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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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諭し

セレスティーヌ達は学園に戻ってきた。

教室に入り、令嬢達と挨拶をかわす。


「皆様、ナハラセスは楽しめましたか?」

「えぇとても素敵な旅になりました。こちらは私達からのお土産です」

「わぁ!ありがとうございます!」


お土産、喜んでもらえたみたいで良かったわ。

貴族の令嬢達にお土産を渡すの、ちょっと不安だったのよ。

皆んな良い物持ってるし、なんでも買えるから。

それぞれの好みも知らないしね。


「私達が居ない間、変わった事はなかったですか?」


私の言葉に令嬢達は顔色が悪くなる。

「っ!?えっと私達は変わりありませんわ」

「私達はって事は、それ以外では問題が起きているのね」

「はっはい。遅かれ早かれ、お耳に入るとは思いますが…」


私はもちろん、マリアとエメリアも険しい顔をしているわ。


模範性が全員居なかったのだから、トラブルが起きたり、規律が乱れたのは仕方ないわ。

頑張って解決しないとね!


「それで、問題というのは?」

「クリスティーヌ様の事なのですが…」

「!?クリスティーヌ様が何か!?」


どうしよう!?

クリスティーヌ様とは関わらないようにしないといけないけど、模範性の仕事はしないと。


「その、問題という事はないのですが、なんというか。ずいぶんとお変わりになられて」

「見た目の変化も凄いですが、それと同じくらい言動が変わりましたわ」


「「「???」」」

私達3人の頭には?が浮かぶ。


「お昼休みに様子を見に行きましょう!百聞は一見に如かずです!」

「そっそうね!何事も自分の目と耳で確認しないとね!」

「万が一トラブルになっている様なら、大事になる前に止めましょう!」


お昼休みになり、私達は早々にランチを済ませてクリスティーヌ様の様子を観察しに行く。


「嘘でしょう!?あれがクリスティーヌなの!?」

「ひっ人違いではあまりませんよね?」

「あの縦ロールは間違いなくクリスティーヌ様よ」


私達が見たクリスティーヌ様はアクセサリーは着けず、地味なシャツを着ていた。

化粧もほとんどせず、表情も暗く、クラスの端で1人で食事をしていた。


クリスティーヌ様にいったい何があったの!?


「クラスで食べようぜ!」

「そうだな!テラスはどこも混んでるけど、クラスなら貸切…じゃなかったな」


クリスティーヌのクラスメイトである、男子生徒達が来たが、クリスティーヌを見て固まっている。


「なんですの!?私が邪魔だというのね。どうせ、どうせ私なんて…」

「いや、まだ何も言ってないんですけど」

「おい、行こうぜ。関わらない方が良い」

「あぁそうだな」


「私とは話したくないということですのね…」

「ほら早く行かねぇと被害妄想に巻き込まれるぞ」


一連のやり取りを見ていたセレスティーヌ達は困惑する。


「なっなんか凄く卑屈な感じでしたね」

「そうね。それになんだか、クリスティーヌらしくないわね」

「卑屈になりすぎて被害者意識が強い感じだわ」


クリスティーヌ様に何があったのか、調べてみたわ。

私達がナハラセスに行っている間に、アルベール侯爵家ではカミーユ様のお母様を御披露目する為のパーティーが開かれていたわ。

その際クリスティーヌ様は、表向きには体調不良という事にして、自室謹慎をしていたはずだわ。

公に姿を出す事は禁止されているから、このまま更生出来なければ、事実上の社交界追放だわ。


学園でも他の生徒に距離を置かれている様だし、自宅でも気に掛けてくれる人は少ないわよね。

もしかしたら、孤独に感じているのかもしれないわ。



「放っておいて良いだろう」

「えっでも」

「今までの様に、他の生徒に害がないなら放っておいて良い。それに、セティーはクリスティーヌに関わらないでいてほしい」


アル様達にクリスティーヌ様の事を相談したけど、答えは『何もしない』だったわ。


「被害妄想みたいな発言はあるけど、関わらなきゃ害はないし、むしろ今までより大人しくしてるなら問題無いんじゃない?」

「そうだな。教員達も、強制的に他の生徒をクリスティーヌに関わる様、仕向けるつもりはないようだ」


ヴィクトルとシャル様も同じ意見みたい。


「同じ派閥の令嬢達は、クリスティーヌ嬢とどう社交して良いか悩んでいる様だけど、筆頭であるマルヴィン家が、クリスティーヌ嬢との関わりを絶っているとわかれば悩まないかもね」

「お兄様、それではクリスティーヌ様がますます孤立してしまいますよ」

「本当に心配して、側に居てくれる友が居ないなんて、自業自得だよ」


それを言われてしむえば、それまでなんだけど。

下の学年の令嬢達もお茶会に一度は招待してくれているようだし、新しく友達を作ってもらうしかないわね。


「セティー。クリスティーヌの事は一度忘れてくれ。これはクリスティーヌ自身がどうにかすべき問題だ」

「わかっているわ」


私が関わったら余計拗れてしまうもの。

誰か、クリスティーヌ様に寄り添える人が居れば良いけど。



--------------------------


学園の廊下を歩くリーゼを教員が呼びかける。


「リーゼさん、貴方がジェラルド殿の秘書だとわかっているが、1つ頼まれてくれないかな」

「内容にもよりますが、私で出来る事であれば」

「2学年のクリスティーヌ•アルベール君から、後期の選択授業に関する書類を受け取ってきてくれないだろうか。今彼女は難しい立場でね。学園の教員である私が行けば高圧的に感じるかもしれない」

「クリスティーヌさんですか。わかりました。承ります」


クリスティーヌ様とお話しするチャンスですわね。

直ぐにクリステティーヌ様のクラスを訪ねましたが、居ませんでしたわ。

クラスに居ないとなると、学園で1人になれる所でしょうか。

この時間ですと裏庭に行ってみましょう。


「クリスティーヌ•アルベールさん。授業の提出書類がまだの様ですが」

「貴方は確か…」

「ジェラルド様の秘書を務めております。リーゼと申します。教員から選択授業の書類を預かる様依頼され、参りました」

「選択授業…どうせ授業を受けたって…何にもなりませんわ」


凄く暗い表情ですわ。

こんな彼女、初めて見ますわ。


「どうしてです?学んだ知識は誰にも奪われません。この先、何処へ行っても、どんな身分や職業についても、一生自分の中に残る財産です」

「誰にも…奪われない…」

「えぇ。それに学ぶ事は自身の成長に繋がります。直ぐに結果が出る物ではありませんが、学び続ける事で、努力や継続する力が付きます。昨年の今頃、順位が伸びておりますね。頑張ったのではありませか?」

「昨年…そうですわ。お義兄様に教えてもらって頑張ったのですわ…頑張ったのですわ」


彼女を幼い頃から見てきました。

確かに彼女は高飛車で身勝手で放漫でしたわ。

ですが、彼女は根っからの悪というわけではありませんわ。

ただ自分が特別なんだと言うだけで、他の令嬢達の様に悪質な事はしませんわ。


公爵令嬢である私に媚び諂うだけの令嬢より手の掛かる妹のように感じる事もありました。

きっと彼女の兄であるカミーユ様もそお考えてるのでしょう。


「自分の為にもう一度頑張りませんか?誇れる自分になる為に」

「誇れる…自分」

「えぇ。自分に誇れるようになれば、この先、どんな局面になっても後悔なく進めます」

「そんなの…わかりませんわ…私の未来なんて…保証はありませんわ」


ここまで卑屈になってしまうなんて…いったい何がありましたの?

ここ最近のアルベール家はクリスティーヌ様に対してケア不足ではありませんか?


「未来は誰にもわかりません。ですが、未来を切り開くのは自分です。何もせず、ただ受容するだけの人生なんて、生きながら死んでいるのと同じです」

「たかが子爵家の。それも行き遅れの令嬢が偉そうに…」


少し彼女らしさが戻ってきましたわね。

ここで煽れば乗ってきてくれそうですわ。


「そうですよ。貴方にとって取るに足らない存在である私が、貴方より充実した人生を送るなんて、釈ではありませんか?」

「そっそんなの!あっ当たり前ですわ!」


クリスティーヌの答えにリーゼはニッコリと笑う。


「では、頑張って頂けますね。早速選択授業について決めましょう」

「用紙は…捨ててしまいましたわ」

「そうかと思って、貰ってきています」


リーゼはクリスティーヌに用紙を見せ、選択授業を選ぶ。


「もし、将来事業をするなら、この授業を。領地経営をするならこれですね。作物などの研究をするならこっちの授業が良いです」

「そっそんな事まで考えて選択しなければいけませんの!?」

「そうですね。得たい知識を選択するのですから。領地経営ですと、嫁ぎ先でも使えますよ。夫より経営力を見せつけることで、実権を握れますから」


事業を始めるのはハードルが高いですし、作物の品種改良などはそこで育つ物にもよりますからね。

私は公爵家で全て学びましたが、クリスティーヌ様がこれから学ぶなら、どれかに絞りませんと、時間が足りませんわ。


「では、これにしますわ」

「では書類を預かります。クリスティーヌ様、頑張りましょね」

「あの…たまに貴方の所に尋ねてもよろしくて?」

「えぇ構いませんよ。ですが、年上の私ではなく、友人を作って下さい。真の友は生涯の宝ですから」

「もう無理ですわ。私は『毒花』ですもの」


母親の悪名を彼女が受け継いでしまったのは、知っていましたわ。


「クリスティーヌ様に変わる意思があればまだ間に合います。きっとカミーユ様もそう思っているはずです」

「お義兄様…」


彼女にとってカミーユ様が唯一、善意や家族の愛情を学べる相手なはずですわ。

選民意識の高い彼女が、平民の血が入ったカミーユ様を貶めずに『お義兄様』と敬っているのですもの。

カミーユ様の言葉なら彼女は受け入れられるはずですわ。


リーゼはクリスティーヌの肩に手を置き、ゆっくり語りかける。


「貴方の今までの言動は愚かだったと思いますが、貴方は馬鹿ではありません。改めて新しい自分になれますね」

「はい」



--------------------------

ジェラルドは、リーゼを監視させていた影から報告を受ける


「そうか、リーゼが。わかったご苦労様、下がってくれ」

「ハッ!」


「『学んだ知識は誰にも奪われない』か。彼女も同じ子事を言っていたな」


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