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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
174/235

婚姻成立①

ジェラルドside

エリザベートと結ばれる前日。


緑の薔薇が刺繍されたタオルを手に取り、眺める。

刺繍を見ながらパーティーで少年の手に巻かれていたハンカチを思い浮かべる。


あのパーティーの参加者の中で黒髪の令嬢は3名。

その中でリーゼと繋がりがあるのはエリザベート嬢だけ。

そして本物のミレット子爵令嬢に送金していたのもエリザベート嬢。


リーゼ=エリザベート嬢で間違いはず。

そしてこのタオルを贈ってくれた、文通の相手であり、私の初恋の人もエリザベート嬢だろう。


『憧れの方を花や星に例えそれを刺繍するのが流行りました』


憧れか。

私もエリザベート嬢のへ憧れや尊敬の気持ちがあった。


初恋の君がエリザベート嬢で嬉しい。

リーゼとして接して、私への暖かい心遣い。

手紙を遣り取りしていた時と変わらない優しさを感じた。


自分の中で初恋の君とエリザベート嬢が繋がり、エリザベート嬢への自分の思いを確信する。

そして、エリザベート嬢からどう思われていたのかも。


「はぁ…あんなにお誘いの手紙が来ていたのに…。私もセティーの事言えないくらい鈍いね…」


いや自分の気持ちにも気付かないなんて、もっと鈍いね。


いくら模範的な誘い内容だとしても、通常の私なら気に留める事もないはず。

私はおそらく、初めて姿を目にした時からエリザベート嬢の事を意識ていたんだろう。

しかし、お互い高位貴族家の跡取り。

自然と気持ちに蓋をしたのだろうね。


自分の気持ちに無頓着というか、無関心というか。

跡目教育が悪い方に作用してしまったな。


自分の気持ちを殺す事は跡取りとして、貴族として当然の事。

ウチの両親が恋愛結婚を推奨していなければ、とっくに家の利益となる令嬢と結婚していただろうね。


気持ちは決まった。

そうと決まれば早く行動に移さなければ。

エリザベート嬢のことだから、私がミレット領へ視察に行った事は報告されているだろう。

リーゼが偽りの人物である事や、リーゼと自分を結びつけられたと勘づいて、すぐに私の側を離れる準備をするはず。


明日にでも直ぐに話をしなければ。

何故リーゼとして身分と名前を偽って私の側に居たのかも聞かなければ。


政治に利用されている様なら助けなければ。


素直に話してもらえるはずもないだろうから、少し用意しなければね。



---------------------------

後日。


「ミッドランド公爵お久しぶりです。本日はお時間を頂いてありがとうございます」

「何かの間違いだと思ったが、本当にジェラルド殿が来るとはな」

「お父様!」


ジェラルドはエリザベートに告白した後日、直ぐにミッドランド公爵家を訪れていた。


「ミッドランド公爵。本日はエリザベート嬢との婚約を結ばせて頂きたく参りました」

「ジェラルド殿、エリザベートで本当に良いのですかな?」

「お父様!どう言う意味ですの!?」

「いや、ハタから見れば派閥違いの政略結婚だろ?前回それで断られたからな」


エリザベートと父親が言い合う様子を見て、ジェラルドは笑う。


「ハハ、もちろんですよミッドランド公爵。エリザベート嬢が良いんです。派閥争いが落ち着いても返しませんからね」

「お父様…。どういう事ですの?」


エリザベートはジェラルドの発言で自分の父親が前回余計な事を話したのだと察した。


「前に婚姻を申し込んで頂いた際、正真正銘の政略結婚、両派閥のイザコザが落ち着いたら離縁して良いと言われまして」

「ジェラルド殿!?」


ジェラルドの言葉にミッドランド公爵は動揺し、エリザベートはワナワナと震え始める。


「お父様!いくらなんでもあんまりですわ!」

「いやその、あれだ。お前が派閥違いの家の嫁として、他の貴族達に冷たくされ続けられるよりはマシだと思ってな。いくらお前がジェラルド殿を想っていたとしても、愛されない婚姻生活は辛いだろうと。つまりあれだ、親心だ」

「そんな親心があってたまりますか!?」

「何を言う。マルヴィン公爵家と婚姻を結ぶという事は貴族派の者達からも弾圧があるのだぞ」


エリザベートと父親のやり取りを見てジェラルドはクスクス笑う。


「娘と父親というのは、何処の家も変わりませんね」

「娘を持つ父親なら当然の事だ」

「そうなのでしょうね。まるで父と妹を見ている様でしたから」


ミッドランド公爵は呆れ顔をしながら答える。

「エドガルド殿の娘への溺愛は凄まじいものだと聞くからな」


「妹は我が家の天使ですから」

ジェラルドは輝かしい笑顔で答えた。


「溺愛しているのは父親だけではなかったな」

「えぇ我が家の天使ですから、家族はもちろん、家の者達は皆妹を愛してますよ」


「はぁエリザベート。本当に良いのかそんな所へ嫁いでしまって」

「セレスティーヌ様はまさに天使の様に優しく、妖精の様に可愛らしい方ですから。愛さずにはいられないお方ですもの。溺愛されるのは当然ですわ」

「エリザベート…まさかお前も同類とは…」


ミッドランド公爵は呆れた顔をする。


「話を戻しましょうか。私達の婚姻を認めて頂けましたので、婚約式について話をしたいのですが」


ジェラルドの提案にミッドランド公爵は神妙な顔をして答える。


「私としてはマルヴィン公爵家が主体で執り行う方後でよろしいと考えている」

「そうですか。こちらとしては両家で執り行うのもよろしいかと。我が家が主体ではどうしても招待客が傾き出てしまいますから」

「そうなると問題となるのは場所だな。そこまでの大人数の客となると、王宮と同様でなければいかん」

「それについては、王宮の大広間をお借り出来るように陛下にお願い申し上げた所、心よく了承して頂けました」


そう言い、ニッコリと笑顔のジェラルドに対してミッドランド公爵とエリザベートは目を丸くし驚く。


「エリザベートとの婚約の話が出たのはつい先日の事だと記憶していたが?」

「はい。その日のウチに陛下に話をしましたから」

「「なっ!?」」

「陛下の居場所や私的な時間は立場上把握しておりますから」

「(見た目と違い豪胆で大胆。それでいて自然に権力の強さを示しこの場の主導権を握ろうとは恐ろしい男だ)」


「婚約式の口上は陛下がなさりたいた仰っていましたがよろしいですか?」

「陛下がですか!?」

「えぇ。本来なら大司教にお願いするべきなのですが、大司教には結婚式の方でお願いしましょう」

「あっあの。大司教様にという事は、結婚式を大聖堂で行うおつもりですか?」

「私としてそこでと考えていましたが、エリザベート嬢がご希望の場所があればそこで構いませんよ?」

「滅相もありませんわ。ですがあそこで結婚式が出来るのは皇族のみでは?」

「大丈夫ですよ。私達は少なからず皇族の血が流れてますから。公爵家同士の結婚ですから、それなりの所でなくてはね」

「わっ私が大聖堂で結婚式を挙げられるなんて…」


エリザベートは両手を頬に当て、目を輝かせながら呟いた。

それを聞いたジェラルドは気分良さそうにクスリと笑う。


「婚約式についてはまた話し合いましょうか。彼女と2人で話がしたいのですが」

「もっもちろんですわ。テラスでお茶でも如何でしょう?」

「ありがとうございます」

「ではご案内しますわ」

「それではミッドランド公爵、私はこれで失礼致します」


エリザベートはジェラルドをテラスへ案内する。

途中メイドにお茶と菓子を持ってくるよう命じる。


「貴方も支度して来てね下さい。今日は陽射しが強いので、貴方の綺麗な肌が焼けてしまう」

そう言いジェラルドはエリザベートの頬に触れる。


「はっはい」

エリザベートは顔を赤くし、小さく答える。


「こちらでお待ち下さい」

「これは…」


テラスへ通されたジェラルドは少し驚く。

テーブルの他に椅子の代わりに置かれていたのは2人掛けのベンチだった。


「(これはメイドの計らいかな。ベンチで隣に座り仲を深めろと)」


ジェラルドはメイドが運んで来たお茶を飲みながらエリザベートを待つ。


「ジェラルド殿」


ジェラルドに声を掛けてきたのは険しい顔をしたマティアスだった。


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