作戦③
誤字脱字報告ありがとうございます。
誤字だけでなく、間違った文の訂正もありがとうございます。
「誰なの!?」
見覚えのないメイド服を着た謎な人物が馬車の扉の先に立っていた。
外套を着て、フードで顔が見えない。
護衛は!?
馬車の外に視線を動かすと護衛が倒れているのが見えた。
「お嬢様!」
「お下がり下さい!」
メイドが私の前に立ち、暗器を取り出す。
私もドレスの上から短剣に触れる。
護衛の騎士が倒されるなんて。
相当強い敵だわ。
心臓がバクバクしてる。
「まっ待ってください!お願いです!話を聞いて下さい!」
「黙りなさい!お嬢様に手を出したらタダでは済ませないわ!」
「お嬢様!私達が隙を作ります!その隙にお逃げ下さい!」
メイド2人は、謎のメイド服を着た人物目掛けて攻撃しようとする。
「ダメー!お姉ちゃんをころさないでー!」
小さい女の子が掛け寄ってきた。
その子はメイド服を着た人物に抱きついた。
「お願い!お姉ちゃんをころさないで!」
女の子はボロボロの格好でガリガリに痩せている。
「お願いです!どうか話を聞いて頂けませんか!?」
メイド服の人はフードを脱ぎ、顔を出す。
謎のメイド服の人物は優しそうな顔の女性だった。
優しそうに見えるけど、気は抜けないわ。
「下がりなさい。ウチの騎士達に何をしたの?」
「危害は加えてはいません!」
女性と女の子は馬車から離れ、アンナが騎士達の安否を確認する。
その間エルが武器を構えて用心する。
「お嬢様、騎士達は眠っているだけです!怪我は見当たりません!」
「そう。その女性が武器か怪しい物を隠し持っていないか調べて」
「つかったのはこれよ。わたしがつかったの。お姉ちゃんは何もしていないの」
女の子は小さな容器を取り出し、私達に渡す。
これは燃やすと眠りを誘う薬草だわ。
これをあの女の子が持って騎士達に近づいたのね。
痩せ細った小さい子に怪しいと思っても剣を向けることはないものね。
「他に武器の様な物はありませんね」
「エル、武器を下ろして。話を聞くわ」
女性は私に期待するよな目を向ける。
「ありがとうございます!」
「なるほどね」
この女性は少し前までジャミール家でメイドをしていて、小さい女の子とは血の繋ぎりはないく、女の子は幼馴染の妹。
女の子には兄がいて、両親を亡くし、幼い妹の為に傭兵になってお金を稼いでいたけど、最近まともな仕事が無く、質の悪い連中と仕事をするようになった。
幼馴染がメイドをしているジャミール家に雇われて仕事をしている内にジャミール家が危険だとわかって、女性に妹と共に逃げろと言って、帰って来なかったと。
彼の様子から危ない事をしていると察して、数ヵ月前に掃除を命じられたこの城の近くで、怪しまれないようにメイドの姿で様子を伺っていたと。
城から少し離れた所に停車している馬車を見つけて、ばしゃの中に居る人物なら、騎士ではないだろうから話を聞いてもらえると思ったと。
そして、護衛の騎士に阻まれる可能性があるから、小さい女の子で油断させて眠らせたと。
ゔーん。
ウチの騎士達を眠らせてしまったのは悪手だったと思うわ。
下手したら暴行未遂の容疑が掛けられるし。
それに傭兵の彼は反逆罪の片棒を担がされてしまっているし。
「お願いします!私で出来る事ならなんでも致します!」
女性と女の子は地面に手をつき懇願する。
ゔっ
良心が痛むわ。
「彼は反逆罪に関与してしまったわ。それに、ウチの護衛を眠らせて私に許可なく近づいた事、暴行未遂に問われてもおかしくないわ。私に司法を捻じ曲げる権限はないわ」
暴行未遂は私が訴えなきゃ良いかもだけど。
アル様達が既に突入しているから、捕まっているか死んでしまっているかも。
「反…逆…罪。そんな…そんな事に関わるだなんて…」
「わたしの…せいだ。わたしのクスリのために…お兄ちゃんは…」
反逆罪と聞いて2人の顔色は真っ青になって震えている。
女の子は病気らしい。
その病気を治す為にこんな仕事を受けたのね。
「お願い…します。わたしが…かわりに死ぬから…。お兄ちゃんを…助けて。わたし、どうせ…長く…生きれないのに…お兄ちゃん」
ゔぅ。
どうしたら。
見捨てる事も助ける事も出来ない。
その時、辺りが騒がしくなった。
「そこの者達を捕らえよ」
貴族といかにも傭兵達が私達に襲い掛かる。
「平民の女共は殺せ!そこの女は生け捕りにしろ!」
「お嬢様!お逃げ下さい!」
「私達が時間を稼ぎます!!」
私を捕まえて交渉に使う気なのね。
震える足で逃げようとした時、1人の傭兵がエルとアンナの暗器を交わして近づいてくる。
咄嗟に短剣を取り出すけど、間に合わない!
「やめろ!」
目の前にいた傭兵が倒れる。
背中には剣が刺さっている。
「お兄ちゃん!」
「!?お前達なんでここに!?逃げろって言ったじゃないか!」
彼が助けてくれたの?
「お前…この裏切り者が!」
不味いわ。
私を助ける為に剣を投げたから、彼は武器を持ってない!
この剣をって、抜けないわ!!
キーン。
「お前達の相手は俺達だ!」
ヴィクトルとフラン様達が危機一髪の所で現れ、ヴィクトルがあっという間に傭兵2人を斬り、フラン様も華麗な剣捌きでもう1人の傭兵を斬り捨てる。
貴族も捕縛されたわ。
良かった。
「セティー!怪我はない!?」
「私は大丈夫よ。ありがとうヴィクトル」
「隠し通路を見つけて、まさかと思ったけど、間に合って良かったよ」
「お兄ちゃん!」
「お前達…どうして…」
ヴィクトルとフラン様達は傭兵の彼を囲むように立つ。
「待って!彼が助けてくれたの!」
「大丈夫だよセティー。こいつに抵抗の意思がないなら斬りはしないよ」
「お前は、私達の手錠を外してくれた者だな。大人しく捕まれ、悪いようにはしない」
「大人しく捕まる。こんな事、言える立場ではない事はわかっているが、お願いだ!妹達を保護してくれ!」
貴族や傭兵の仲間から狙われるかもしれないものね。
「その願い、私が叶えるわ。2人は私が責任を持って保護するわ」
「ありがとう…」
しばらくしてアル様とお兄様がジャミール伯爵達を捕縛して連行してきたわ。
傭兵の彼はフラン様達を手助けし、私を助けたという事で他の者達とは違う牢に入れられ、取り調べを受ける事になった。




