避暑地
明けましておめでとうございます。
年明けから5日も過ぎてしましたが、今年もよろしくお願い致します。
お風呂に案内された私は丁寧に服を脱がされる。
「流石はセレスティーヌ様。なんて美しい」
「腕がなります」
うぅ、貴族令嬢として16年間生きてきたから、人にやってもらうのが当たり前なのはわかってるし、慣れたつもりよ。
だけど、会ったばかりの人に裸を見られて洗われるの恥ずかしい。
「あっこの香り」
私の好きな金木犀の香り。
金木犀が取れる時期ではないから、貴重な香油なのだけど、私がこの香りが好きだから疲れてる時やリラックスしたい時に入れてくれるのよ。
きっとカミラ達が荷物の中に入れてくれたのね。
「公爵家のメイドより頂いた資料に書いてありましたので、本日はこちらの香油を使用したのですが、お気に召したようでよかったです」
「こちらこそ、気を使って頂いてありがとうございます」
「私達に敬語は不要です。どうぞ普段お付きのメイドと同じ様に接していて頂けますでしょうか」
「わかったわ。では改めてありがとう」
「はい。ではお身体が温まりましたら、あちらでマッサージをさせて頂きますね」
「え?」
わざわざマッサージ台で!?
夜会とかないけど!?
「マッサージの腕でしたら公爵家のメイドに負けはしません!王太子殿下と初めて夜の時間を過ごされるのですもの。全身磨き上げてみせます!」
「初めての夜って…。確かに夜に会うのはほぼ初めてたけど、お兄様も一緒に遊ぶだけよ?」
「何を仰いますか。湯上がりのお姿をお見せするのですよ!昼間や夜会の様に着飾れなくとも必ずセレスティーヌ様の魅力を最大限に引き出し輝かせてみせます!」
メイドさん達の目から火が出そうな勢いだわ。
こういう時は大人しく任せている方がいいのよね。
こうして私は頭からつま先までたっぷり時間を掛けたマッサージを大人しく受ける。
ラベンダー色のルームドレスを着せられ、髪は一つにふんわりと編み込まれ、数本の細かい三つ編みが纏められた髪に飾りの様に結われる。
顔は白粉を叩かれ、唇に薄らと口辺を付けられ、仕上げにと端に花の飾りがついたカチューシャを装着し完成。
メイドさん達はやりきったという表情を浮かべている。
「この髪型可愛いわ。ありがとう」
「いえ、この装いは全て公爵家のメイドの案ですので」
「えっそうなの?」
「はい、頂いた資料に図案がありまして。私共もセレスティーヌ様の装いの案はあったのですが、王太子殿下との初めての思い出に相応しいのはこちらの装いだと思いました」
見せてもらった資料には数種類の髪型の図案や組み合わせるドレスや靴のメモがあった。
私以上にこの旅行に力を入れてくれていたのね。
連れて来なかったこと、なんだか申し訳ないわね。
でもせっかく考えてくれたメイド達にも感謝ね。
「明日は皆さんが考えてくれた装いでお願いしますね。楽しみにしてます」
「「「「セレスティーヌ様…」」」」
メイドさん達は感動した様でウルウルした目をしてる。
そんな喜ぶことかな?
なんか居た堪れない。
「あっ早くアル様達の所に行かなくちゃね。お待たせしてるし」
「ではご案内致します」
「アル様、お兄様、お待たせしました」
「全然まってないよ」
「王宮のメイドで問題なかったか?(湯上がりのセティー!可愛い!)」
「大丈夫よ。だいぶ気を遣ってもらっちゃったわ」
「それなら良かった」
「そのルームドレス似合ってるよ」
「セティー、凄く綺麗だ」
「アル様、お兄様、ありがとうございます」
アル様のお風呂上がり
前にシャワー後の姿を見たことはあるけど、制服姿だったし。
セットされてない髪は可愛いし、ラフな姿に色気が。
ドキドキが止まらないわ。
「そろそろ私は部屋に帰ろうかな」
カードゲームとビリヤードをして一区切りついた時にお兄様が椅子から立ち上がる。
お目付け役のお兄様が部屋に帰るなら私もよね。
「それなら私も帰ろうかしら」
「セティーはもう少し居ても大丈夫だよ。アル様、くれぐれも節度を保って下さいね」
「わかっている」
お兄様が出て行かれてアル様と2人きり。
えっと2人でカードはつまらないし、何をしようかしら。
「セティー、遅くならないうちに部屋へ送るから、少しだけ時間をくれないか?」
「ええ大丈夫よ」
「良かった。一緒に星を見たかったんだ」
アル様にそう言われ、ふわりとストールを掛けられバルコニーへ案内される。
「わぁ!」
一面に広がる星空を見て思わず声がでる。
前世に比べてこちらの世界は星が見やすくて綺麗だけど、これは転生後一番と言っても、過言では無いほどの星空だわ。
星の輝きが普段より強く感じる。
そして月も近くに感じる。
「ここは星がよく見えるんだ」
「凄く綺麗。今まで見てきた星空で一番綺麗だわ」
「ああ。私もここの星空は気に入っている」
星と月の輝きを受け、アル様が光って見える。
星空に向かって微笑むアル様は綺麗過ぎて人ではなくて天使の様。
尊いわぁ。
「ん?どうしたんだ?」
「あっえっとその、アル様が綺麗過ぎて天使様みたいだから…見惚れてたの」
「ありがとう。でも、私にしてみればセティーの方が綺麗だ。星と月の光を受け、セティーの白銀の髪もアメジストの瞳も輝いて、まるで光の妖精の様だ」
「そんな。褒めすぎよ」
「いや、そんな事はない。初めて会った時は花の妖精の様に見えていた。私の目にはセティーは常に美しく見えている。セティーは外見だけでなく、内面も優しく美しい。美しい妖精が人の姿を借りているようだ」
アル様の甘い言葉に顔が赤くなるのを感じる。
初めて会った時って5歳のお披露目の時よね。
あの頃からアル様に好かれていたなんて嬉しい。
「初めて会った時からずっと、私の方を向いてほしくて仕方なかった。今こうしている事が嬉しくて仕方ない」
「私だって初めて会った時からアル様の事が好きだったわ。だから、アル様の近くに居られる様に努力したわ」
私の言葉にアル様は一瞬ポカンとした表情をしたけど、すぐに目を輝かせる。
「セティー、本当なのか。あの頃から私を好いてくれていたと?初めて会った時、素っ気なくて私の事は眼中にないのかと」
「あの頃は、私の事をお兄様やお父様から聞いて会う前から良い印象はなかったでしょう?だから余計な印象を持たれそうで怖かったの。他の令嬢達の様に振る舞ってアル様に嫌われる事が一番怖かったの」
「確かに会う前はセティーに対して良い印象はなかった。きっと我が儘な令嬢だろうと決めつけていた。しかし、実際にセティーに会って抱いていた印象は間違いだったとすぐに気づいた。私からすぐに離れ、花に向かって微笑んでいるセティー見て心を射抜かれた」
やっぱり良い印象持たれてなかったんだ。
でもあの時素っ気なくしたから、私を意識してくれたのね。
「やっぱりあの時は、ああして良かったわ。だってアル様は私に興味を持ってくれて、私を好きになってくれたんだもの」
「セティー…。しかし、私達は本当に遠回りしたんだな」
「アル様、遠回りだったかもしれないけど、今までの事は大切な思い出よ。それに、アル様の近くに居れる様に。好きになってもらえるようにって思ったから私は努力出来たの。アル様を好きな気持ちがあったから頑張れたのよ。今なら胸を張って私こそがアルベルト王太子の婚約者だと名乗れるわ」
言い終わるとグイッとアル様に引き寄せられ強く抱きしめられる。
「セティー私を好きになってくれて、ありがとう」
「アル様、私を好きになってくれてありがとう。アル様を好きなれて私は幸せだわ」
自然と顔が近づき、目を閉じる。
星と月に照らされながら私はキスをした。
今年中にこの小説を完結させるのが目標です。




