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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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再会②

マリアside


「アル様達がまだ掛かるなら、第1庭園へ行かない?今なら許可書がなくても入れるわ」

(一番奥のエリアにマリアの誕生花が咲いているの)

(それは良い事を聞いたな)

「せっかくだ、行くとするか」


セティーの提案で庭園に移動している途中、文官がセティーを呼び止めたわ。


「セレスティーヌ様、宰相様がお呼びです」

「お父様が?2人ともごめん。お父様の所へ行かないといけないみたい」

「気にしないでくれ。大事な話かもしれない、早く行くといい」

「そうよセティー気にしないで」

「2人ともありがとう」


セティーが居なくなって、シャル様と思いがけず2人きりになってしまったわ。


「えっと。2人で行くのもなんだし、部屋に戻りましょうか」

「いや庭園はすぐそこだ。ここまで来たんだ、行くとしよう」

「でっでも…」


「それとも…俺と2人は…嫌か?」

「そっそんな事はないわ。行きましょう」


シャル様その顔はずるいわ。

そんな顔されたら嫌なんて言えないわ。


「マリア、手を」

「はい」

シャル様にエスコートされて庭園へ向かう。


女性をエスコートするのは一般的なマナー。

普通の事よ。

大丈夫、これくらいではドキドキしないわ。


庭園に着い途端、シャル様の手が私の腰に添えられ、腰をグッと引き寄せられた。


さっきまでは普通のエスコートだったのに。

こっこんなに密着するなんて。

振り解くわけにもいかないし。


「ん?どうした?」

「なっなんでもないわ」

「そうか。ならば行こうか」


シャル様はニッコリとした笑顔を浮かべ、庭園内へ足を動かす。


うぅ絶対気づいているわよね。


「ほぅ。この花はこちらでも咲いているのか」

「この辺の花は暑さに強いのよ。逆にあちらに咲いている花はシャル様には珍しいじゃないかしら」

「ああ見た事のない花だ」

「夏の終わり頃に咲く花なのよ。暑さに強くないから、この国以外だと北の地域でしか咲かないの」

「可憐な花だな。それでいて、凛としている」

「そうなの。私はこの花が好きなの」

「そうなのか!この花はどれくらいの気温であれば咲くのだ?」

「今くらいの気温なら咲くことができるはずよ」

「そうか…ナハラセスでも咲かせる事が出来れば良いが…」


私の好きな花を、ナハラセスでも咲かせたいだなんて。

自惚れてしまいそうだわ。


「マリア。この花はマリアの髪の色に似て艶やかだな」

「そっそうね。私の髪と同じで赤いわね」

「ああ綺麗な赤だ。だが、俺が一番美しいと思う赤は、この赤だがな」


シャル様はそう言って私の髪にキスをした。


「シャル様!?」

「マリアの赤が一番好きだ」


カァと顔が熱くなるのを感じ、シャル様の顔が見れなくなり、俯いてしまった。


シャル様!

刺激が強すぎるわ!


「マリア。あちらへ行こう」

シャル様は私の手を取り、庭園を進む。


あぁまだ心臓の鼓動が落ち着いていないのに。


「これがマリアの誕生花か。美しく上品な花だな」

「花言葉は『上品な淑女』『清らかな心』よ」

「見た目も花言葉もマリアに相応しい花だな」

「そっそうかしら。ありがとう」

「美しく、完璧な淑女であるアリアに相応しい」

「私なんてまだまだよ。この花のように立派な淑女にならなきゃ」


その為にはこれからも、もっともっと励まないと。


「マリア」

「なぁに?シャル様…」


シャル様に呼ばれ、返事をし、シャル様の顔を見るために上を向いた瞬間。

シャル様の顔が近付いてきた。

もう少しでシャル様の唇が触れるという所でシャル様の動きが止まった。


「少しこのままで居てくれ」

シャル様が私の耳元でそう囁く。


シャル様!?

どうしてこんな事を!?


「マリア嬢…」

「これは、大使殿。ここで会うとは、奇遇だな」

後ろから声がして、振り向くと前にお付き合いをお断りした大使の方が居たわ。


お会いするのはお断りをして以来で、なんだか気まづいわ。


そう思っているとシャル様が私の前に出て私を後ろに隠してくれた。


「シャルエラント王子、ご無事でなにより。マリア嬢もお久しぶりでございます」

「ご無沙汰しております」


「他の御友人の方々はいらっしゃらないようですね。よろしければご一緒してもよろしいですか?」

「悪いが、遠慮してもらおう。せっかくの2人の時間を邪魔されたくはない」


シャル様!そんな誤解を生むような言い方を!?


「やはり…先ほどのは見間違いでは…なかったのですね」


シャル様で大使の方が見えないけど、力のない声が聞こえた。


「わかってくれたなら助かる。さぁマリア行こうか」

「えっええ」


「シャル様。大使の方大丈夫だったかしら?なんだか声に張りがなかったわ」

「そうか?マリアが気にする事ではないさ」

「それに何か誤解しているように感じたわ。『見間違いではなかった』って何を見たのかしら?」

「さぁな。それより、あちらで少し休もう(あの角度からなら、俺達がキスをしているように見えたはずだ。しっかり振られている癖に、まだ諦めていなかったとはな。まぁこれで諦めがついたはずだな)」


シャル様の提案を受け入れてガゼボで休む事にしたけど、なんだか、はぐらかされた気がするわ。

そういえばさっきのシャル様の行動は一体なんだったのかしら?


「マリア疲れてはいないか?」

「大丈夫よ。これくらいなら良い運動になるわ。シャル様こそ大丈夫かしら?」

「ありがとう。心配するな。一時は床に伏せっていたが、そこまで体力が落ちたわけではない」

「そう。それなら良かったわ」


私は屋敷に篭ってばかりで体力が落ちてしまったから、少し運動して体力を取り戻さないと。


そんな事を考えているとシャル様の手が私の頬を撫でる。


「きちんと食事を取れているのか?」

「だっ大丈夫よ。むしろダイエット出来て良かったわ」

「何を言う。これ以上痩せる必要など何処にある。マリアは俺の大切な人なんだ。マリア本人といえど、蔑ろにする事は許せん」


シャル様の言葉でカァと顔が赤くなるのを感じた。


「マリア。俺の事は友人としか見えないと思う。だが少しでも良いチャンスをくれ」

「えっと」

「我、シャルエラント・ハムダン・ビン・モハメド・ラーシド・ナハラセスは嘘偽りなく、マリア•エルランジェを愛する。其方に求愛を示す許可を」


シャル様が跪き、剣を目の高さに取り、私に求愛の言葉を述べる。

シャル様の国での正式な礼法。

本来なら求婚を求めるものだけど。

さっきまでの、軽く流れるような口説き文句を言われたんじゃない。

今、正式にシャル様に求愛された。


「は…い…」

「ありがとう…。今日はここまでにしよう。帰りの馬車まで送ろう」


シャル様のエスコートの手を取って歩く。

帰り道は会話はなく、先ほどのシャル様の真剣な眼差しが頭から離れなかった。

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