恋の駆け引き
恋の駆け引き
「ねぇ2人とも、今日のランチは中庭のテラスで取らない?」
「ランチなら温室で良いじゃない?あそこなら他の人は入って来ることはないし」
マリアは中庭のテラスに行こうっていうけど、監督生しか入れない温室の方が気兼ねなく過ごせるわ。
「たったまには、違う場所でも良いんじゃないかしら!」
「そうですね!じゃあ私が男性陣に伝えて来ます!」
「まっ待ってエメリア!今日は私達だけにしない?ランチ女子会なんてどうかしら?」
「良いですね!では、今日のランチはご一緒出来ないと伝えて来ます!セティーさんも良いですか?」
「えぇ私は良いわよ」
「マリア、私達は席を取りに行きましょう」
「そうね」
私達は席を確保し、エメリアの分も食事を運び、エメリアの戻りを待つ。
「ランチを私達だけでって言ったのはシャル様が関係してるのよね?」
「やっぱり、わかっちゃうわよね」
「マリアがシャル様に対して、ちょっとぎこちない感じがあったわ」
私の言葉にマリアの顔が赤くなる。
「シャル様ったら、テーブルの下で足先を当てて来たと思ったら、私の目を見てニコって笑うのよ。隣に座った時は皆んなに見えない様に手を握ってくるし…。意識しない方が無理なのよ!」
「シャル様ったら相変わらず積極的ね」
「教室に居る時はセティー達と座ってるし、何もして来ないけど…」
「他の時間はシャル様からアプローチを受けているのね」
「そうなのよ…」
マリアは顔を赤くしたまま困った顔をする。
「2人ともお待たせしました!皆さん残念がっていましたが、女子会だと言ったら納得されました」
「良かった。エメリアありがとう」
「わざわざ伝えに行ってくれてありがとう。さぁ食べましょう!」
「今日も美味しそうですね!頂きます!」
うん!
今日の日替わりランチセットも美味しいわ!
食事を取りながら、エメリアにもマリアとシャル様の話をしたわ。
「シャル様押せ押せですね!それで、マリアさん的にそのアプローチは不快じゃないんですよね?」
「不快ではないけど…心臓が持たないわ」
「ふふ。マリアさん可愛いです!」
「えっ!?エメリアったら何言ってるのよ!?」
エメリアの言う通り、顔を赤くして、目を潤ませるているマリアは、とんでもなく可愛い。
「あの私、ちょっとリュカに会いに行ってきます」
「うん。私のワガママに付き合ってくれてありがとう」
「いえ、ランチ女子会に恋バナ楽しかったです!」
「セティーもアル様の所へ行く?」
「うん。少しだけ会いにいくわ。マリアはどうする?」
「私は図書室に行こうかしら」
「そう。じゃあここで解散しましょう」
廊下を歩いていると、アル様とシャル様が前から歩いてきたわ。
「セティー」
「アル様!」
「セティー迎えに来たんだ。ランチ女子会は終わったのか?」
「えぇ解散した所よ」
「2人はどうしたんだ?」
「エメリアはリュカに会いに行ったわ。マリアは図書…ハッ」
「そうか!ありがとう!」
シャル様は笑顔で歩いていったわ。
あぁ!マリアの居場所教えちゃった!
えっどうしよう!?
私も図書室に行くべき!?
「セティーどうしたんだ?」
「どうしよう!?マリアの居場所教えてしまったわ!私も図書室に行くべきかしら!?」
「いや、行かない方が良い。大丈夫だ、図書室なら他の生徒も居るだろから、シャルが暴走する事はないだろ」
「そっそうかしら。なら良いんだけど。後でマリアに謝らないと」
マリアside
「お誘い頂きありがとうございます。ですが、申し訳ありませんが、ご一緒出来きません」
「そう…ですか…。わかりました」
お断りするのも疲れるわね。
それに、クラスメイトだし。
気を使うわ。
さて、図書室で何を読もうかしら。
「マリア」
「シャル様!?どうして…」
「セティーが口を滑らせてくれたおかげだ。セティーを責めないでやってくれ」
責めないわよ。
セティーの事だから悪気があるわけじゃないしね。
ただ間の悪い事に他の人が居なくて2人きりだわ。
「さっきの男から何に誘われたんだ?」
「え?」
「図書室前で話していただろう。俺が見かけた時には、マリアが断わっていたが、何かに誘われたのだろう?」
「本の挿絵を描いている画家の展示会に誘われたの。前から気になっていたけど、休暇中に色々あったから、チケットが取れなかったと私が教室で話してたのを聞いていたみたい」
「その画家は、いくつかマリアの好きな本の絵を描いていたな。何故断ったんだ?マリアなら行きたかったのでないのか?」
シャル様はジッと私の目を見る。
だって私は興味あるけど、クラスメイトの男性は普段本を読まないのよ。
せっかく行くなら語らえる人と行きたいわ。
それに、またシャル様とのデートと比べてしまうもの。
「行きたかったけど、本を読まない人と行ってもね」
「そうか、なら俺と行こう」
「え?」
俺と行こうってチケットはもう完売してるのよ?
よれに、前のデートもこんな流れだったような。
「チケットは心配するな。それにその画家は俺の好きな本の絵も描いている。前に貸した英雄記の本だ」
あっあの英雄記!
どの絵も緻密で素晴らしかったわ!
またあの英雄記読み返したくなってきたわ。
「マリア。俺と一緒に行ってくれるか?」
「えっえっと。あの人を断ったのに、申し訳が「本に興味ない奴なんだ、断るのは当然だ!俺ならマリアと絵についても、本の内容についても語らう事が出来る」
「チケットを本当に用意出来るなら…」
「ありがとう。約束だぞ」
シャル様の勢いに負けちゃった…。
これは2回目のデートという事で良いのね?
デートと意識すると、先程からうるさかった心臓の鼓動がさらに早くなるのを感じた。
「私…読みたい本特にないから、行くわね」
「マリア!待ってくれ!」
シャル様には悪いけど、やっぱり2人きりは心臓に悪いわ。
「マリア!くっ!傷が…」
図書室を出ようとした所でシャル様が脇腹辺りを押さえて苦痛の表情をしているのが見えた。
「傷が開いのたの!?直ぐに処置をしないと!」
考えるよりも先に身体が動き、直ぐにシャル様に駆け寄って傷の確認をしようとした。
「捕まえた」
「え?」
シャル様に抱きしめられ、演技だったと気づく。
「シャル様!」
「悪い。だがこうするしか、マリアを引き留められないと思った。俺を意識してくれるのは嬉しいが、避けられるのは辛い」
「…ごめんなさい。でも心臓が持たないんだもの」
そう言うと、シャル様の私を抱きしめる腕の力が強くなった。
「シャル様!傷に障わってしまうわ」
「かまわない。もう少しこうさせてくれ」
無理に解こうとするとシャル様の傷に障るわ。
本人は大した怪我じゃないって言っていたけど、後少し深ければ、命に関わる怪我だったのだから。
それにまだ、完全に回復してないはずなのに。
「シャル様。私、逃げないから離して。あっちで一緒に座りましょう」
私の言葉を聞いてシャル様がゆっくり腕を解く。
それから私達は次の授業まで図書室のソファに座って過ごした。




