解決
ジャミール伯爵達を捕縛後
私達は事情聴取のため王宮に向かう。
女の子と女性はミラとアンナと一緒に公爵家に向かってもらっているわ。
傭兵の彼が連行されて行った後、女の子が倒れてしまったのよ。
きっと無理をしていてたのね。
ミラとアンナも軽い怪我をしてしまったので、一緒にお医者様に診てもらうわ。
「キャ!」
「おっと!大丈夫か?」
アル様と一緒に馬車に乗り込んだ瞬間、緊張の糸が解けたのか、足の力が抜けてしまった。
アル様が咄嗟に支えてくれて助かったわ。
「ごめんなさい。足の力が抜けちゃって」
「セティーには無理をさせてしまったな」
馬車の椅子に座ったアル様にヒョイっと膝に座らされ、横抱きにされる。
「「っ!?」」
横抱きにされた瞬間アル様の手が私の太腿に直接触れた。
足に付けた短剣を取り出しやすい様にドレスのサイドが開くようなっている。
その為、太腿が丸見えになっていた。
短剣を出した時に開けたままだわ!
緊迫した場面で忘れてたわ!
何時もはドレス越しのアル様の手が直接太腿に触れられてる。
それに太腿見られてしまったわ。
どっどういう反応をしたら。
「ヒャァ」
馬車が発進した振動で変な声出ちゃった。
「すっすまない」
アル様は顔を真っ赤にして太腿に触れていた手を慌てて離す。
「あっ馬車の振動で変な声出ちゃっただけだから…。その、こんな格好でごめんなさい」
「いや、その。セティー私に捕まっててもらえるか?」
アル様はそう言うと自分の上着を脱いで、私の足が見えないように掛けてくれた。
「ありがとう」
「王宮に着いたら直ぐに着替えを用意する」
「えぇ」
王宮に到着してアル様に横抱きにされて移動している。
アル様の上着は私の足に掛けられたままだ。
「アル様。私歩けるわ」
「歩いたらセティーの足が見えてしまうだろ」
「でっでも」
王宮内でアル様にこんな事させるだなんて。
「セティーの足を見て良いのは私だけだ」
そっそんな事言われたら何も言えないわ!
私は赤くなった顔を他の人に見られない様にアル様の胸に顔を当てて隠す。
「セティーの着替えを頼む」
「かしこまりました」
王宮のメイドに着替えのドレスを用意してもらい、着替えを手伝ってもらう。
「このドレスって…」
「アルベルト王太子様がセレスティーヌ様にとご用意した物です」
「よくお似合いですよ」
ブルーグレーのドレスに金の刺繍。
アル様の瞳と髪の色。
髪もと整えられ、金のリボンをつけられ、全身アル様の色を身にまとう。
夜会以外で全身アル様の色を身につけるの初めてかも。
「アル様。お待たせ」
アル様の居る部屋に戻るとアル様は椅子に座り、目にタオルを当て天井を仰いでいた。
わたしの声に気付きタオルを取り、私の方を見る。
私を見たアル様の目は輝いている。
「セティー本当に綺麗だ。そのドレス気に入ってくれたら嬉しい」
「こんなに綺麗なドレスをありがとう。嬉しいわ。でもそれよりアル様、タオルを当ててたけど、大丈夫なの?」
「ああ大丈夫だ。休んでいただけだ(セティーの足を反芻して、火照りを冷ましていたなど言えるはずがない)」
「やっぱり疲れているのね。それなのに私を抱えて歩かせてしまって申し訳ないわ」
「私がしたくてした事だ。気にしないでくれ。それより事情聴取出来そうか?」
「えぇ問題ないわ」
私達は事情聴取を終えた。
傭兵の彼の処遇は、フラン様達を助け、私の命を助けてくれた事で大きく減刑された。
禁固刑で済みそうだわ。
でもそうなると妹さんとは数年は離れ離れになってしまうわ。
「話し合い中失礼するよ」
「叔父上」
「王弟殿下にご挨拶申し上げます」
王弟殿下。
初めてお会いしたわ。
「やぁ。君がマルヴィン家の姫君だね。噂に聞くよりも美しい方だね。アルベルトをよろしく頼むよ」
「勿体なきお言葉でございます」
「叔父上。何かご用意ですか?」
「ああ。傭兵の彼を私が貰うと伝えに来たんだ。彼は私と一緒に連れて行くよ。先程本人とも話した。妹と幼馴染も一緒に離宮で働いてもらうよ。本人達が望めばだけど」
今回の件で血筋の責任を取る形で王弟殿下は離宮に幽閉される事がほぼ決まっているみたい。
本人の希望だと聞いたけど。
「私に付いて来る者は少なくてね。働き手が見つかって良かったよ」
「叔父上。本当にに幽閉の道を選んで良いのですか?」
「もちろんだとも。私は大切な人と一緒に居られれば良いんだ。私は身分を捨てても、働き出る事が来ないからね。幽閉される身となれば婚姻をさせられる事もない。これで望みが叶うよ。アルベルト、私が臣下に降らないままでいたせいで迷惑をかけたね」
王弟殿下は私達に挨拶をして部屋を出て行った。
王弟殿下は昔からお付きのメイドを愛しているらしいわ。
身分を捨ててその人と結婚しても身体が弱くて働く事が出来ないし、身分を持ったままだと、周りに結婚させられてしまう。
王族のまま幽閉される事が一番その人と一緒に居られる方法だと話してくれた。
身分違いの恋かぁ。
物語だと素敵って思うけど、現実は難しいものね。
ジャミール伯爵とその親類は処刑が決まり、水銀とアヘンに関わった貴族達は身分が剥奪され、家長は牢に入れられた。
玉座の間でジャミール伯爵は処刑が言い渡された際、王弟殿下のお母様の無念を晴らす為だと言ったわ。
王弟殿下のお母様はご病気で亡くなられたと記録されているけど、実は高位の身分の者が入る牢に入って居る時に流行り病で亡くなったとその場に居た王弟殿下から明かされた。
牢に入る事になった罪は王妃様に子が流れやすくする薬を盛ったから。
自身の子供である王弟殿下を王太子にしたかったらしいわ。
王弟殿下は国王陛下と仲が良くて、自分の事を道具としか見ていなかった母親の事はなんとも思っていなかったと。
「国王陛下。私に流れている血の半分は罪人の血。罪人である母親は罪を償う事もせず死に、親類も国家反逆などという大罪を犯しました。私に血筋の責任を取らせて頂きたい」
「わかった。お前は国王である私と王太子のためよく働いた。お前の功績を加味し、生涯幽閉とする」
「ありがとうございます」
予定通り王弟殿下の幽閉が決まった。
王弟殿下は国王陛下の味方だったと他の貴族に知らせる事が出来て悪者にならないし、今住んでる離宮に幽閉されるから生活には困らないらしい。
これで事件は解決ね。
シャル様も事後処理を済ませたらこちらに戻ってくるみたいだし。
夏休暇が後少しで終わるわ。




