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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
160/235

初恋①

船に乗って2日。

明日にはベスタトールに着く。

マリアとエメリアの3人で看板に出てカードゲームやお喋りをしているわ。


「移動含めて1週間以上の日程でしたが、あっという間に感じましたね」

「旅行ってどうして時間が短く感じるのかしらね。今回は皆んなと一緒だから、移動の間も楽しくて、普段お父様に付いて行く出張より早く感じるわ」

「2人の言う通りね。楽しい時間てあっという間なのよね。私はお母様の実家に行く時は、お兄様と馬車に乗ってるから暇に感じた事は無いけど、マリアは普段1人で馬車に乗ってるの?」

「そうよ。お父様は部下の方と乗ってるから1人なのよ。船旅も1人で過ごす時間が長いから移動は苦痛なのよ。本を読もうにも、酔ってしまうから無理なのよね」


1人で数日間馬車や船で過ごすのは確かに暇よね。


「じゃあこうしてゲームやお喋り出来て、今回の旅はずっと楽しいですね!」

「そうね!また皆んなで旅行に行きたいわ!はい、上がりよ!」


あっ!負けちゃったわ!


エメリアが罰ゲーム箱から紙を一枚取る。

負けたら紙に書かれた内容を話す事になっているのよ。


「セティーさんの罰ゲームは『最近始めようと思っている事』です!」

「それはもちろんダイエットよ!夕食の量を減らすとアル様が過剰に心配してしまって、中々上手くいかないのよ。帰ったら絶対始めるわ!」

「あぁ。アル様、凄く心配してましたよね」

「船医を!って凄かったわね」


そうなのよ。

アル様が心配するものだから、普段通りの食事を食べて、尚且つ安静にする様になんて言われてしまったから、運動もまだ始められてないのよ。


「まあまぁ。愛されている証拠よ」

「そうですよ!愛してるからこその過保護ですよ」

「うぅわかっているわ。次のゲームにしましょう!今度は負けないわ」


次のゲームでエメリアが負け、私が引いた罰ゲームの内容は『恋話』だった。


これは!

エメリアの好きな人を知るチャンス!!


「私はお2人みたいに話せる事が無いです」

「かっこいいなって思ってる人も居ないの?」

「現在じゃなくも過去の話でも良いわよ。初恋の人とか」


「はっ初恋ですか。えっと言えません」

「それじゃあ罰ゲームにならないわ」

「うぅそうですよね。えっと初恋はあります」

「「どんな人!?」」

 

顔を真っ赤にしたエメリアは私達の質問に答える。


「えっと誰にでも優しくて、穏やかで、頑張り屋で。いつも私の味方になってくれる人です」

「素敵な人じゃない!エメリアの恋話初めて聞いたけど、その人は今どこに?近くに居る人なの?」

「近く居るけど、遠い存在になりました。私がもっと頑張らないといけません」


近いけど、遠いい?

エメリアが平民の頃の話よね。

貴族になって立場が変わったから?


「エメリア、その人は私達が知ってる人?」

「えっと内緒です」


「えぇ知りたいわ!」

「セティー。これ以上聞いたらエメリアが可哀想よ」


エメリアは首まで真っ赤になっている。


「うっそれもそうね。エメリア、ごめんね」

「いっいえ」



「そういえばセティーさんは初恋もアル様ですか?」

「そうよ。出会った時からアル様に恋してるから」

「初恋の相手と結婚なんて、素敵ですね。マリアさんの初恋の相手ってどんな人ですか?」


いつの間にゲームはせずに、恋バナになっているわ。

罰ゲームの意味がなくなったわね。


「私の初恋は図書館の司書様よ。物腰が柔らかくてメガネがよく似合って素敵な人だったわ。今思えば憧れもあったと思うわ」

「年上に憧れるのわかるわぁ」


年上のお兄さんってなんだかカッコよく見えるのよね。


「3人とも。風が出てきたから、そろそろ中に入った方が良いよ」


お兄様が船内に入るように言いに来てくれた。


「凄く盛り上がっていたけど、何の話をしていたの?」

「初恋の話ですよ」

「セティー達は本当に恋の話が好きだね」


「そういえばジル様は初恋の人って居るんですか?」

「そりゃあ20年以上生きてるからね。初恋の人くらい居るよ」

「えっ!?お兄様に初恋の人!?だっ誰ですか!その人は今どこに!?」


お兄様に初恋の人だなんて!

そんな話聞いた事ないわ!


「何処にいるかわからないんだ」

「そんな。探しましょう!マルヴィン家の力を使えば探し出せます!そしてお兄様とその方が結婚を!」


ゲーム通りにエメリアが攻略対象者と恋愛をしないなら、お兄様には初恋の人と幸せになってもらいたいわ!


「セティー落ち着いて。探し出した所で、相手が結婚してたらどうするの?」

「ごめんなさい。お兄様には幸せになってほしくて、私暴走してましたね」

「わかっているよ。私の為にありがとう」


「ジェラルド様の初恋の相手……」


船内の入り口付近に居たエリザベートは、たまたまセレスティーヌ達の話を聞いてしまった。


「だっ誰ですの?それらしい相手が居る事なんて、今まで聞いた事も見た事もありませんわ」


外に出る事の少ない、幼い貴族令息の初恋の相手は大体決まっている。

幼い頃のメイドや家庭教師など、年上に憧れる事が多いと聞く。


「ジェラルド様だって人ですわ。恋の1つや2つくらい、ありますわよね。ジェラルド様が愛した人なら、私も納得する事が出来ますが、結ばれない相手なのでしょうか?セレスティーヌ様の言う通り、探してみようかしら。いえっ今余計な事をするのは不味いですわ。(アンジェ•ミレットの名前を知られリーゼが疑われていますもの。普段通りにしなければ余計怪しまれますわ)」


そう呟いたエリザベートは自室へ戻っていった。



「アル様、お兄様の事で聞きたい事があるの」

「ジルの事?それなら本人に直接聞いた方が早い。セティーになら何でも話してくれるだろう」

「聞きたい事はお兄様の初恋の相手についてなの」

「ジルの初恋!?」

「アル様は私の知らないお兄様を見てきたでしょう?お兄様が学園に在籍していた時も私よりアル様の方が会っていただろうし」

「生憎だが私は何も知らない。ジルは昔から完璧で私の見本だった。そんなジルが頬を染める様な所は見た事がないし、浮いた話も聞いた事がない」


アル様でもわからないのね。

何か知ってると思ったけど。


「そう。それなら仕方ないわね」

「それにしてもジルの初恋の相手か。好意を寄せられる事はあってもジルが好意を寄せているのは想像出来ないな」

「お兄様だって恋愛の1つくらいするわよ」

「物腰柔らかそうに見せておいて、氷の微笑で壁を作るジルが、恋するほどの相手なら私も興味がある。それに昔、ジルを巡って令嬢達が争っているのを見たジルの顔を思い出すと、その初恋の人は穏やか方なんだろうな」


あっなんか聞いた事があるわ。

お兄様を巡って複数の令嬢が争った事でその場が滅茶苦茶になったと。

お兄様の外用の笑顔は完璧な分、熱を持たない人形のようなのよね。


「そろそろジルも身を固めなければいけないだろうな。ジルの奥方になる女性は王族とも関わりを持つ立場になるから、変な相手では困る」

「変な相手だなんて、私が許さないわ!お兄様に見合う完璧な人じゃ無いと嫌よ!」


アル様は呆れた顔をする。

「ジルの相手にとって最大の障害はセティーだろうな」

「だって仕方ないじゃない。大好きなお兄様が変な人と結婚するなんて嫌よ。お兄様には世界で一番幸せになってほしいもの」


私の言葉を聞いたアル様はニコッと笑い、私の肩を自分の方へ引き寄せる。


「悪が、ジルは世界で2番目だ。世界で一番幸せなのは、セティーと結婚出来る私だ」

「もうアル様ったら…」


私がこんなに幸せなんだもの。

今度はお兄様が幸せになってほしいわ。


もちろん、マリアやエメリア。

それにシャルル様にヴィクトルやリュカだって皆んな幸せになってほしいわ。



セレスティーヌ達は無事にベスタトールに着き、各々自宅に帰る。

エリザベート以外は明日より学園に行く事になっている。


「皆様、本当にありがとうございました」

「いえ、船旅で疲れたでしょうから、ごゆっくりお休み下さい」

「えぇ皆様も。明日から学園にお戻りになられますから、今日の内に疲れを癒して下さいませ」


エリザベート様がミッドランド公爵家の馬車で帰るのを見送って私達も自宅に帰る。


「お兄様、帰りましょう」

「うん、そうだね。兄様は部屋でする事があるから、構わずに食事をとって休むんだよ?」

「何かお手伝い出来る事はありますか?お兄様もお疲れでしょうからお手伝いします」

「ありがとう、大丈夫だよ。終わったら兄様もちゃんと休むから」

「わかりました。何かあれば言って下さいね」



自室に帰ってきたジェラルドは棚やクローゼットを開け何かを探す。


「確かこの辺に…あった」


ジェラルドが取り出したのは小さな箱だ。


中にはタオルと手紙が入っていた。

タオルには緑の薔薇が刺繍されていた。


「あぁ、やっぱり貴方だったのか。名前も顔もわからない、私の初恋の人」

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