ナハラセス②
「わぁ!素敵な部屋!こんなに広くて豪華な部屋で良いのかしら」
通された部屋があまりに豪華で驚いたわ。
アル様が使ってる隣の部屋も同じ感じかしら。
後でみんなの部屋見させてもらおうかしら。
壁に掛けられるタペストリーやカーテン、それ以外の調度品も私の好きな色合いだわ。
この大きな絵も素敵だわ。
ん?この絵なんか違和感が…。
そっと絵に触れ、ゆっくり押してみた。
するとゆっくりと扉のように絵は動き、向こう側が見えた。
「!?あっアル様!?」
向こう側には着替え途中のアル様の姿が。
シャツのボタンが全て開いているお陰でアル様の腹筋がハッキリと見えてしまった。
「セティー!?」
「ごごごっごめんなさい!!」
咄嗟に手で顔を覆うが指の隙間からチラチラアル様の腹筋を見てしまう。
アル様…腹筋も綺麗…。
普通の王子ってもっと筋肉はないものじゃないの?
アル様、あんなに綺麗に腹筋が割れてるなんて、いつも抱きしめてくれる腕もガッシリしてるし鍛錬してるのね。
コンコン。
「アル、俺だ。入るぞ」
ノックと同時にシャル様がアル様の部屋に入ってきた。
「シャル!返事をする前に入ってくるな」
「良いじゃないか、俺達の仲だろ。ん?なんだ。もうその絵の秘密に気づいたのか。
シャル様はニヤリと笑って面白そうに私達を見ている。
「シャル!わざとだな!」
「愛する婚約者同士なんだから問題ないだろ。安心しろジルには秘密にしておく」
「お前って奴は…」
アル様は呆れた様な顔をしてシャル様と話し続けているため、未だシャツのボタンを閉じていない。
もうダメ。
心臓が限界。
ただでさえ、この国は暑いのに、のぼせそう。
「アル様…そろそろ…服を着てほしいのだけど…」
「ああすまない。セティーの前でこの様な格好で」
アル様は慌ててシャツのボタンをとめた。
「別に男の半裸だど見られた所でどうって事ないだろ」
「私には…心臓に悪いわ」
「ハハ。セティーは恥じらう乙女だな。この国では肌を出しているのは普通だぞ」
そう言われればシャル様は胸筋がしっかり見える服を着ているわね。
そんなシャル様の姿を見ても平気みたい。
ドキドキするのはアル様だけのようね。
良かった。
「心臓がうるさくなるのはアル様にだけみたい。良かったわ。他の人にまでドキドキしてたら大変だもの」
「っ!!」
私がそう言うとアル様は顔に手を当て上を向いた。
「無自覚というのは恐ろしいものだな。アルも苦労するな」
シャル様は少し呆れ顔をしている。
「シャル、絵の仕掛けを教えに来ただけか?」
「絵の仕掛けについて教えに来ただけではない。俺の部屋に招こうと思ってな」
「シャル様の部屋に?」
「ああ。パーティーは2日後だが、明日はアルとジルと俺は会議があるからな。今のうちに俺の部屋に招こうと思ってな。この国は暑いだろう。セティーもアルの様に着替えると良い。その間に皆を誘ってこよう」
「わかったわ。じゃあアル様も後でね」
「アル、覗くなよ」
「そんな事するわけないだろ!」
シャル様に揶揄われているアル様を尻目に私は絵の扉を閉める。
私は、薄手のドレスに着替えてシャル様へのプレゼントを持っち、絵をノックした。
するとアル様の方から絵を動かして開いてくれた。
「この絵を動かしてセティーに会うのは、なんだか変な気持ちになるな」
「普通の扉じゃないせいか、いけない事してみたいでドキドキするわね」
私達はシャル様の従者に案内され、シャル様の部屋がある宮殿に移動した。
私達が泊まっている宮殿も凄いけど、本殿と呼ばれるこの宮殿は更に煌びやかで凄いわ。
柱一本一本が芸術品の様に彫刻されて、天上には絵が描かれている。
「シャルエラント様、お連れしました」
「ご苦労。下がって良い。2人とも入ってくれ、他の皆んなは既に来ている」
シャル様の部屋は壁一面が彫刻家され、彩りの良い調度品が置かれていた。
「凄い…綺麗…」
「褒めてもらえて何よりだ。俺がここに住むようになり、自分が居心地が良いように作らせた部屋だからな」
ここは、シャル様が王子として生きてきた部屋なのね。
シャル様は私とアル様をローソファに案内して、離れた所で部屋を観察しているマリアの側に行った。
先程から部屋の説明をしていたみたい。
「これは、もしかて仕掛箱?」
マリアが棚に置かれた箱に疑問を持った。
「よく気がついたな。この中には俺が姫として生きてきた時の物が入っている。見てみたいか?」
「そんな大切なもの、おいそれと見れないわ」
「マリアになら構わない」
シャルエラントは箱の仕掛けを解き、中の物をマリアに見せた。
中に入っていたのは母親であるシャルーファがシャルエラントに作った服や羽織だった。
マリアは羽織りの裾の刺繍の文字を読む。
「愛する子シャール…私の…喜び」
「流石マリア。ナハラセス語はもう俺が翻訳しなくても読める様だな。『シャール』は母がくれた俺の最初の名だ」
「お母様との大事な思い出を、私なんかに…「マリアだから見せたのだ。いつか、愛する人に俺の最初の名を呼んでほしいと思っている」
「っ!(それって私の事よね。なんて答えれば…)」
「シャル様ー。マリアさーん」
「そろそろシャル様にプレゼントを渡して帰らないと。アル様達は明日会議なんだから」
ヴィクトルとエメラルドが2人に声を掛ける。
「えぇそうね。シャル様ありがとう。皆んな、個人的なプレゼントがあるの。受け取ってくれると嬉しいわ」
「もちろんだ。皆の家から既に贈り物を貰っているが、皆が俺の為に用意してくれた物だ。喜んで受け取ろう」
アル様、ベスタトール製の服。
お兄様はネクタイやカフス等服に付ける装飾品一式。
リュカは金細工の髪留め。
ヴィクトルは一冊の本。
「赤と緑を基調とした服か、ありがとう。ジルからの装飾品も凄いな大切にする。髪留めも見事な細工だな。どうだ、似合うか?」
シャル様は髪を束、髪留めをし、服を体に当てる。
「シャルは派手な服も似合うな」
「装飾品もその服に合っているようですね」
「とてもお似合いですよ」
「ヴィが本とは、珍しいな」
「それは、この世に一冊しかない大切な本だから、皆んなが帰って1人の時に見てね」
「あぁわかった」
アル様がマリアの色を意識した服をあげたのも気になるけど、ヴィクトルのこの世に一冊だけの本って何?
気になるわ。
「それじゃあ今度は私達ですね!」
エメリアはミサンガ。
私は刺繍。
それぞれ手作りした物を渡した。
「おぉ!手作りとは嬉しいな!とても記念になる。セティーのは部屋に飾らせてもらう」
「あっあの私も大した物じゃないのだけど」
マリアはそう言って自身無さげにシャル様にプレゼントを渡した。
「これは!マリアが作ってくれたのか!?」
「リュカに職人を紹介してもらったり、協力してもらって。初めて織ったから下手かもしれないけど」
「下手なものか!素晴らしい出来だ!大変だっただろう。俺の為に一本一本織ってくれたのだな」
シャル様は着けていたストールを外し、マリアのストールを身につける。
わぁ!
シャル様によく似合うわ!
「っ〜!!」
マリアはシャル様に見つめているけど、言葉にならないようだわ。
それを察したのか、すかさずリュカがフォローを入れる。
「マリア様が一生懸命考えた模様、シャル様にとてもお似合いですね」
「えぇ。良かった」
「シャル様、織物には糸と糸が互いに結び合うように織りなす事から、人と人の縁を結ぶと言われています」
リュカの言葉にシャル様の目は輝き、嬉しそうにストールを見る。
「マリア本当にありがとう。皆も俺の為にありがとう」
マリア、喜んでもらえて良かったわね。
「そうだ。皆にパーティーの参加者名簿を見せておこう」
「それって私達が見て良いのかしら。重要事項でしょう?」
「大丈夫だ。アル達が俺に害を為すわけがないと自信を持って言えるからな。それに事前に知っておいた方が良いだろう。厄介な参加者に絡まれる恐れがあるかな。印の付けてある人物には気をつけてくれ。俺に敵意を持っている者達だ」
けっこう多いわね。
えっどうしてこの人の名前が?
「エリザベート嬢も参加されるのですね」
お兄様の問いかけに、シャル様が答える。
「あぁ。フィオーレの王子とな。既に来ているが、暑さで体調を崩しているようだ。どうやらフィオーレ出身である母親の体質に似て暑さに弱いようだ」
「そうなの!?大丈夫かしら?」
そういえば、エリザベート様のお母様って元フィオーレの皇女だったわ。
フィオーレは一年の半分が雪で覆われている国。
その国の体質ならナハラセスの暑さは堪えるはずだわ。
「心配なら見舞いに行ってやると良い。マリア達は違う宮殿を使ってもらっている。」
「そうね。そうするわ」
その日の夜、エリザベート様へお見舞いの訪問をしたいと手紙を出した。
シャルの誕生祭の話、長くなりそうです。




