

「クッ!」


クリスティーヌはプルプル震え屈辱に耐える。


「それじゃあこの曲にしましょう。さっきの曲よりも難易度は低いですよ」

「(これも弾いた事がありませんわ)」

「まさかその曲も無理ですか?これ以上難易度を下げれば侯爵令嬢としてのメンツが保てないと思いますけど?」

「いっ今から練習すれば何とかなりますわ!」

「そうですか。では話は以上ですので、私は帰ります」


「今日から本気で頑張りませんと」


1人残されたクリスティーヌは小さく呟いた。

クリスティーヌはしばらく侯爵家へ戻り1人ハープの練習に打ち込んだ。


---------------------


「セレスティーヌ様。私達の演奏する曲が決まりました」

「この曲…少し難しいのではありませんか?」

「初めはこっちの曲にしようかと思ったのですが、クリスティーヌ様がこちらの方が良いと」

「そちらの曲も確かに難曲ですが、こちらの曲は一見難易度が下がって見えますが、転調もあり、リズムを取る事や指の運びが多様で難しいと思いますが」


「(流石セレスティーヌ様。この曲の難所を直ぐに見抜くとは)そうですよね、でも今から練習すれば何とかなります。私はもっと頑張らないとですね」

「2人が納得して選んだ曲であれば良いんです。頑張って下さいね」

「はい!ありがとうございます!(セレスティーヌ様はきっとクリスティーヌが無理にこの曲を選んだと思ったでしょう)」


「レニー。放課後に新しく出来たカフェに行きましょう!」

「ごめんなさい。これからクリスティーヌ様と練習があるの」

「そう残念ね。練習頑張ってね」

「えぇありがとう」


それからレニーは度々クリスティーヌとの練習があると友人達に伝える。


『何度言えばわかりますの!?』

『下手なんだからもっと練習しないさいな!』

『私の足を引っ張ったら承知しませんわよ!』


放課後、ある空き教室からクリスティーヌの暴言を聞かれると噂が流れた。


「レニー!大丈夫なの!?」


レニーは友人達に囲まれ、心配の声掛けをされた。


「えっと皆んなどうしたの?」

「クリスティーヌ様がレニーにを苦しめていると噂されているのよ」

「実際にクリスティーヌ様の暴言を聞いた人も居るのよ」

「聞かれた日は全部レニーがクリスティーヌ様と練習があるって言っていた日よ」


心配をする友人をよそにレニーは笑顔で答える。


「皆んなそんなのただの噂よ。心配しないで、練習しているだけだから」

「そんな。まっまさかまだクリスティーヌ様を庇っているんじゃ」

「そん事はないわ。きっと聞き間違いよ」


『この愚図が!お義兄様に媚を売る暇があれば練習なさい!」

『そっそんな。私は媚なんて売って…『お義兄様が貴方の様な冴えない女を好きになる筈ありませんわ!貴方がお義兄様を垂らしこんだに決まってますわ!』


その後もクリスティーヌがレニーに酷い発言をしていると噂になり、度々裏庭で涙を流すレニーの姿が目撃された。


「どういう事ですの!?」

「何がですか?」

「今流れている噂ですわ!」

「あぁクリスティーヌ様が私に練習中に酷い事を言っているというアレですね」

「いったい何故そんなことになっているんですの!?2人での練習は今日が初めてだというのに!」


怒るクリスティーヌに対してレニーは笑って答える。


「実際にクリスティーヌ様が私を貶める発言を聞きた人もいるみたいですよ。不思議ですね」

「っ!貴方が仕組んだのでしょう!?」


レニーは溜息をつきながら答える。


「そんな噂を今更流した所で何の意味があるんです?クリスティーヌ様が私に酷い事をして来たのは皆んな知っているというのに」

「うっ」

「そんな事より練習しましょう」


レニーはハーブを奏で始める。

先日選んだ曲を卒なく弾き終わる。


「さぁ次はクリスティーヌ様の番ですよ。ある程度は弾けますよね?」

「もっもちろんですわ」


クリスティーヌは前半は卒なくハープを奏でる。

しかし、指遣いが難しい箇所やリズムが取りにくい難所は、度々演奏が覚束なくなった。


クリスティーヌの演奏が終わった途端レニーは声を上げる。


「『散々練習しておいてまだその程度ですの』」

「!?」


確かにレニーが言葉を発しているが、聞こえてくるのはクリスティーヌの声だった。


クリスティーヌはレニーに詰め寄る。


「なんなのですの!?」

「『どうしたらこんな事が!?』」

「!?」

「…クス」


レニーによりクリスティーヌの声真似にクリスティーヌが驚いているとレニーは小さく笑った。

その瞬間に教室の扉が開く。


「やっぱり!クリスティーヌ様!これ以上レニーを苦しめないで下さい!」

「もうレニー様を解放してください!」


扉から出て来たのはクラスメイトや下級生の令嬢達。

廊下には通り掛かった知らない生徒達もいる。


「みっ皆んな大丈夫よ。練習が熱くなってしまっただけだから」

「レニー!そうやって、貴方はいつも!」

「大丈夫よ。皆んな心配してくれてありがとう」

「もう今日の練習は終わりにしましょう!」


令嬢達はレニーを連れて行こうとする。

教室の入り口まで令嬢達によって連れられたレニーは静かに声を発する。


「もう少し練習したいの。せっかくクリスティーヌ様と連奏出来る機会だもの、頑張りたいの。今日の事は目を瞑ってくれないかしら?」

「今日はって…。本当に大丈夫なの!?」

「えぇ大丈夫よ。クリスティーヌ様も間違った事は言っていないのだし」

「レニー…。本当に辛くなったらちゃんと言うのよ。貴方は抱え込み過ぎるから」


レニーは令嬢達を説得し、その場から立ち退かせる。


一部始終をクリスティーヌはプルプル震えながら傍観していた。


「レニー!謀りましたわね!」

「これは噂は真実だと伝わりますね。私の演奏に対して叱咤するクリスティーヌ様の演奏は、さぞ素晴らしいのでしょうね」

「くっ…。私の評判を落とす為にこんな事をしですの!?」

「ふふ、とっくに評判は他に落ちているのに、何を今更。まぁせいぜいその拙い演奏をまともになる様努力して下さいね」


そう言い残し、レニーは教室を出て行った。


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