お友達②
マリアとしばらく話していると、マリアの事情が聞けた。
マリアのお父様は、騎士団の団長だったが、作戦中に部下を庇って怪我をしてしまったらしい。
そして今は、仕事柄、周辺諸国に詳しかったこと、外国語が話せるということで、外交の仕事についているという。
ただ騎士団を辞めたばかりなので、王宮内での立場が安定するまで、マリアにアル様の婚約候補者で居てほしい、ということらしい。
そして、マリアもお父様の為に、候補者でいることを決めたという。
マリアって優しい子だなぁ。
「でも、わたし、いつも自分の意見が言えなくて。こんなだから、今日のお茶会が怖くて。結局1人で来れなくて、途中まで兄と来たけど、会場に居るのも怖くて。だからここに居たんです」
「そうだったのね。マリアには、お兄様が居るのね」
「はい、双子の兄が。兄はアルベルト様の剣術のお稽古の相手役なんです。わたし、兄以外には緊張しちゃってダメなんです」
そう言うマリアは今にも泣き出しそう。
ここは勇気付けなければ!
「そんなことはないわ。今だって私とお話が出来てるじゃない! お父様の為に頑張るマリアはとても強いわ。なんたって人のために頑張ることが出来るんだもの!」
「あっありがとうございます。セティー様」
「マリア、様はいらないわ。私たちもうお友達でしょう?そうだ!お友達なのだから、お茶会でも一緒にいましょう?私もお友達と一緒なら心強いわ」
私がそう言うとマリアはますます泣きそうになる。
あっあれ?
なんか泣かせちゃった??
「ありがとうございます。わたしも心強いです!えっと、セティー!お友達になれて嬉しいです!」
マリアは泣きながらも笑顔になった。
良かった。
泣かせてしまったと思ったわ。
マリアと友情を育んでいる時に勢いのある足音が聞こえる。
「おい!!お前、マリアに何をした!?」
「!?」
私にいきなり怒鳴りつけた男の子は、マリアと同じ赤い髪に緑の目をしていた。
違うのはマリアと違い、ツリ目ということだけ。
この顔……どこかで見たような。
「ヴィ!違うの!これは違うの!セティーには何もされてないわ!」
戸惑う私の代わりにマリアが反論する。
「嘘を言うな!どうせ嫌味でも言われたんだろ!!」
「違うの!お友達になれて、嬉しくて泣いちゃっただけなの!」
「……えっはっ!?お友達!?」
「そうだよ! 私と同じで、本が好きで、愛称で呼ぶことを許してくれたお友達だよ!」
マリアの言葉を聞いて、男の子はバツが悪いような顔をする
「あぁーなんだよ。俺はてっきり、また嫌味を言われて泣いてんのかと……。えっと、いや、なんだ。勘違いとはいえ、いきなり怒鳴りつけて、すまない。俺はマリアの双子の兄でヴィクトル・エルランジェだ」
マリアの兄!?
どうりで、似てる!
「私はセレスティーヌ・マルヴィンです」
「公爵家の!?いや、本当にすまない」
「いいえ。大丈夫です。マリアのことを大切にしてる証拠ですよ」
私は笑顔を作って許した。
でもほんとどっかで見た顔だなぁ。
赤髪にアル様の剣術稽古の相手……騎士志望……。
あぁー!!!
この人攻略対象だ!!
嘘でしょっ!
こんな所で出会うなんて!!
私が固まっていると攻略対象が話しかけてきた。
「お前いい奴なんだな!マリアのこと、よろしく頼むな!マリアは気が弱いから、俺以外には言いたいこと言えなくてさ。だからマリアに友達ができて嬉しい。俺からもありがとう」
うっ! いい奴!
そういうば、この人の性格って素直で仲間思いだっけ。
「そんなことありません。私だってマリアとお友達になれて嬉しいです。えっとヴィクトル様もよろしくお願いします」
「俺のことはヴィーでいいよ! 俺、敬語も苦手だから固くなくていいから! マリアと友達なら俺とも友達だな!」
凄い無邪気な顔だなぁ。
正直関わりたくないけど、マリアの兄だしなぁ。
ここで断るのも悪いし、しょうがないか。
「はい、よろしくお願いします」
と私は頭を下げる
「だから、固いって!なぁ、俺もセティーって呼んでいい?セレスティーヌじゃ長いからさ! セティーのお爺様ってあれだろう?あの『銀の騎士』だろ!!今度ウチに来て、話聞かせてよ!!」
「えっ!?ええ」
私はグイグイ来られて困惑気味だ。
横を見ると、マリアが顔を膨らませている。
「ヴィ!なんで私より先に言うの!私がお家に誘おうと思ってたのに!」
「なっなんだよ。じゃあ3人で遊べば良いじゃん。な? セティーもそれでいいだろう?」
あれ?
まだ行くとは言ってないんだけど……。
まぁ良いけど。
「わかりました。大丈夫です」
「「よし、決定ね/な!」」
おおっハマってる。やっぱり双子だなぁ。
そしてお茶会の時間になり、私とマリアはヴィクトルと別れて、会場に向かうことにした。
ようやく新キャラ登場です。




