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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
168/235

婚姻申し込れ

週末。

シャルエラントはエルランジェ侯爵家を訪問した。


貫禄のある執事に迎えられ、応接室に通されたシャルエラントはマリアの父親と対面する。

父親の隣にはマリアが居る。


「私、シャルエラント・ハムダン・ビン・モハメド・ラーシド・ナハラセスはマリア•エルランジェ嬢を愛しております。先日マリア嬢には私の気持ちを受け取って頂けましたので、本日は婚約の御了承を頂きたく参りました」


普段のシャルエラントでは想像できない程丁寧な口調でマリアの父の前で頭を下げる。


「頭をお上げください。元よりマリアがシャルエラント王子の気持ちに応えたならナハラセスに嫁がせる覚悟は決めていました」

「お父様…」


マリアは涙ぐみながら父親に向かって微笑んでいる。


「さて、形式上の挨拶はこれくらいにして、食事の前に軽い運動をしましょう。贈らせて頂いた剣と防具はお持ちですか?」

「お父様!!」

「心配ないさマリア。こんな足を悪くして騎士団を退いた年寄りの剣なんてヴィとの訓練に比べたら大した事ないはずだ」


マリアの父ニカッと笑う。

笑った顔はヴィクトルそっくりだ。


「何を言ってるんですか!ウチの騎士達を相手に毎日剣を振るってるくせに!足だってとっくに治ってるのに!」

「さぁ行こうか。ヴィや他の騎士達も集まっている」

「なんで他の騎士達まで!?」

「エルランジェの宝を奪っていく輩を皆が簡単に許すわけがないだろう?」


父親は今度は意味ありげに微笑む。

微笑む姿はマリアにも似ている。


「なんだかマリアとヴィクトル両方に似ている方だな」

「ヴィは剣を振るっている時に、私はペンを握っている時にお父様に似ていると言われるわ」

「ああその様だな。かなり頭がキレる方だろ」

「えぇお父様が当主になってエルランジェの事業はかなり潤ったし、王室騎士団での作戦はほとんどがお父様が作った物よ」

「2人で父君の能力を引き継いだというわけか。さぁ行くとしよう。覚悟ならとうに決まっている」


シャルエラント達が訓練所へ行くとヴィクトルが他の騎士達と一緒に居た。

マリアやシャルエラントに気付き手を振っている。


「シャル様!死なないでね。父様は模造刀を使うけど、剣圧で普通に切れるから」

「笑顔でそんな不吉な事言うな。ん?女性の騎士も居るのか」

「ああ。母様!」

「!?」


ヴィクトルに呼ばれた女性は振り返り、ヴィクトル達の方へやってきた。


「こんにちは。マリアとヴィクトルの母です。シャルエラント王子、後で私とも一戦交えましょう」

双子と同じ緑色の瞳をした女性はニッコリと笑いシャルエラントに握手を求める。


「貴方のように、美しく若々しい方が2人の母君とは思いませんでした」

「あら、お上手ですね。賛美を頂いても手は抜きませんよ」

「それは手厳しい」


「母様はウチの騎士団の中でも上位の腕前だよ」

「流石にもうヴィには負けてしまいますけどね」


「ハハハ…」

シャルエラントはチラリとマリアの方を見る。


「ウチで剣を握らないのは私だけなの」

「訓練もした事はないのか?」

「ないわ。強要された事もないわ」


マリアの母は笑って答える。

「マリアは剣に興味を示さなかったもの。したくない事は強要しないわ。それに双子だからって何でも同じ事をさせる気もなかったしね」

「双子だけど、私達を個人として見てくれたお父様とお母様には感謝しています。きっとヴィと比べられて塞ぎ込んでいたはずだわ」

「親として当然の事よ。それじゃあ私達はあっちで見てるわね」


マリアの母はヴィクトルを連れて離れていった。


「良い両親だな」

「えぇ。自慢の両親よ」


「王子、そろそろ始めましょうか」

「えぇそうしましょう」

「マリアはヴィ達の側で見ているように」

「わかりました。シャルくれぐれも無理だけはしないで」

「わかっているさ」


マリアの父親とシャルエラントが剣を構える。


「旦那様ー!やっちゃって下さい!」

「俺達の宝を奪っていく奴なんて懲らしめて下さい!」

「よくも俺達のお嬢様を!」


騎士団の団員からヤジが飛ばされる。


「ちょっちょっと皆んな!?なんて事言うのよ」

「お嬢様は俺達の宝なんですから、これくらい突然ですよ」

「えぇ!?」


マリアが困惑していると、ヴィクトルと母親が笑いながら話し始める。


「マリアは騎士達の憧れだし、マリアが誰とも結婚しなければ、ウチの騎士達にもチャンスがあったからね」

「武家の娘にしては珍しいくらい上品で立派な淑女に育ったもの。ほんと自慢の娘よ」


キーン!!


「!?」


マリアが2人の話を聞いているうちに、シャルエラントの剣が弾かれ、攻撃を受けた。

シャルエラントは攻撃の衝撃で吹き飛ばされ倒れる。

身につけていた防具にはクッキリと傷が刻まれていた。


「シャル!!大丈夫なの!?」

「ああ防具のお陰で怪我はない。不甲斐ない所を見せてしまった」

「そんな事はないわ!お父様の攻撃を3回も受ける事が出来てたじゃない!」

「いや。俺が受け止められるギリギリの所で攻撃していたんだ。完全に遊ばれていたんだ。侯爵参りました。鍛錬が全く足りなかったようです」


父親はフッと笑って答える。


「手加減されている事がわかっていたなら良いです。ヴィが扱いただけあってまずまずでしたよ。これからも、いざという時マリアを守るために研鑽を積んでほしいですね」

「もちろんです。今以上に強くって見せます」


座り込んでいるシャルエラントの手を引き、身体を起こさせ、2人は握手を交わす。


「王子、今度は私の番ですね!」


母親が笑顔で剣を握り駆け寄ってくる。


「いや俺、私はもう…」

シャルエラントが困っていると、マリアの父親が助け船を出す。


「こらこら。王子はもうお疲れだよ。私が代わりに相手をするから」

「えぇ残念だわ。じゃあその代わり手加減しないでね」

「もちろんだよ」


「あの2人は…。いや夫人は何者なんだ。あんなに斬り合えるものなのか?」


真剣を使い全力で斬り合う2人にシャルエラントは驚きを隠せない。


「母様は元々地方貴族の元で騎士をしてたんだよ。だから実戦も経験している猛者だよ」

「お父様がその地方へ遠征した際、お母様の剣技に目が止まったのが2人の馴れ初めなの。お母様は剣を振っている自分が好きだし、お父様もお母様の剣技が好きだから、結婚後もこうして2人で手合わせしているのよ」

「なるほど。これが2人の夫婦の形なのか」


その後は皆で食事をし、マリアとヴィクトルはシャルエラントを屋敷や森の小屋へ案内しシャルエラント家をあとにした。

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