相談
皇女が帰って数日後。
1人で居たら、ヴィクトルに詰め寄られた。
「ねぇセティー!俺があの皇女を避けてる間、シャル様がマリアに変な事してないよね!?」
「えっ変な事は何もしてないわよ」
色々言ったし、抱き寄せたりはしたけど
「マリアが最近、ますますシャル様を意識してるようだけど、それを良い事に、シャル様が暴走しないかが心配だよ」
「でもヴィクトルはマリアとシャル様の事応援するんじゃなかったの?」
「それとこれは別だよ!節度は保ってもらわないと!」
なんか、こんな台詞を前にも聞いた事あるような。
あっお兄様だわ。
兄って大変なのね。
「マリアとシャル様、今度デートするけど、心配?」
「いや、人前に出るデートなら心配ないよ。それに、シャル様、父様にマリアと出掛けるって、わざわざ挨拶に来たしね」
「シャル様が!?」
じゃあエルランジェ侯爵家に正式に求婚の意思を!
「マリアを愛しているけど、正式に求婚したらマリアの気持ちを無視する事になる。だから、マリアが自分の気持ちに応えてくれた時に正式に挨拶に来るってさ」
「ナハラセスの王太子からの求婚じゃあ、エルランジェ侯爵家では断われないもんね」
「うん。権力を使わないあたり、父様はシャル様の事、信用してるみたいだよ」
ヴィクトルは穏やかな表情をしてる。
良かった、前にみたいな迷いは無いみたい。
「あっそうだ、セティーさっきの授業の問題でわからない所があるんだけど、教えてくれない?」
「良いわよ。最近のヴィクトル凄く頑張って勉強してるわね。前は試験前だけだったのに」
「マリアに、俺が1人でエルランジェを継いでも大丈夫だって言えるようにね。いつもマリアに頼ってばかりだったからさ。マリアが安心して、シャル様との未来を選べるように、俺なりに頑張らないとね!」
「ヴィクトル…。私で出来る事ならなんでも言ってね!」
マリアの為に!
ヴィクトル、なんて良い兄なのかしら!
思わずウルッときてしまったわ。
「ありがとう!それじゃあ、勉強以外に、相談にのってほしい事が2つあるんだけど、良いかな?」
「えぇ良いわよ!」
「俺、今度お見合いがあるんだけど、何話したら良いのかな?」
ヴィクトルの言葉に思わずポカーンとしてしまったわ。
「おっお見合い!?いつ!?誰と!?」
「セティー落ち着いて!今度の休みに伯爵家の令嬢3人だよ。1人は騎士団の上官の令嬢なんだ」
「一度に3人!?」
「ちゃんと時間を区切って会う事になってるよ。俺がちゃんと釣書から選ばないからこうなったんだけどね」
「上官の令嬢なら、もし合わないと思っても、断りにくくないかしら?」
「ああ、上官の令嬢は大丈夫だよ。向こうは俺にも、結婚にも興味がないんだ。結婚しない事に焦った上官が会うだけ会ってくれって、言ってるだけだから。問題なのは他の2人だよ。俺が複数の人とお見合いするの向こうも知ってるし」
お兄様もそうだけど、相手は自分以外にもライバルが居るって知ってるから、躍起になるのよね。
「後でお兄様にも相談しましょう。お兄様も複数の人とお見合いしてるし。女性のバトルも目の前で見てるから」
「うん。ジルさん本当に大変だね」
「ヴィクトルだって人気があるじゃない」
「俺の場合は肩書きと騎士団の制服効果だよ。ジルさんはお見合い上手くいきそうなの?」
「それが…中々良いと思える方が居ないみたいなの」
お兄様のお見合いは、まだ続いているのよ。
お見合いを繰り返す度に、ゲンナリしているお兄様を見るのは辛いわ。
ヴィクトルに授業の問題を教え、お昼にお兄様の所へ行き、お兄様にお見合いのアレコレを聞いたわ。
途中お兄様が遠い目をしていたわ。
まさか、他の人とのお見合いの場に乗り込んできた令嬢が居たなんて。
姉妹全員と会わされるとかも嫌すぎるわ。
「はぁ。とにかく頑張るしかないね。俺、化粧や香水の匂いとか苦手だけど耐えないとね」
「それは無理に耐える必要がないと思うよ。素直に苦手だと答えれば良いよ。それで怒るような女性とは夫婦にはなれないだろうね」
「ジルさんも香水苦手だっけ?」
「種類や量にもよるかな。何事も適度が良いよね」
アル様も香水の匂い苦手なのよね。
この国で売られてる香水て匂いの強い物ばかりだから。
化粧品も独特な匂いのある物が多いし。
私はお風呂に香油を入れるくらいだから、キツくないと信じたいわ。
「私、放課後は自習室で勉強するけど、一緒に勉強する?」
「誘ってくれてありがとう。でもごめん、今日はフラン様と鍛錬するんだ」
「フラン様と?」
「うん!フラン様は凄いんだよ!力なら俺の方が上だけど、技術とスピードが段違いなんだ!あのレイピアの捌きと鋭い攻撃!手合わせしたくて、頼み込んだら了承して貰えたんだ!」
確かにフラン様の剣捌きは見事だったわね。
「それは良かったわね」
「うん!それと近衛騎士としての姿勢も見習いたいんだ!」
「ふふ。ヴィクトルにとってフラン様は憧れの先輩なのね」
「憧れかぁ。そうだね、尊敬してる方だよ」
フラン様とヴィクトルの手合わせかぁ。
男装の麗人と美青年の手合わせ。
見てみたい気もするけど、邪魔になっちゃうから我慢だわ。
フラン様が、私の護衛騎士になった後なら、見る機会があるかしら。
それからヴィクトルのもう一つの相談にのって、分かれたわ。
「じゃあね、ヴィクトル。フラン様にもよろしく」
「うん!今日はありがとう!」
「セティー」
「シャル様。どうしたの?」
「セティーに相談があってな。ヴィクトルが見えたが、俺の事何か言ってたか?」
今日は相談事が多いわね。
「特には。ただシャル様が節度を保っているか心配みたいよ。私もそこはお願いしたいわね」
「言われなくともわかっている。マリアは大切な人だ。正式な関係になったとしても、大事にしていきたい」
「それなら良かったわ。それで相談とは?」
シャル様は少し視線を逸らして言いづらそうに話す。
「その、マリアとのデートで着る服装の相談なんだが」
「服装?」
「普段通り自国の服にするか、こちらの服にすべきかと悩んでいてな」
シャル様は制服以外ではナハラセスの服を着てるわ。
制服が似合ってるから、洋装も似合うだろうけど、シャル様らしさを出すならやっぱりナハラセスの服かしら
「前は普段通りの服装だったのだが、こちらの服の方が新鮮だろうし、周囲に溶け込めると思ってたな」
「新鮮さは確かにあるわ。でも、周囲に溶け込む必要はないと思うけど」
「ボックス席で見るオペラとは違い、人前に出るんだ。マリアの為にも目立ち過ぎるのはよくないだろ」
シャル様…。
マリアの事を考えてくれているのね。
でも…。
シャル様はどんな格好でも目立つと思うわ。
「そこまで考えているな、こちらの服が良いと思うわ」
「そうか!それと、マリアは何色のドレスを着るか知っているか?」
マリアのドレスの色は知らないわ。
でも、マリアの好きな作品の中で特に好きなキャラクターのイメージカラーは確か緑。
「ドレスの色は特に言ってなかったけど、多分緑色のドレスだと思うわ。マリアの好きなキャラクターの色だし」
「そうか!ありがとう!出来たら揃いの色を着たかったんだ」
「そうなのね。でも装いの相談なら、アル様の方が良かったんじゃないかしら?」
「セティーと出掛ける前のアルを散々揶揄ったからな。ここぞと言わんばかりにやり返されるにきまっている」
シャル様はバツが悪そうに答えたわ。
アル様。
私とのデートで服装考えたりしてくれてたんだ。
なんだか、嬉しい。
シャル様とマリアのデート上手くいきますように。




