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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
145/235

望まない来訪

「セティーとこうして朝食を取るのも、久しぶりだね」

「お兄様とご一緒出来て嬉しいです!」


お兄様と学園の食堂で朝食を食べている。

私は監督生の仕事が、お兄様は教員と官僚の仕事が忙しくなって、朝食を一緒に食べる事が出来なかったのよ。


「2年生は色々とあったけど、セティーが元気みたいで良かったよ」

「はい。私は元気です!」


クリスティーヌ様の事よね。

あれから、噂とは関わらないようにしていたから、精神が安定していたわ。


「お兄様はどうですか?」

「王宮の仕事も片付いてきて、少しゆとりが出来たよ」

「それは良かったです!」


お兄様の仕事が落ち着いて良かった。


「そうだ。例の第6皇女の来訪が正式に決まったよ」

「そうなのですね!」

「兄様とアル様で王宮と王都を案内するんだ。セティーにも学園では皇女の相手を頼むよ」

「はい!お任せ下さい!」

「ありがとう。皇女は1週間の滞在の予定だから」


第6皇女の来訪!

粗相の無いようにしないと。

国際問題になっちゃうもの。

責任重大だわ。


「セティー。そんなに気負わなくても大丈夫だよ。第6皇女が面倒なら無視していいからね」

「お、お兄様?」

「本来なら、来賓扱いするような相手じゃないからね。他国のシャル様が来賓扱いなら、こちらも来賓扱いをと要求されてね。1週間くらいなら仕方ないと、受け入れる事にしたんだ。シャル様とは立場も国力も違うというのにね」


お兄様はニッコリ笑って話されてるけど、これは怒っているわ。


あの国は海に囲まれた島国。

国土面積はとても小さいわ。

土地や気候に恵まれているわけじゃないから、周辺の国との交易が命綱なはず。

この国も珊瑚やパールを輸入しているけど、こちらでも取れる上に、品質はこちらの方が上。

加工用に安く輸入出来るってだけだから、取り引きが中止になっても困らないのよね。



---------------------------


「アル様。昨日、皇女様にお会いになって、どうだった?」

「はぁ。セティー、出来るだけ第6皇女には関わらない方がいい」

「えっ何かあったの?」

「アルベルト王子様ー!!」


「「!?」」


アル様が私の質問に答える前に、アル様に向かって人が突進してきたわ。


「朝からお会いになれるなんて、やっぱり運命なのね」


もしかして、アル様に擦り寄るこの人が第6皇女!?


「私の愛しい方ー」

「離れ下さい」

「そんな照れなくてもー。ウフ!」


第6皇女は黒髪にのっぺりとした平たい顔で肌の色も黄色人種ぽくて、なんだか昔の日本人みたいで懐かしい感じがするわ。


でも、なんなのこの人!?

アル様に引っ付かないでよ!


「紹介しましょう私の愛する婚約者のセレスティーヌ•マルヴィン。マルヴィン公爵家の令嬢です」

「初めまして」

「まぁ!本当に婚約者が居りましたのね!ふーん。でも可愛さなら負けないわ!」


え?


「こちらと皇女の国では美の価値観が異なるようですね。セティーは私にとって、とても可愛らしい人で、中身も完璧な存在です。」

「まぁそうですの。でも皇女である私の方がこの方をより価値がありますわ」

「セティーは私にとって最も尊い存在。私は心からセティーを愛しています。セティー以外は目に入らない程に」


アル様は私の頬に軽くキスをする。


アル様、来賓の前よ!?


「はぁ。それなら仕方ありませんわ。運命の方だと思いましたのに。残念」


アル様は明らかにホッとして、私の耳元で囁く。


「来訪直後にジルに告白して次は私だ。諦めてくれてホッとした」


お兄様に告白!?

なんて惚れっぽい方なのかしら!


「アル、セティー。そちらが話に出ていた皇女か?」


あっシャル様!

今来たらダメ!


「まぁ!なんて素敵な方!」

「こちらはナハラセス国の王太子であらせられる、シャルエラント王子です」

「まぁ!皇女である私に相応しい方!これは運命ですわ!国で1番可愛い私がシャルエラント様の妃になりますわ!」

「…。(アル!なんだこの女は!?)」


今度はシャル様に惚れたの?


国で1番可愛い…。

うん。

きっと価値観の違いね。


ほら、昔の日本だって下膨れ顔が美人と言われていたし。


「ハハ。冗談がお好きなようだ。俺はこれで失礼する」


シャル様は挨拶をそそくさと済ませ退散する。


「授業が始まりますので、教室にご案内致します。アル様、教員に用がお有りでしょう。皇女様は私にお任せ下さい」

「ああそうだな。では、よろしく頼む」


アル様にくっ付かれるくらいなら私が案内するわ。


それからというもの、第6皇女は大変だったわ。

国では優秀だと言っていたけど、授業に付いていく以前に、習得している学業レベルが低いみたい。

国では皆から褒められて過ごして、それが基準になっていて、当たり前だったのね。

だから自分は容姿も中身も優れていると思っているのね。


こういうのを『井の中の蛙大海を知らず』って言うのね。


時々、私を見下すは発言も、自分の国が、ウチの公爵領よりも狭くて、力も弱いって知らないのね。

それと、皇族だから自分は尊い存在だと思って生きていたのね。

正直、小国の第6皇女より、私の方が地位は高いのだけど。


今日がまだ来訪2日目。

後5日間、相手にするの疲れるかも…。



「シャルエラント様ー」

「はぁ」


ランチは食文化も違うし、部屋を別で用意したのだけど、シャル様目当てにこちらに来てしまったわ。


「えっとマリアさん?シャルエラント様の隣りを私に譲ってちょうだい」

「マリア。その必要はない。俺の隣から離れないでくれ」

「えっと…」


シャル様と皇女の間に挟まれてマリアが困っているわ!


「マリアさん、私は取引相手の皇女なの。外交官の娘なら、父親の迷惑になる事は控えた方が良いでしょう?」

「マリアへの無礼は辞めてもらおうか」

「でも、侯爵位と皇族では格の違いますよ」


皇女の言葉にマリアの表情が消えたわ。


「それなら、父に取引は辞めるよう進言しなければいけませんね。こちらが価値の低い物を買って差し上げているのですから」

「価値が低い!?」

「そちらの国の珊瑚やパールは装飾品には出来ませんので、加工用にする以外使い道はありませんから。少しは自国の立場をお勉強しては如何ですか?我がエルランジェ侯爵家への侮辱は、聞かなかった事にしてさしあげまます」


ああ、マリア怒ってるよね。

ヴィクトルが訓練と称して皇女から逃げてこの場に居なくて良かった。


皇女はヴィクトルにもその惚れっぽさを発揮したわ。

もちろんマリアが前に出て庇っていたけど。

女性を上手くあしらえないヴィクトルは皇女を避けることにしたみたい。

ヴィクトルの件もあって、マリアは皇女の事をよく思ってないのよ。


いや、ウチだってお兄様が私に言われていた事を聞いてたら、『あの国、潰そうか』なんて言い出しかねないけどね。


「シャルエラント様ー。この方が私を虐めてきますぅー」

「気安く触るな」


皇女がシャル様に擦り寄ろうとしたが、シャル様が冷たく言い放つ。


「シャルエラント様たら照れないで下さいな」

「そこの者達、何故こんな者を国の外に出したのだ。こんな迷惑者、自国の為にもならんだろ」


シャル様は、げんなりした顔で皇女の付き人に尋ねる。


「(シャル!仮にも皇族だぞ)」

「アルは優しすぎる。この者の国を尊重した所でメリットなど無かろう。自国の立場も、自身の価値も分からぬ者を相手にするのは疲れる」


「うぅ。シャルエラント様の意地悪。女性には優しいって聞いてたのに」

「俺が優しくしたいと思うのは、マリアただ1人だ」


シャル様はマリアの肩を抱き、自分の方へ引き寄せた。

「シャ、シャル様!?」


「でも私は国で1番可愛いと言われてますの。それに、皆に褒められてましたから、きっとシャルエラント王子も私を気に入ります!それに私は皇女ですし!」

「はぁ。弱小国の、それも6番目の皇女に価値などないだろ」

「えっ…」

「たとえどんなに美しく、地位の高い者であろうと、俺が想いを寄せるのはマリアだけだ」

「だけど、シャルエラント王子は何人も妃が必要なのでしょう?私は2番目、3番目の人が居ても構いません。私は愛嬌なら誰にも負けません!」


「俺が想いを寄せ、生涯共にと願うのはマリアだけだ。それにハレムなら解体している。他の女などいらん!」

「シャル様…」


抱き寄せられてるマリアは顔を赤くしてシャル様を見ているわ。


流石シャル様。

皆んなの前で堂々とマリアへ愛の告白をするなんて。


「マリアに、地位のある女らなら誰でも良いなどと思われては困る。俺はマリアだから、俺の唯一の伴侶にしたいと思い、改革をしたのだからな」


シャル様はマリアの手を握り、マリアに向かって熱い視線を送る。


「そんなぁ!シャルエラント王子まで運命の人じゃないなんてー!」


皇女は泣きながら去っていった。

お付きの人が後を追いかけ、後から来た外交官が必死に弁明する。


第6皇女が生まれる頃には、上の皇女は全員嫁いでいて、周りも国民も第6皇女を可愛いと言って育てたと。第7•第8の双子皇女は勉学優れていて、大国の王子に嫁ぐ事が決まった。他の皇女達が良い相手に嫁いでいるため、自分も大国に嫁げると信じていると。


「それはそちらの国の落ち度だろ。煽て育てばロクな者にならん。現に下の皇女達は優秀なのだろう?」

「第6皇女様の母君は既に亡くなっており、第6皇女はおそらく、国に残る唯一の皇女ですので、国民含め皆で孫や子を愛でるように接していました」


持参金がないのね。

国からの持参金を持って嫁げるのは上の皇女くらいよね。

妃である母親が用意してくれれば、良いけど第6皇女のお母様は亡くなっているし。

お母様を亡くして、可哀想だという思いもあるんだろうけど、少しは現実を見せないと本人が可哀想よ。

自国に残る皇女を猫可愛がりするのを見て、双子皇女は勉学に励んだのね。


「それと、双子皇女もそうですが、上の皇女達も相手に会った瞬間に運命を感じたそうで、直ぐに縁談が纏まったものですから…」


それで自分にも運命の人を信じていると。


いくら経っても自分に縁談が来ないから、それなら自分から運命の人を探しに行こうと、国の外に出ることを決めたのね。

最初の希望は1年だったけど、流石に無理だとして1週間になったと。


「迷惑な話だな」

「シャル」

「現に迷惑している。さっさと皇女を連れて帰った方が良い。この国の王太子とその婚約者、それと侯爵家を軽んじたのだ、国を滅ぼされても致し方ないだろ」


シャル様の言葉に外交官は青ざめる。

確かに国際問題になる事だけど。


「シャル様、実入りのない相手をわざわざ攻めるのは面倒なのでしませんよ。これ以上の迷惑を掛けられれば別ですけど」

「お兄様!?」

「昨日のうちにそちらに抗議文を出しましたので、1週間の期限を待たずに、お帰り下さいね。それと、これが今後の希望輸入数になります」

「今の半数ではありませんか!?これでは困ります!」

「困ると言われても、我が国ではその数でも多いと思います。現に既に輸入した分が余っておりますし」


見せてもらったパールや珊瑚は育ちきっていないのか、形も色も歪で、叩けばすぐに割れてしまったわ。

加工用といっても、パールや珊瑚入りのお化粧品を買うのは貴族だけだから、数が余ってしまっているのよね。


皇女のせいにして、今後の付き合いを細くしていきたいのね。


2日後、皇女は国に帰っていった。

シャルとマリア何か刺激になればと書いたものです。

第6皇女は完全にモブです

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