舞台裏
とある日の王宮執務室
「はぁー。終わらん。エドガルド、もう残りは明日にしないか」
「何を言ってんですか陛下。明日こそは、愛しい家族が待つ我が家に帰るんですから。あなたは徹夜してでも終わらせて下さい」
「おい!それが国王に対する宰相の言葉なのか⁉︎」
「うるさいですよ!とっくに勤務時間外です!ここからは旧友として接します。ロベルト!さっさとこの書類に目を通せ!」
そう、1人はこの国の国王、ロベルト・ヴェスタトール。
そしてもう1人はこの国の宰相、エドガルド・マルヴィンだ。
「もう、ワシは疲れたぞ!お前も家に帰って明日にしよう」
「はぁ!?今帰っても、数時間後にはここに居るんだぞ!それに!家に帰っても、家族の顔も見れないなんて嫌だ!明日こそは、皆で夕食を取るんだからな!今やれ!」
「なに!?」
「そもそもロベルト!私はずっと言ってるだろ!こんな仕事は辞めて、領地で愛する妻と息子、そして我が天使とひっそり、ゆっくり過ごすと‼︎」
「何を勝手なことを言ってるんだ!エドガルド!お前以外に宰相が務まるか!!それに約束しただろ!!お前とエレオノーラ夫人がくっつけるのを手伝ったら、宰相となり私の手助けをすると!!」
「それはすごく感謝してる!だが!もうじゅーぶん、働いただろうが!!だいたい、その愛する妻とまともに会話も出来ず、愛する妻が産んでくれた子供達にも、会えない仕事ってなんだ!?何が悲しくて、こんなおっさんとずっと一緒にいなければならないんだ!!」
「おっさんとはなんだ!?おっさんとは!?ワシだってアイリーンの待つ寝室にさっさと引っ込みたいわ!!妻や子供に会いたいのはお前だけではない!」
日頃の仕事の疲れとストレスで、2人の不満(宰相の方が多め)は止まらない。
「もう嫌だ!セティーに会いたい!セティーに癒されたい!あぁー私の天使!」
「ついに壊れよったか。一番に会いたいのはエレオノーラ夫人ではないのかぁ?なんだ愛する順番が変わったか?ニヤっ)」
「変わってない!エレオノーラへの気持ちは昔のままだ! ただセティーは特別なんだ!ただでさえ女の子なんだぞ!いつかはお嫁に行ってしまうっていうのに、すでに会えない生活なんて……。
やっぱりこんな仕事辞めて領地に籠ろう」
「おいおい、そんなんで本当に嫁に出せるのかぁ?」
「セティーはお嫁になんて行かなくていい!!」
「ハッ!そうだ! ロベルト!!アルベルト様の婚約者にセティーはどうだ!?」
「はぁ?お前いきなりどうした?さっきまで嫁に出すつもりなかったくせに」
「考えたんだ!セティーのお嫁先がここなら、お嫁に行ってもいつでも会える! セティーが結婚後も幸せでいるか、見守る事ができる!そう考えるとアルベルト様は都合がいい!!」
「お前なぁ、未来の国王に向かって都合がいいとは。せめてもっとマシな言い方を……」
(まてよ、今の話でいけば、セレスティーヌ嬢が王宮で暮らすかぎり、こいつは宰相を辞めないんじゃないのか!?なんて都合が良いんだ!)
「たしかに!都合が良いな!ではそうしよう!」
「あっいや待てロベルト。もし、セティーがアルベルト様が嫌いならこの話は無しだ!」
「おい、王子を嫌うような令嬢がいると思うのか?第1、ワシの息子だぞ!?将来美男子なのは間違いなしだぞ!」
「自分でよくいうな!?わからないだろ?」
「いやいや、逆にワシの息子がセレスティーヌ嬢を気に入らないかもしれんぞ?」
「はぁ?セティーを気に入らないとか何様なんだ!?そんな奴は目が腐ってるとしか思えない!」
「いや、何様って、王太子様なんだが。では、こうしよう。息子も今年で5歳になる。5歳になれば、お披露目と称してパーティーを開くだろう。そこで2人を会わせて、セレスティーヌ嬢が婚約に乗り気なら正式に婚約を結ぼうじゃないか」
「わかった。そこではっきりとセティーが嫌がったらこの話は無しだからな」
「なぁに、どうせ上手くいくだろ」
パーティー当日、セレスティーヌがアルベルトに対して興味が無いような態度をとり、他の貴族から婚約候補者にと申し入れの話を出されるとは、思ってもいなかっただろう。
作中に出てくる名前のみ2人
エレオノーラ・マルヴィン:セレスティーヌの母、公爵夫人です。
アイリーン・ヴェスタトール:アルベルトの母、現王妃です。




