-マリア-デート①
マリアside
いよいよデートの日だわ。
今日はちゃんとデートだと意識してるわ。
「さぁお嬢様!お支度の時間です!」
「お願いするわ」
入浴をしマッサージを行い、丹念に肌を磨きあげられる。
髪も丁寧に結われ、コルセットを絞める。
「ちょっと絞めすぎじゃないかしら」
痩せたのにココルセットが今まで通り辛いわ。
「お痩せになられた分、普段より一段階強く絞める事が出来ました」
「だからって絞めすぎじゃない?」
「お身体に障る程は絞めておりませんよ」
痩せた分、コルセットが辛くなくなると思ったのに。
「さぁお嬢様、ドレスを着ましょう」
「本日の為にご用意したドレス、本当に美しいですね」
今日の為にオーダーしたドレスは
緑色のドレスでスカート部分がチュールになっているから、下のシルクが透けて見える。胸元からスカートの裾まで私の好きなキャラクターのエンブレムや装飾品である銀翼の刺繍がされたもの。
前にセティーが使っていたブックカバーに綺麗な模様が刺繍されていたのよ。
好きな作品のロゴ?とか言ってたわ。
とにかくそのエンブレム的な物が入ったのが羨ましかったのよ。
それから真似して私も好きな作品をモチーフにしたハンカチを作ったわ。
今回は思い切ってドレスに好きなキャラクターの要素を詰めたのよ。
ドレスを着た姿を鏡で確認する。
「うん。良かった、思ったより普通のドレスに見えるわ」
知らない人から見ればただのドレス。
誰かに知られるのは恥ずかしい気がするもの。だけど、私の気持ちは上がっていく。
コンコン
「マリア、入るよ」
「ヴィ。ちょうどドレスを着た所だったの。どうかしら?」
「似合ってるよ」
「もう!いつもそれしか言わないんだから!」
「だって本当に似合ってるから。マリアにこれを渡しにきたんだ」
ヴィは私の頭に花をつける。
「今朝ようやく咲いたんだって」
「ありがとう」
昔、ヴィと一緒に植えた花だわ。
懐かしいわね。
2人とも土まみれになって怒られたっけ。
「ヴィも今日はお見合いでしょう?あまり気負いすぎないようにね」
「うん、ありがとう」
ヴィがお見合いするなんて、なんだか複雑な気持ちだわ。
「お嬢様、シャルエラント王子が御到着されました」
「ありがとう。今いくわ」
「シャル様、お待たせ…」
「マリア今日も美しいな。そのドレス似合ってる。まるで森の妖精のようだ」
シャル様の姿に驚いてしまったけど、シャル様の言葉でハッとする。
森の妖精、エルフ。
私の好きなキャラクターはエルフなのよ。
「シャル様も凄く似合っているわ。こちらの装いだからか、新鮮だわ」
「そうか!普段着る事のない服だからな。マリアに似合ってると言ってもらえて嬉しい」
うぅ。
似合ってるどころかすごくカッコいいわ。
お父様と話しているシャル様の後ろ姿をチラリと見る。
普段は下ろしている髪を束ねていて雰囲気が違うわ。
白のスーツに派手なベストを合わせているけど、シャル様に凄く合ってるわ。
緑色のベストに赤のクラバットを緩く結んでいるわ。
私のドレスと同じ色なのは偶然よね。
赤は私の髪の色だけど、きっと偶然よね。
シャル様がお父様と話終わり、私の方へ向きを変えた。
「マリア、行こうか」
「えぇ」
「シャル様。マリアを、妹をよろしくお願いします」
「ヴィ?」
「ああ。もちろんだ」
ヴィったらどうしたのかしら。
あんな真剣な顔をして。
前までシャル様の事を警戒してた癖に。
シャル様のエスコートで馬車に乗る。
後から乗り込んで来たシャル様は向かい側に座ると思っていたけど、私の隣に座って、私の手に自分の手を重ねた。
「あの…」
「嫌か?」
「いっ嫌じゃないわ!そういえば、どうして普段の装いじゃないの?」
「こちらの方が会場に溶け込む事も出来るだろ?それに新鮮だろ?」
「えぇそうね…。カッコ良いと…思うわ」
最後の方小声になっちゃったわ。
「ありがとう。着て来て良かった。マリアと同じ色の物も身につけられたしな」
シャル様がニッコリ笑う。
確かにドレスは緑でスカート部分は下の色のシルクが透けてるから全体的にシャル様とリンクコーデしてるみたい。
シャル様の存在感が服装だけで消せる筈ないと思っていたけど、会場に着いて注目を浴びてるわ。
ザワつくというより、皆驚いて二度見しているわ。
「マリア。あちらにあるのがマリアの好きな作品ではないか?」
「本当だわ!シャル様。私、観に行っても良いかしら?」
「もちろんだとも。だが、行くなら私も一緒だ
」
「シャル様は好きな所を観て来て良いのに。それか、皆さんの様にあちらに居ても良いのよ?」
カップルで来てる方々も多いみたいだけど、男性陣は興味が薄いのか、離れた所でお酒を飲んでいるわ。
「せっかくのデートなんだ、一緒に居たい。それに、俺もマリアが読んでいる作品は好きだからな。まだ読んでいない作品があれば、その魅力を俺に教えてほしい」
「わっわかったわ」
ドキッとしたわー
私の好きな物に興味を示してくれるのは嬉しいわ。
シャル様が本を読む様になったのも、私の為だろうし。
私は本の事は中身は勿論、表紙や挿絵を含めて一つの作品だと思っているけど、シャル様もそれに対して変とは思わなみたいで、シャル様も作品と言ってくれているわ。
「改めて見るが、本当に美しい絵だな」
「えぇ本当に!今にも動き出しそうよね」
「あぁ。白黒だというのに、色がついているのが想像できる」
一通りシャル様と感想を言いながら絵を見たわ。
途中シャル様が読んでいない作品の絵もあったから、紹介もしたわ。
熱が入り過ぎていた気がするけど、シャル様は呆れずに最後まで聞いてくれたわ。
シャル様の優しさが嬉しい。
「シャル様、私ちょっと…」
「あぁ。俺はあちらで待っていよう」
お花を摘みに行くと言う前にシャル様が察してくれたわ。
こういう察しの良さは流石だわ。
マリアを待っている間、離れた場所でお酒を飲んでいた男性達に話しかけられる。
「シャルエラント王子はマリア嬢の付き添いですか?」
「王子も大変ですね。我々も彼女が行きたいと言うものですから一緒に来たのですが、恋愛小説には興味が無くて。興味のない物を見続けて話を聞くのは大変ですよね」
男性達の言葉にシャルエラントは余裕そうに笑う。
「俺がマリアをデートに誘ったのだ、俺は楽しんでいる。それに、愛する人の好きな事を知りたいと思うのは当然だろ。好きな事を語るマリアの目や表情は一際美しいしな」
「そっそうですか」
「流石シャルエラント王子、女性の扱いが上手いですね」
「俺がこの様に思うのはマリアだけだ。他の女の事は知らん」
シャルエラントは冷たい口調で言い放ち、男性達は狼狽える。
「シャル様、お待たせしました」
「然程も待っていない。もう一度見て周るか?」
「出来たらあの絵をもう一度見たいわ」
「良いとも。では我々は失礼する」
「シャル様…ありがとう」
「ん?なんのことだ?」
「…なんでもないわ」
わかってる癖に。
化粧室から戻って来た時にシャル様と男性達の話が聞こえたわ。
シャル様の事だから私が近くに来ているのが見えていた筈よ。
私が好きな絵をもう一度観るのに付き合ってもらって会場を出た。
デートはまだ続きます。
長くなりそうなので、分けました。




