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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
156/236

誕生祭④

更新の間隔が空いて申し訳ありません。

誤字脱字報告、本当にありがとうございます。

マリアside


身支度を整えて部屋でシャル様が来るよのを待っている。


約束の時間は当に過ぎているけど、大丈夫かしら?

やっぱり忙しいのね。


不安そうな私を見て、メイドが気を紛らわせるために私に話題を振る。


「素敵な御召し物ですが、外套で隠れてしまうのは勿体ないですね」

「仕方ないわ。この強い日差しの下では、火傷してしまうもの」


シャル様がナハラセスの装いを一式用意してくれた。


「お持ちした髪飾りの中に合うのもがあって良かったですね」

「そうね」


髪もナハラセス風に結っているけど、外套のフードで隠れてしまうのよね。


約束の時間から2時間が経とうとした時、シャル様が慌てて部屋に入ってきた。


「マリア!すまない!だいぶ待たせてしまった!」

「私なら大丈夫よ。シャル様こそ大丈夫なの?やっぱり忙しいのではないのかしら?」


急いで来たのか、シャル様の額には汗が滲んでいるわ。

西国の方と会合があった筈よ。

それから、国内の貴族達との会食も。


それに昨夜、服を届けてくれた従者の方に、シャル様にお礼を伝えてほしくて、シャル様はもうお休みになったのかと尋ねたら、書類仕事をしていると教えてくれたわ。


「マリアとの約束の時間を守れなかったうえに、知らせも出来ずに待たせてしまった。本当に申し訳ない」


シャル様は私の目線に合わせて、謝罪を続ける。


私はシャル様の額にハンカチを当てる。


「シャル様、外は私には暑いわ。太陽が真上にある時間よりも、今の方がほんの少し、暑さが和らいでるから、かえって良かったわ。冷たい物でも飲んで、一息ついてから出掛けましょう?」

「マリア…。ありがとう。それとその服、とても似合いっている。髪も綺麗だな」

「ありがとう」


少し休んだあと、シャル様と街に出掛ける。


「じゃあ俺は離れてますから。2人の時間を楽しんで下さい」

「あぁ。だがくれぐれも頼んだぞ」

「わかってますって。じゃあ姫さんも姿は見えなくても、ちゃんと護衛してますから。安心して楽しんで下さい」


護衛の方は軽い口調でシャル様と話して、手を振り離れていく。

昨夜の従者の方と似てるわ。


「すまんな。アイツも腕は確かなんだが、俺に仕える事になった時に気を遣わなくて良いとしているからな」

「なんだか気の良い方ね。昨日会った従者の方に似てる気がするわ」

「あぁ。アイツらは兄弟だからな」


シャル様が身分関係なく、役職を付けている事もあってか、シャル様の周りはとても気さくな方が多いわ。


「マリアなら大丈夫だと思うが、俺の周りに居るのは平民が多い。もし気になるよなら他の者と変えよう」

「まさか!能力に身分は関係ないわ!剣の腕も平民の方は実践向きだってヴィが言っていたわ。それに、治世をするなら身分関係なく意見を聞けた方が良いわ」

「マリアならそう言ってくれると思っていた。それにな、アイツらは貴族特有のしがらみがない。裏表がないからこそ信頼できるんだ」


シャル様はニッコリと笑いながら話す。

普通は色んな思惑があって、子息達を王族の側近になる様に送り込むわ。

だから、信頼出来る人を側に置けるとは限らない。


「貴重な方々ね」

シャル様が気を休める事ができる貴重な人達ね。


「そうだな。そろそろ行こうか。祭の最中だから、人が多い。決して離さないようにな」


シャル様と手を繋ぎ街を歩く。


わぁ!凄い活気!

シャル様の誕生祭で王都全体が賑わってるわ!

街の中心部では飲み物と食べ物が配られてれいる事もあって、中心に行けば行くほど、人で賑わっているわ。


あっ記念メダルが売ってるわ。

あっちには、シャル様の姿絵があるわ。


たくさんの花が飾れ、音楽が奏でられている。

前に馬車の中から見たのと、実際に街に足を踏み入れるのとでは、印象が違うわ。

国民の皆んなが凄く楽しそう。


街と国民達でシャル様の誕生日をお祝いしてるのね。


「「「我らの王子に乾杯!!!」」」


広間で乾杯している男性達が居るわ。


「あっシャルエラント王子!」

「王子!おめでとうございます!」


乾杯していた人がシャル様に気づいて声を掛けてきたわ。


「皆楽しめているようだな」

「そりゃあもう!酒も飯も最高ですよ!」

「これからも頼みますよ!」

「俺ら信じてるんすよ!王子がもっと良い国にしてくれるって!」


凄い。

王子に国民が普通に話しかけてるわ。

普段から市井に出向いてると言っていたけど、こんなに自然に国民と話しているなんて驚きだわ。


「任せておけ。だが俺1人では国は成り立たん。国民あっての国だからな。これからも俺を支えてくれ」

「任せて下さいよ!」

「俺らで盛り上げていきますよ!」


「ハハ。頼もしい国民だろう?」


シャル様はニカッと笑い、嬉しそうに私に話しかけた。


「王子の花嫁ですかい!?」

「えっ!?」


急に男性達に注目されて驚いてしまったわ。

花嫁って、そんないきなり言われても。


「えらい別嬪だな。流石王子!」

「ナハラセスの未来も明るいな!」

「こりゃあまた乾杯が必要だな!」

「ちょっちょっと!」


男性達は私を無視して乾杯を始めた。


「放っておけ、彼奴らは何かに付けて乾杯をしているだけだ」

「でっでも誤解を解かないと…」

「どうせ聞きはしないだろう。マリアも気にしないでくれ。さぁ祭りを楽しもう」


気にしないでくれって言われても。

花嫁って言われて、ドキドキしないわけないじゃない。


それからもお祭りを見て周る間、老若男女関係なくシャル様は国民に話し掛けられていたわ。


国民に囲まれているシャル様は不思議と違和感を感じないわ。


本当に国民に愛されているのね。


「王子のおかげで暮らしが良くなったわ」

「改革なんて物騒だと思ったけど、悪どい貴族を次々に捕まえてくれたから、治安も良くなったわね」


周りからそんな言葉が聞こえてくる。


シャル様の改革によって国民の暮らしはより向上したわ。

だからかしら。

国民の目が輝いてる。

自分達の国はもっと良くなると信じている顔をしているわ。


その後私は記念メダルを買って、シャル様とサーカスを見たわ。


サーカスはとても素晴らしかったわ!

エキゾチックな音楽に合わせた演舞に軽技!

舞台の仕掛けや装飾も合間ってまるで異世界だったわ!


興奮が冷めないまま、サーカステントから出ると当たりは暗くなり始めていたわ。


そろそろ帰る頃かしら。

シャル様は忙しいもの。

今日はナハラセスの国民と話すシャル様を見る事が出来て良かったわ。


「シャル様、今日はありが…「まだ時間を貰えるか?」

「えっ?えぇもちろんよ。でもシャル様は忙しいんじゃあ?」

「マリア以上に優先する事はない。どうしてもマリアと叶えたい事があるんだ」


叶えたい事…いったい何かしら?

シャル様の願いなら叶えてあげたいわ。


「シャル様の叶えたい事って何?」

「それは、後のお楽しみだ」


シャル様は口元に人差し指を置いてニカッと笑う。


その無邪気な笑顔にドキッとしてしまったわ。


シャル様が連れてきたのは、王都からすぐの泉。

泉の周りは明かりが無いから暗くて、あまりよく見えないけど、何もないみたい。


「シャル様、ここにいったい何があるの?」

「もう少しだ。暗くて危ないから、その場で待っていてくれ」

「わかったわ」


シャル様はギュッと私の手を握って、私にその場に居るようにと言う。


街の方を見ると徐々に街の光が消え、当たりが暗闇に包まれたわ。

そして、街の方から賑やかな声が聞こえてきた。


いったい、何が起こっているの?


私が不思議に思っていると空に一つの光の粒が浮かび上がるのが見えた。

それから一気に光の粒が空に浮かび上がったわ。


あれは、ランタン!?

ランタンが空に浮かんでいるわ!


「わぁ!!すっ凄い!!」


夢にまでみた空に浮かぶランタン!

幼い頃に絵本で見て、いつかこの目で見てみたいと思っていたの!


ランタンの光が泉に映し出され、空と大地が光に包まれた様に見え、さらに幻想的になる。


淡いオレンジ色の光に照らされる。

まるで自分が光に包まれているみたい。


「これは…想像以上だな」


シャル様も私と同じ様に目を輝かせているわ。


「シャル様の叶えたい事ってこれだったのね!」

「あぁ。マリアと一緒にこの光景を見たかったんだ」

「あのね、私も!私も!ずっとこの空に浮かぶランタンを!この光景を見てみたかったの!」

「そうか!それは良かった!(本当はヴィからもらった本に書いてあったんだがな)」


「このランタンは国民が?」

「ああ。俺の誕生日を祝い、これからのナハラセスの発展を願ってくれているんだ」

「そうなのね…。ナハラセスでは、これが毎年行われるの?」

「いや、今年が初めてだ。今年は革命があったからな(昨日の今日で用意してくれた部下や参加してくれた国民には感謝だな。ヴィから貰った本に書かれたマリアの夢の中で、すぐに現実可能でだったのがこれだ。マリアの夢を叶えられて良かった)」


まさかこの夢が叶うなんて。

絵本に書かれた現実にはない光景。

幼い子供の叶わない夢だと思っていたのに。


シャル様に。

ナハラセスの国民に。

心からの感謝を伝えたいわ。


全てのランタンが空高く昇っていく。


あぁ本当に綺麗。

想像よりもずっとずっと綺麗。


「シャル様…本当にありがとう」

「俺もマリアと夢が叶えられて良かった」


シャル様はニッコリ笑いながら私の涙を拭う。


「あっ感動で涙が…。ありがとう」


夢中になり過ぎて、自分が涙を流していた事にも気づかなかったわ。


それからしばらく、シャル様と2人でランタンの光が見えなくなるまで空を眺めていた。




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シャルエラントside


「若、姫さんは喜んでくれてましたか?」

「あぁ喜んでいたとも。無理を言ってすまなかったな。ありがとう」

「良いですよ。それより、姫さんは嫁いでくれそうですか?」

「さぁどうだろうな。この国を少しでも好きになってくれたら良いが」

「悠長な事やってる暇はないですよ。王妃や邪魔な貴族を処分したから、もう留学先に避難する必要ないんですからね。予定通り早期卒業して帰って来て下さいね」

「わかっている…マリア達と共に居れる時間は、残り一年もないな…」

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