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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
165/235

双子

学園男子寮の談話室で、ヴィクトルはシャルエラントに話しかける。


「シャル様、お話があります」

「なんだ改まって…。大事な話の様だな」


シャルエラントはヴィクトルの真剣な顔を見て、自身の顔からも笑み消し、2人はヴィクトルの部屋へ移動する。


「それで?話とは俺とマリアの事だろう」

「そのとおりです」

「敬語はよせ。私的な場では、俺達は対等だ」

「それなら、いつも通りで話すよ。その方が俺も助かるし」

「あぁ。それに俺もマリアの事でヴィに話があったからな。俺がマリアに求愛している事が気に入らないのは仕方ないが、マリアを避けるのは辞めろ。マリアが悲しんでいる」

「あーそれね。マリアが居なくても立派にエルランジェを継げるって証明したかっただけで、マリアを避けてるわけじゃないんだけど」


ヴィクトルの返事にシャルエラントはため息つく。


「それならそうと、今まで通りマリアと過ごしても良いだろう」

「今まで、後継者教育でわからない事はマリアに聞いたり、一緒に考えてもらっていたんだ。でもマリアに頼らずに自力ってなると、今みで通りじゃダメなんだ。1人で勉強する時間が増えて、騎士団の仕事が忙しくなっただけだよ」

「それならそうとマリアに話せ。ヴィクトルに避けられていると悲しんでいるぞ」

「わかっているよ。俺だってマリアを悲しませるつもりはないからね」


シャルエラントは納得した顔をする。


「それで、ヴィの話とはなんだ?」

「シャル様はそろそろマリアにプロポーズするつもりだよね?」

「そうだが…。悪いが、ヴィに反対されても俺の気持ちは変わらない」

「俺は反対しないよ」

「!?てっきり反対されるものだと思っていた」


シャルエラントは目を丸くして驚いた顔をする。


「俺はもう反対しないよ。シャル様の本気がわかったからね」

「では何故わざわざ俺と話を?」

「マリアはシャル様のプロポーズに頷くと思う?」


シャルエラントは自信なさげな顔をする。


「当然だと言いたい所だが、こればかりはわからないな。マリアの気持ち次第だ」

「2人はまだ恋人でもないもんね」

「うっ痛い事を言ってくれるな」


シャルエラントは困ったように笑い、少し俯く。


「俺から見て、マリアはシャル様の事好きだと思うよ」

「!?」


「マリアをあんなに嬉しそうに目を輝かせるのは、本以外ではシャル様だけだよ。きっとマリアにとってシャル様が人生を共にする人なんだと思う」

「ヴィ…。俺は論外じゃなかったのか?」

「他国の王妃になるんだよ?権力に興味ない人間からしたら苦労しかないじゃん」

「耳が痛いな」

「それにマリアは大丈夫だって思えるにはシャル様が居る事が前提だしね。もしもシャル様に何かあればマリアの居場所はなくなる。どんなにシャル様がマリアの為に色々と整えたとしても、シャル様が居なければ、崩れるからね」


シャルエラントは反論せずにヴィクトルの言葉を聞く。


「だけど、それでもシャル様と生きる事が、マリアの幸せなんだと思う。だから俺はもう反対しないよ。マリアと離れるのは辛いけど、俺達は離れて居ても、この世で唯一無二の半身だから。マリアが自分の気持ちのままシャル様に向き合えるように背中を押そうと思うんだ」

「ヴィクトル…ありがとう」


シャルエラントは笑顔でヴィクトルの手を握る。


「あっ勘違いしないで。俺が応援するのはマリアであって、シャル様じゃないから。あくまでシャル様は自力で頑張ってね。マリアの為ならなんでも出来るでしょう?」


ヴィクトルはシャルエラントに握られた手に力を込め、ニッコリと笑う。


「!?『マリアを応援する=俺に協力する』のではないのか!?」

「俺はマリアの決断を応援するよ。それに、自分で頑張らないと意味がないでしょう?アル様だってせティーと両思いになるまで色々と努力したしね」

「うっうむ。それは、そうだな」


「ハハ。そんな硬くならなくても。ナハラセスでの、あのランタン!シャル様がマリアの為に王都の国民にお願いしたんでしょう?騎士達やシャル様の従者に聞いたよ。あの本マリアの為に役立ててくれて嬉しいよ」

「そうだ!あの本をくれたではないか!あれはマリアの夢が詰まった本だ」

「シャル様ならマリアの夢を実現させたり、夢を諦めずに進む事を応援してくれるでしょう?あれは遠回しにマリアの為だよ」

「確かにマリアの為と言えるが、ヴィも中々回りくどいな」


ヴィクトルは不貞腐れたような表情をする。


「仕方ないじゃん、マリアが誰かと結婚するのは嬉しいけど、寂しい気持ちが半分くらいあるんだから。本当だったら、マリアの相手には、俺と決闘して一本取れって言いたいくらいだよ!そして絶対に手加減しない!」

「ヴィと決闘か…それは…恐ろしいな…。」


「ハハ。流石にシャル様に決闘しろなんて言わないよ。でもマリアの気持ちを得る為に苦労してほしい。俺からマリアを取って行くんだから、それくらいしてもらわないと!」

「なんて素直な嫌味なんだ。まぁ素直さはヴィの美点か。まぁマリアの為にする努力を苦労などと思わないがな」


ヴィクトルはシャルエラントの手を解き、壁際へ移動する。


「そうそう。今日は話をする以外にも、これを見て欲しかったんだ」


ヴィクトルはトルソーに掛けられた布を取る。


「これは!?」

「俺がマリアに贈ろうと思って作ったんだ。どうかな?シャル様からみてナハラセスの要素を感じる?」


布の下にあったのは、ベスタトールとナハラセスの要素を合わせ持つドレスだった。


「形はこの国のドレスだが、刺繍の模様はナハラセスを感じさせるな」

「それなら良かった!マリアはベスタトールとナハラセスの架け橋的な存在になるはずだから、両方の要素を持ったドレスが良いと思ったんだ」

「まさかあのヴィがドレスをデザイン出来るとは…」

「俺がだけの力じゃないよ。セティーにもアドバイス貰ったんだ!」


純白のドレスに金の刺繍。

刺繍糸や飾りの宝石はナハラセスの物を使っている。


「マリアに俺なら大丈夫、心配ないって思ってもらえるように、立派なエルランジェの後継者になるんだ。そしてこのドレスをマリアに贈って、背中を押す。俺達は生まれた時から一緒にいる事が当たり前だったけど、お互いの道を選ぶ時が来たんだって。今日は俺の決意表明みたいな物をシャル様に聞いてほしかったんだ」


シャルエラントはヴィクトルに向かって膝を床につけ、頭を下げる。


「ヴィクトルの思い、確かに受け取った。我、シャルエラント・ハムダン・ビン・モハメド・ラーシド・ナハラセス。マリア•エルランジェを生涯愛する事を改めてここに誓おう」


シャルエラントの行動にヴィクトルは慌ててふためく。

「シャル様!そう何度も頭を下げないでよ!仮にも王子なんだし。俺はただの貴族の息子に過ぎないのに」

「愛するマリアの兄。それに、今後家族になる者だ。認めてもらえるなら何度でも頭を下げる」


慌てるヴィクトルに対し、シャルエラントはなんでもない様な顔をする。


「はぁ。前にも誓って貰ったから大丈夫だよ。名前に誓ってくれた事信じているから」

「ああ決してその誓いを破る事はしない」


-----------------------------

マリアside


それから数日。


「お嬢様、坊ちゃまから手紙です」

「ヴィから?なんでわざわざ?」


騎士団の仕事で王宮に居るヴィクトルからマリアへ手紙が届いた。


手紙と一緒に箱が運ばれてきたわ。

一体何かしら?

もしかして、最近何かと理由をつけて私を避けている事への謝罪かしら?


箱を開けて中を見た瞬間、私は息を呑んだわ。



--------------------------------


ヴィからの手紙に書いてあった通り、ドレスを着て指定の場所へ来たけど。

「ここ…セティーと初めて会った場所。懐かしいわ」


「あっマリア。良かった来てくれたんだ」


私の緊張を他所にヴィの笑顔はいつも通りだったわ。


「ヴィ!このドレスはいったい何?」

「あぁやっぱり!マリアに良く似合ってる!どう?気に入った?」

「素敵なドレスだと思うけど、このドレスって…」

「ベスタトールとナハラセス。両国の要素を取り入れたドレスだよ。ナハラセスに嫁ぐ時、それを着てくれたら嬉しい」

「えっ嫁ぐ…。ヴィ…急に何を…言ってるの?」


マリアは目に涙を浮かべ、ヴィクトルに詰め寄る。


「マリアはシャル様の事好きでしょう?俺にはわかるよ。双子の片割れだもん」

「っ!?そうだとしたも私は!…「俺はマリアに自分の気持ちに正直に生きてほしい」


ヴィクトルはマリアの肩に手を置き、ゆっくりと話し始める。


「初めはさ、俺もマリアと離れたくなくて、マリアが俺と一緒に、エルランジェを継いでくれるかもって事が嬉しかったよ」

「私だってヴィといつまでも一緒に…「でも、マリアが幸せになる事の方が大事なんだ。シャル様と一緒にいるマリアの顔を見れば、マリアの幸せはシャル様と共に歩む事だってわかるよ」


マリアはポロポロと涙を流す。


「シャル様事好きよ。私の夢を笑わずに応援してくれて、頑張ろうって思わせてくれる。一緒に居て勇気をくれて夢を抱く事が出来るの」

「うんそうだね」

「でも、ヴィと一緒に居る事も…私の夢なの…」


「マリア。俺達は一つの魂を2人で分け合ったんだ。だからどんなに離れていても繋がってる。それに、もう子供の頃のままではいけないんだ。俺達はお互いにそれぞれの道を選ぶ時が来たんだ」

「っ!」

「離れるのが寂しいって気持ちはもちろん俺にもあるよ。それに、マリアに心配掛けてるって事も知ってるよ。でも俺の事なら心配しないで。ちゃんと勉強もしてるから」


ヴィクトルはマリアに一枚の用紙を見せる。

用紙にはエルランジェ家の領地経営の一部がヴィクトルに任された事が書かれていた。


「嘘…これって」

「苦労したけどさ、やっと管理の一部を任される様になったよ。俺はこらからも頑張るよ。だから、安心してシャル様を選んで」

「っ!」

「マリアがナハラセスに嫁ぐ事への心配な事は、シャル様はちゃんと取り除いた。マリアはちゃんと国民達に受け入れられるよ。もう一度聞くよ。シャル様の事好き?」

「っ!好きよ…どうしようもなく…好きよ。生死不明と聞いた時、目の前が真っ暗になったわ。失いたくない大切な人」

「じゃあその大切な人を、他の誰かに取られないように捕まえておかないと」

「うん…」


マリアは小さく頷いたが、涙は止まらない。


「ほら泣き止んでよ。このドレスには笑顔が似合うんだから。それに、ここは俺達がセティーと出会った場所でしょう?」

「そうだけど…それがどうしたの?」


ヴィクトルは懐かしそうに周りを見渡す。


「ここでセティーと出会って、マリアは変わったんだ。俺もセティーのおかげで変われた。ここが俺達の原点だと思うんだ。だから、お互いの道へ歩み始めるなら、ここからが良いんだ。出来たらお互い笑顔でね!」

「そうね…あの日ここに居なかったら、私は今もヴィにベッタリくっついて、友達も居なかったと思うわ」

「俺だって父様と仲違いしたままどうなってたかな」


ヴィクトルとマリアは自然と手を繋ぎ、前を見据える。


「「会いに来てくれる?/たまには帰ってくる?」」


2人には似た様な質問をする。

そして2人には顔を見合わせて笑い合う。


「「やっぱり俺達/私達双子だね」」

「良かった。マリアが笑顔になった」


ヴィクトルはマリアにニカっと笑う。


「じゃあ俺仕事あるから。マリアはここでもう少し待ってて!」

「えっちょっとヴィ!もうヴィったら」


ヴィクトルはその場を離れる。


中庭の入り口にはシャルエラントが居る。

ヴィクトルはシャルエラントとすれ違う際、小さく囁く。

「マリアを泣かせたら、俺が必ず殺しに行く。この命を捨ててでも必ず」

「肝に命じめおく」


「あーあ。俺の方が笑顔になるの、難しいかも」

ヴィクトルの瞳から雫がゆっくり落ちる。

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