ナハラセス①
誤字脱字の報告ありがとうございます。
ナハラセスへ向け出発するまで、後1週間。
シャル様は一足先に国に戻ったわ。
私はアル様と打ち合わせと衣装合わせで少し忙しく過ごしていた。
合間でシャル様へのプレゼントを作ったわ。
花や鳥、そしてメッセージの刺繍して綺麗な枠に入れ完成した。
「マリア。どお?シャル様のプレゼント進んでる?」
「なんとか。後1週間あれば完成するわ。もっとシンプルなデザインだったら、余裕を持って作れたと思うんだけど。色々詰め込んだら難しいデザインになっちゃったのよ」
「どんなデザインにしたのか見てみたいです!」
確かに。
見てみたいわ。
「ゔーん。恥ずかしいけど、2人なら良いわ。下手でも笑わないでね」
「もちろんよ。ありがとう」
「マリアさん!ありがとうございます!」
マリアに見せてくれたのは色とりどりのアラベスク模様の様な複雑ない模様で、ナハラセスの国旗に使われている孔雀と太陽も織られ、芸術品の様に美しいストールだった。
「すっ凄いわ!なんて綺麗なの!」
「マリアさんこんな複雑な模様を織れるなんて凄いです!」
「ありがとう。パターンを書いてくれた職人の腕が良いのよ。たくさんアドバイスをもらったの。授業以外の時間はずっと降り続けてやっとここまできたわ」
凄いわ。
シンプルな物なら私でも出来るかしら。
私もアル様に織物作りたいな。
「おかげでヴィと話す時間が取れないのよ。結局休みの日も家に帰らずにここで作業していたし」
「じゃあドレスの準備とは大丈夫ですか?」
「ドレスはお母様達が用意してあると言っていたから大丈夫よ」
「そうなんですね!じゃあ心配ないですね!」
「ただ当日までの楽しみにとっておくようにと見せてくれなかったのよね。念の為に手持ちドレスも持って行くから良いんだけど」
「それよりエメリアは大丈夫なの?」
「大丈夫です!流石にマダムフルールのような一流店は無理ですが、新しくドレスを作ってもらえました!」
マダムのお店は最高級の物ばかりだし、気軽にオーダー出来るお店じゃないものね。
お飾りを余分に幾つか持っていこうかしら。
もしかしたらエメリアに似合う物があるかもだし。
「それなら良かったわ。もし大変そうなら私かセティーのドレスを貸そうって話してたのよ」
「心配してくれてありがとうございます!」
シャル様の誕生祭に出席するなら、それなりの格好じゃないといけないものね。
それに一緒に居る私達は高位貴族だからどうしたってエメリアは比べられてしまうもの。
社交界では私達が友達だと知れ渡っているから、難癖をつけてくる人は居ないけど、他国ではどうなるか、わからないわ。
今回一緒に行くリュカも心配だわ。
会場で嫌な視線を浴びなければ良いんだけど。
「リュカも準備は大丈夫だって言ってました!ナハラセスでの商業を広げるチャンスだと、リュカのお父さんが力を入れて準備してくれたようです」
「そう。それなら良かったわ。会場で変な人が絡んできたら必ず私達を呼ぶのよ!」
「私とヴィやジル様と一緒に入場するし、私達と一緒にいれば安全なはずよ」
「はい!ありがとうございます!皆さんにこんなに心配してもらえるなんて、私は幸せ者ですね!」
エメリアー
なんて可愛いのかしら!
私はアル様と来賓席に居ないといけない時間があるけど、何かあったら即、駆けつけるわ!
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ナハラセスに到着し、3日ぶりに足を地面につけた。
船酔いもなくて楽しい船旅だったわ。
わぁ。
なんだか変な感じ。
体が揺れている感じがする。
そんな事を呑気に感じているとアル様に抱きしめられた。
「大丈夫か?下船病が酷いようなら王宮に向かわずに休もう」
「大丈夫よ。ほら出迎えの人達も待っているわ」
視線を前方の方へ向けると
地面には絨毯が引かれ、絨毯の両サイドに出迎えの人達がズラリと並らび、側には騎士達も待機していた。
私達もアル様を中心にして並ぶ。
奥から絨毯の上をゆっくり、こちら向かって歩いてくる人が見えた。
「皆、よく来てくれた!ようこそナハラセスへ」
シャル様!?
シャル様自らお出迎えに来たの!?
「体調の悪い者は居ないか?念の為、医師を用意している」
「幸いな事に、医師の必要な者は居ない。礼を言う」
「そうか。それは良かった。だが慣れない船旅は疲れただろう。王宮に部屋を用意している。そちらでゆっくり休んでくれ」
「ベスタトールを代表して礼を言おう」
アル様とシャル様の表向きの挨拶が終わり、私達は馬車に乗り王宮へ向かう。
来賓である私とアル様はシャル様と同じ馬車に乗るはずだった。
「シャルエラント王子!?」
「愛する婚約者と2人きりで俺の国を見てくれ。俺は学友達に国の説明をしよう」
シャル様はそう言うと、マリアが乗っている馬車に乗り込んだ。
「わっ私、リュカに話があるので、向こうに乗りますね!」
「エメリア!?」
先にマリアと馬車に乗り込んでいたエメリアは慌てて馬車を降り、お兄様達が乗っていた馬車に乗り込む。
マリア達と一緒に乗る予定だったヴィクトルも連れて。
「そうか。それは仕方ないな(流石エメリアだ。気が効くな)」
「なっなんでヴィまで連れてっちゃったの!?」
そんな一部始終を馬車の窓から見てしまった。
「シャルの奴、なんて無理矢理な。周りも大変だな」
「大丈夫かしら」
「エメリアやヴィも無事に向こうの馬車に乗ったようだし、大丈夫だろう」
2人の事は見えていたから心配してないけど、マリアはシャル様と2人きりで大丈夫かしら?
「せっかくの2人きりだ。私がセティーにナハラセスの街を説明しよう」
「お願いするわアル様」
起きてしまった事を心配しても仕方ないと思い、私はアル様に説明してもらいながら、ナハラセスの街並みを眺める。
一方その頃マリアとシャルエラントは。
「シャル様!」
「マリア、久しぶりだな。元気にしていたか?」
「最後に会ってからそんなに経っていないわ」
「つれないな。2週間は会えていなかったというのに。それに国に戻る前もそんなに顔を合わせなかっただろう?」
「そんな事はないわ」
「わかっている。ヴィとの時間を優先していたのだろう?妬いてしまう程の兄妹愛だ」
「それは……。」
「いいさ。さぁ俺の国を見てくれ。関所を通ったらすぐに王都だ」
「わぁ!本当に石造の街並みなのね!白い壁に青い屋根が綺麗」
「あそこに見えるのは教会だ」
「綺麗だわ。あそこの大きな建物はなにかしら?」
「あれはサーカス。曲芸を見せる一団だ」
「サーカス!こちらでは象が出るって聞いたわ!」
「あぁ。興味がある様だな。時間があれば見に行くとしよう」
その後もシャルエラントは真っ当に王都の説明を行い、馬車は王宮に到着した。
「アルとセティーは公的な挨拶が必要だから、マリア達は先に部屋へ案内させよう」
「ありがとう。暫くの間、お世話になるわ」
「マリアの部屋は俺が直接手配したんだ。気に入らなければ、なんでも言ってくれ」
「えっそんな、私は来賓じゃないのに」
「俺にとってはマリアが一番もてなしたい相手だからな」
「えっとありがとう。シャル様が用意してくれたお部屋楽しみだわ」
「アルベルト王太子様とセレスティーヌ様はこちらへ。他の皆様はお部屋にご案内させて頂きます」
「俺の一等大事な客人達だ。くれぐれも丁重にな」
「かしこまりました」
私とアル様は謁見の間に通され、公的な挨拶を済ませ、ベスタトールからの贈り物を渡した。
それにしても。
シャル様とナハラセス国王瓜二つね!
背丈まで同じくらいかしら。
そういえば、この場にいる貴族達の中で顔色が悪い方が多いわね。
「この間は貴重な贈り物を貴殿から頂いた。これは、そのお返しに貰い受けてほしい」
アル様がそう言うと控えていた従者が箱を渡す。
あれは何かしら。
私が聞かされていないものよね。
それに、この間って、シャル様がベスタトールに戻ってきた時のことかしら。
「これはこれは。ナハラセスとベスタトールの友好が永遠に続く事を願おう」
最後にナハラセス国王の言葉を聞いて私達の挨拶は終わった。




