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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
126/236

パーティー③

ジェラルド視点の話になります。


ジェラルドside


ジェラルドはリーゼに渡されて物を見つめる。

リーゼに渡された物はタブレット状の薬。


「私も同じ物を持っているんだけどね。まさかリーゼがこれを用意しているなんて」


ジェラルドは公爵家跡取り。

父親はこの国の宰相も勤め、ジェラルド自身も王位継承の可能性は限りなく低いが継承権があり、政治的に重要な立場である。

決して弱味を見せるとこは出来ない。

またこういったパーティーでは毒や薬を盛られる可能性が高い。

ジェラルドは公爵家跡取りなので多少の毒なら免疫を付けているが、身体が成熟していない未成年の時は臭いや色などの異変に気づけるようにこの様な場所では水しか飲まなかった。


「今日は何も入れられていないみたいだね」


政治とは無関係なリーゼがパーティーで毒や薬を盛られる可能性を考えるなんて。

それに初めての社交で随分と落ち着いていたな。

私が知り得たい情報や物が手に入るように良いタイミングで話題に出していたし。

貴族派の令嬢であるリーゼから話題に出してくれたお陰で私が探りを入れにきている事が上手く隠せたようだし。


染料にハーブかぁ。

リーゼは水銀やアヘンの捜査をしている事は知らないはずだけど。

偶然…なのだろうか。


ジェラルドは先程のリーゼと貴族の会話を思い出しながら主催者の妻の所へ向かう。


「ジェラルド様、本日はお越し頂きありがとうございます。あら?秘書の方はどちらに?」

「化粧室へ行っています。リーゼが戻りましたら、お暇させていだだこうと思います」

「まぁそれは断念ですわ。まだまだジェラルド様とお話したい方がおられますのに。ですが仕方ありませんわね。ジェラルド様はパーティーを楽しめる状況ではありませんものね。行方不明のシャルエラント王子とは大変親しかったとか。ご心情お察ししますわ」


今日は流石にシャル様の事が一番話題に上がるなぁ。

中には私にざくりを入れてきた者も居たけど、このご婦人はどうかな。


「ありがとうございます。無事に見つかることを祈るばかりです」

「シャルエラント王子の行方を探る手掛かりは何か見つかったのですか?」

「いえ、まだ何も見つかっておりません。ですが、我が国でも捜索隊を結成して捜索にあたっております。何か情報が得られるはずです」


まぁ実際はシャル様を探しているフリをしているだけで、別のことを捜索しているのだけど。


「そうですわね。私もシャルエラント王子の無事を祈っておりますわ。そうですわ!私の息子を紹介させて下さい」

「確か今年お披露目の年でしたね」

「えぇ。甘やかしてしまって、言葉遣いがまだ社交するには問題があるのですが」


こちらのご婦人は社交辞令だけだね。

まぁ貴族派だからといってあの件に関わっているのは極一部だからね。


「ジェラルド様こちらが息子です。ほらご挨拶なさい」

「はじめまして」


ジェラルドは子供と挨拶するためにしゃがみ、握手をする。

その際にもう片方の手にハンカチが巻かれている事に気づいた。


「はじめまして。その手はどうしたの?」

「お姉さんに巻いてもらったの」

「この子ったら中庭の噴水にカフスを落としてしまって。どちらかの御令嬢にお世話になったようで」

「怪我しちゃったんだね」

「うん、でももう痛くないよ」


ハンカチの下は既に適切な処置がされていた。


「もう怪我の処置は済んだというのにそのハンカチを巻いていたいと聞かなくて」

「だってお姉さんが巻いてくれたんだもん」

「はぁ。このハンカチ気に入っているのは良いのですが、この子ったら御令嬢の名前を聞き忘れてしまって。お礼が出来ずに困っているのです」

「どんな方だった中覚えてないかな?」

「黒い髪の綺麗なお姉さんだったよ」

「はぁ。黒髪の御令嬢は複数いるというのに。せめて瞳の色がわかれば良いのですが」

「だってお日様でお姉さんの目の色、よく見えなかったんだもん」


確かに黒い髪の令嬢は多いからね。


「そのハンカチを見せてくれないかな」


ジェラルドがハンカチを見せるよう少年に言うと少年は母親の方を見て、母親は頷く。


「うーんお兄さんにだけ特別だよ」

「ありがとう」


ジェラルドは少年の手からハンカチを解き、ハンカチを広げる。

ハンカチに施された刺繍を見てジェラルドは一瞬目を見張る。


「素晴らしい刺繍なのですが、家紋ではないので御令嬢に繋がる手掛かりにはならなくて」

「そうですね。私もこの刺繍には心当たりはありません。ありがとう。また手に巻いてあげるね」

「うん!またお姉さんに会えるかな?」

「君が今後もパーティーに参加すればきっと会えるよ」

「ほんと!?」

「そうですわね。敬語でお話出来る様になれば次のパーティーにも参加していいわ」

「本当!?お母様、僕頑張るね」


緑の薔薇の刺繍。

リーゼが持っていた刺繍と全く同じだった。

緑の薔薇の周りの装飾まで全く同じ刺繍。

何故リーゼと同じ刺繍がここに。

薔薇の刺繍の他に周りの装飾まで全く同じなんてありはしない。

それにあの刺繍やっぱり何処かで見たことがある。

いったいどこで…。


「ジェラルド様お待たせしました」

ジェラルドが考え込んでいるとリーゼが化粧室より戻ってきた。


「ドレスは大丈夫だったかい?」

「大丈夫です。元々あまり汚れておりませんので」

「それなら良かった。ではそろそろ帰ろうか」

「はい」


「では私達はこれで失礼します」

「是非また我が家のパーティーにお越し下さい」


ジェラルド達が挨拶して帰ろうとする。

その間少年がリーゼの事をじーっと見つめている。


「……(子供は鋭いと言いますが、気づかれてませんわよね!?)」

「リーゼがどうかしたかい?」

「!?(ジェラルド様!気にしないで下さいませ!)」

「うーん、ハンカチのお姉さんに似てるなーって思って。でもメガネとドレスの色も違うから違うかな」

「ドレスの色を覚えていたんだね」

「でもこの子は色味表を見せても色を答えられなくて」

「えっとね。お兄さんの目の色に似てたよ!」

「私の瞳の色なら翡翠色かな。一言に色と言っても千差万別だから。原色以外の判断は難しかったようだね。それでは我々はこれで失礼します」


ジェラルドはリーゼをエスコートしながら門の方へ移動する。


翡翠色のドレスに黒髪か。

そういえばエリザベート嬢はあのドレスを着て下さっただろうか。

きっとお似合いだろうな。


ジェラルドは先日贈ったドレスを着ているエリザベートを想像する。


この少年にハンカチを渡したのがエリザベート嬢なら辻褄を合わせることは出来る。

リーゼはミッドランド公爵家の一門だからエリザベート嬢と接点があるようだから、同じ刺繍のハンカチを持っていることの理由は思いつく。


ミッドランド公爵家か。

爵位的に貴族派の筆頭と言っても良い家だけど、何処か他の貴族派の家と線引きをしているような。

アルベール侯爵家が抜けた穴埋めをするのかと考えていたけど、そうではないようだし。

アヘンや水銀の件もミッドランド公爵が気づいていないはずがないけど、このまま傍観しているというなら有難いのだけど。


「リーゼ今日は本当にありがとう。ミッドランド公爵家まで送っていくよ」

「ジェラルド様お気遣いなく。それに今日は社員寮の方へ帰りますので」

「でもそれをエリザベート嬢に渡しに行くでしょう?」

「えっあ!(白粉とお香!そうでしたわ!)」

「どうせだから一緒に行こうか。エリザベート嬢や公爵にも色々話さなければいけないことがあるし、アポを取っていないからリーゼに橋渡しを頼みたいんだ。公爵家とは繋がりが強いようだしお願い出来るかな?」

「私にそのような役目は…(まっまずいですわ)」


「リーゼ」

「えっマティアス…様?」

「姉様がリーゼに用があるみたいだから僕が迎えにきたんだ。初めましてマティアス•ミッドランドと申します。先日は姉がお世話になったようで」

「あぁ君がエリザベート嬢の義弟か。初めまして」

「姉や義父にご用のようですね。僕から義父に伝えますので日を改めて頂きますか?」


マティアスはジェラルドへ一瞬鋭い視線を送る。


「…。ではマティアス殿に頼むとしよう。じゃあリーゼ今日は本当にありがとう」

「私の方こそありがとうございました。ジェラルド様失礼します」


リーゼはマティアスと共に馬車に乗り込みその場を後にする。


「あれがミッドランド公爵家の跡取り候補か。良い目をしているね」


マルヴィン公爵家に戻ったジェラルドは公爵家の影を呼ぶ。


「お呼びですか」

「あぁミレット子爵令嬢について調査をしてほしい。時間が掛かっても構わない」

「かしこまりました」


ミレット子爵領は自領で作られた作物のほとんどは自領で消費され、他の領地との交流も盛んではないから他所者が居れば目立つ。

調査には時間が掛かるだろうな。


リーゼ自身怪しい行動は何一つない。

だけど、田舎の社交経験の無い子爵令嬢にしては知識や立ち回りが完璧過ぎて違和感を感じる。


「はぁ。優秀な秘書を失いたくないのだけど、リーゼが諜報員なのかは確かめないとね」


それにあのハンカチの刺繍。


ジェラルドは刺繍の模様を思い出しながら、紙に模様を描く。


「これを何処で見たのか思い出さないといけないね」

とりあえずパーティーの話はこれで終わりです。


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