結婚観
メリークリスマス
アル様との話が終わり、お兄様に報告しに行く。
「話しを聞いたんだね」
「はい、お兄様もありがとうございました。私の為に色々と動いてくれていたんですね」
「愛する妹のことなのだから当然だよ。それより、事件の事思い出してほしくないからと、セティーを捜査に関わらせずにいてごめんね」
お兄様は私の頭を撫でながら謝る。
「ジルはよくクリスティーヌ嬢に対し普通に接していられるな。捜査中のジルの怒りは相当なものだったが」
「アル様よりも5年長く仮面被っているので。慣れですね。もちろん、タダではおかないと常々思っていますが」
輝かしい笑顔と優しい声色のまま、怖い事をさらりと言うお兄様。
「ジルは流石だな」
「アル様は王太子の仮面以外にもう2、3枚仮面を作っておいて下さいね」
「ああ、努力する」
「あの、お兄様クリスティーヌ様の処遇の事でご相談が」
「ああやっぱり刑が軽過ぎたよね。もっと相応しい刑罰を…」
「お兄様、そうではなくて」
「セティーはクリスティーヌ嬢が更生出来れば、領地幽閉を見直してはどうかと言ってるんだ」
「セティー…はぁ、セティーならそう言うかもしれないとは思っていたけど」
「お兄様お願いします」
私は何故クリスティーヌ様にチャンスを与えたいのか、アル様に話した様に真剣に話す。
「それがセティーの願いなら仕方ないね」
「お兄様!」
お兄様はため息をつきながら仕方ないという表情をする。
「アル様この件は私が全権を預かっています。アルベール家と話すなら私が主導権を握ります。セティー、チャンスを与えるのは良いけど、兄様は本当はクリスティーヌ嬢に服毒を望んでいたんだよ」
「服毒…」
「当然だよ。セティーを害そうとしたんだから、楽には死なせない。まして、安楽な余生なんか送らせはしないよ」
お兄様はずっと笑顔で話すけど、言葉の端々に冷たい殺意を感じる。
これが次期公爵のお兄様の一面なのね。
「兄様がこの件に対してそれほどの感情を抱いているという事は覚えておいてね」
スッと殺意が消えた。
お兄様は私の頭を何時もの様に撫でる。
「さて、幾つか通したい予算案がありましたよね」
アルベール侯爵様は財務大臣だったわね。
お兄様話し合いに乗じて予算案を通そうなんて流石だわ。
「流石ジル、頼りになる。ついでに私達の結婚式の予算増額も捻じ込んでくれると嬉しい」
「アル様、それは流石に無茶よ」
ただでさえ王太子の結婚式なんて、国で一番豪華なのよ。
それを増額だなんて。
「一生に一度なのだから、世界一の結婚式にしたいんだ」
「アル様…。私はアル様とならどんな式でも嬉しいわ」
「っ!セティー!」
「まぁあくまで予算だし、多めに要求しておこうね。アル様との結婚式の前にウチでパーティーを開くし、たくさんドレスを作らないとね」
「まだ早くないですか?あと一年以上ありますよ」
「セティー、私達の結婚式の準備に一年は必要なんだ。今から作り始めても良いくらいだ」
「わかったわ。どんなドレスが良いか考え始めるわ」
「後一年半くらいかぁ」
「お兄様?」
「いや、セティーとアル様が恋人になって、本当にセティーが嫁ぐんだと思っていたけど、結婚式の話をすると現実味が増すなと思ってね。いつまでも妹離れをしないままではいけないね」
お兄様は寂しそうな表情をした後、困った様に笑う。
「お兄様!私だってお兄様にいつでも会えなくなるのは寂しいです」
「うん、兄様も寂しいと思うから、定期的にセティーに面会を申し込むからね」
私が王太子妃になったら立場上お兄様が臣下になるから、正式に面会を申し込まないといけなくなるのね。
人前でお兄様に様付けで呼ばれ、他人行儀にされるのを想像すると、けっこう辛い。
「お兄様、結婚しても2人の時は私の事を愛称で呼んで下さいね。私もお兄様と呼んでも良いですか?」
「もちろんだよ。セティーが嫁いで辛くない様に障害になりそう者は兄様が排除するからね」
兄離れなんて一生無理かも。
レオ君にも会えなくなるの寂しいわ。
「2人とも私の事を忘れていないか?」
私とお兄様が抱きしめ合っているとアル様がジトーとした目で私達を見ている。
「アル様だって兄になったんですから、私の気持ちがいつかわかりますよ」
「いや、流石に2人の様にはならないだろ。そもそもアナスタシアとはあまり会わないからな」
「えっそうなの!?」
「私も学園で生活しているし、そもそも私とアナスタシアでは暮らしてる宮殿が違うからな。私から会いに行かないと会う事はないな。王宮に居ても仕事が忙しくて会いに行く暇がないのだ。まぁ、王族の兄妹なんてこんなものだろう」
確かに王族は同じお城でもそれぞれ暮らす宮殿が違うけど。
「それは、なんだか寂しい気がするわ。陛下もアナスタシア様にはあまり会えて居ないのかしら?」
「父上は毎日顔を見ている筈だ。父上は王妃宮に住んでると言っても過言ではないほど、王妃宮に滞在しているからな」
「あっそうなんだ。流石陛下だわ」
「そのうち母上とアナスタシアを本城に住まわせるつもりらしい」
「それじゃあ親子みんなで本城で暮らせるのね!」
「なんだかセティーの方が嬉しそうだな」
「だって家族は一緒に暮らした方が幸せだもの」
「私に兄弟が居ない事とあの父上と母上だから可能な話ではあるな」
「私達の時もお2人のように家族で暮らせたら良いわね」
「ああ、そうだな。結婚後の事はゆっくり話し合っていこう」
結婚したら私は王子妃宮が与えられる予定で、そこに住むからアル様とはある意味別居なのよね。昼間はお互い仕事があるから、会えるのは夜ぐらいだけど、アル様が私の所に来てくれないと会えないのよね。
しきたりだし、王族には王位継承の争いがつきものだから仕方ないけど。
陛下と王妃様で風潮が変わればいいな。
「さてと、話はこれくらいにして食事にしようか」
「そうね。すっかりこんな時間になってしまったわ」
移動と話し合いですっかり夕食の時間になっていた。
夕食の後、それぞれお風呂に入り、部屋に集まることになった。
「「「「セレスティーヌ様、よろしくお願い致します」」」」
王宮のメイドさん達が私に深々と頭を下げ、お風呂に案内する。
えっとなんだか目がギラギラしてるんだけど、私どうなるの……




