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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
118/235

すれ違い②


『知る必要のない事だ』


はあ。

アル様の言葉と表情を思いだす。

今までも王太子の婚約者といえど、知る事が出来ないことはあったわ。

でもそんな時は政治や仕事の関係で教えられないと優しく言ってくれていたのに。

はぁ、王太子の仮面を貼り付けたあの表情。

公的な場以外であの表現を向けられるなんて初めてかも。

思わず私も王妃教育で学んだ笑顔でその場を取り繕ってしまったわ。

はぁ明日から大丈夫かな。


「お嬢様、どうなされたのですか?」

「えっなっなんでもないわよ」

「ですが、3回もため息を吐かれていますよ?やっぱり、私だけでもご旅行に付いていきましょうか?」

「大丈夫よ。カミラも明日はデートの予定なのでしょう?エルもアンナも里帰りしているし、カミラも休日を楽しんで」

「お嬢様…ですが、気掛かりなことがあるんじゃないですか?」

「大丈夫よ。王宮のメイドさん達と仲良くなれるか心配なだけよ」

「お嬢様なら大丈夫ですよ!お嬢様のような優しくて可愛らしい方のお世話が出来るなんて幸せな事です!本当でしたら私達がお嬢様のお世話をするはずでしたのに、悔しいです」

「そっそう…」

「王太子様との初めてのご旅行!全身磨き上げて飾り立てる栄誉を得るのは私達でしたのに!」


うん、ウチのメイドは本当に元気なワーカーホリックだわ。

最初は3人共付いてくる気だったのだけど、王妃様の計らいで王宮のメイドさんにお世話になると伝えると3人とも泣きそうな表情になったのよね。

そんなにこの仕事が楽しいのかしら。


カミラの手には麻紐を通して纏められた紙の束がある。

付いて行けないなら、せめてこれだけはと懇願されたのよ。

私の取扱書を作成して王宮のメイドに渡すことになったの。


私の取扱書…ちょっと気になる。

カミラ達がこんなにも気に掛けてくれてるんだもの、ちゃんと旅行を楽しまないとね。




------------------

「2人ともおはよう」

「「アル様、おはようございます」」


王宮の馬車が到着し、お兄様のエスコートでアル様が乗っている馬車に乗り込む。

使用人達が私達の荷物を後方の馬車に積み込んでいる。

カミラが王宮のメイド長に取扱書を渡しているのが見えた。


「アル様、お世話になるメイド達に挨拶をしたいのだけど」

「今は皆忙しい。挨拶なら着いてからで良い」

「そっそうね。そうするわ」


なんか、気まずい。


「2人とも何かあった?」

「なんでもないわお兄様」

「ああ、何もないぞ」

「そう…。セティー、兄様と後ろの馬車に乗せてもらおうか」

「「え?」」

お兄様は私を抱えて馬車を降りる。

「ジル!?」

「喧嘩した様には見えないけど、気まずそうだから。着いたらゆっくり話すといいよ」



「さぁ何があったのか兄様に話して」

「お兄様…大した事じゃないんですよ。決して喧嘩とかじゃなくて…」


私はお兄様にアル様とあった事を話した。

お兄様は私を自分の胸に引き寄せ、頭を撫でる。

「クリスティーヌ嬢か…」

お兄様の囁く様な声が聞こえた。

胸に引き寄せられてるのでお兄様のお顔が見えない。

「お兄様は何かご存知なのですか?」

「これでも公爵家嫡男だからね。ただ、兄様もアル様もセティーの事を思ってのことだよ。セティーを守る為に敢えて教えていなかったのだけど」

「私の事を守る…」


知らない方が幸せな事だと言うのはわかるわ。

だけど。


「何時も皆に助けられ、守って頂けていると思っています。ですが、守られてばかりではいられません。私は、次期王太子妃になるんですもの!」

「そっか、わかったよ。セティーも強くなったね。兄様が教えてもいいけど、アル様の口から聞きたいだろうから、もう一度アル様に聞いてごらん」

「ありがとうございますお兄様」



避暑地に着いて、お城の管理者やメイド達には軽く挨拶を済ませ、荷解き任せてアル様の元に向かう。

アル様とお兄様が一緒に居るのを見つける。

私に気づいたお兄様はアル様の肩を軽く叩き私に手を振り離れる。


お兄様、2人きりにしてくれるのね。

ちゃんとアル様と話さなきゃ。

「アル様…」

「セティー!話がしたい!頼む!」

「良かった。私も話がしたいと思っていたの」


私は誰も居ない部屋に案内された。

「セティーすまなかった。突き放す様な言い方と態度だった。だが、決してセティーを傷つけるつもりではない」

「わかっているわ。お兄様に聞いたの。私を守るために知らせなかったのでしょう?」

「ああ」

「アル様、いつも守ってくれてありがとう。でも私も強くならなきゃ。だってわたしはアル様の隣に並ぶ者に。アル様の妃になるんだから」


アル様は目を見張り、決心した表情をし、私の手を握る。



「セティーが誘拐された昨年の事件。あの誘拐犯を雇ったのがクリスティーヌ嬢だったんだ」

「えっ!?」


ドクン!と胸が跳ねる。

誘拐された時の事を思い出すと今でも怖い。


「セティーには、事件のことを思い出してほしくなったんだ」

「あっ…だから…。でも、本当にクリスティーヌ様が?私に嫌がらせはしても、私を殺そうとなんて、出来るような人じゃないわ」


嫌味を言われる事は多いけど、内容は大した事ではないし。

周りを使って上手く立ち回るような人でもないし。

ゲームのセレスティーヌの様な役回りみたい。

なんて思ってけど、まさかそんな。


「当初はマルヴィン公爵家に恨みがある者を探っていたんだ。誘拐犯の証言では、雇われた時は庶民街の酒場に連れ去りセティーを脅すように言われたと。捕まっても大した罪には問われない上に報酬が破格の金額だったと。連れ込みとはいうが、言葉を変えただけで誘拐と変わりないないが」

「それじゃあ、なぜ私を殺そうと?確かに他人が居る酒場に誘拐されたくらいじゃせいぜい拘置所に入るくらいよね」

「酒場といってもゴロツキが溜まり場にしているような場所だがな。依頼人が去った後、再び現れこう言ったそうだ。『捕まっても大した罪にはならないと思っているでしょうが、相手は貴族。それ相応の事は覚悟してもらわなければ困りますわ。報酬はそれ込みの額なのですから。もちろん追加報酬も払いますわ』と」


依頼の内容が変更されたのね。

遠回しの言い方だけど、処理しないと後で痛い目を見るぞって言っているわ。


「報酬額は殺しの依頼と思えるほどの金額だったそうだ。そしてセティーが街で買い物をするという情報が入り慌てて決行したそうだ。一緒に私達が居るとは知らず、私達に現場を見られ、セティーを殺し依頼達成させ逃げるつもりだったようだ」

「その割にはすぐに殺されなかったのが幸いだったのかしら」

「幸いなものか!セティーの貞操が危険に晒されたんだ!」


アル様は私を強く抱きしめる。

確かに襲われてたらと思うと恐怖が身体中を巡る。

でも私を強く抱きしめ続けるアル様を安心させなくちゃ。


「アル様、助けに来てくれて本当にありがとう。アル様とこうしていられるのも、あの時助けに来てくれたからだわ」

「当たり前だ。あの事件の後、私はセティーを守れるように強くなると誓った。もう二度とあの様な思いはさせない」


少しずつアル様の力が緩んでいく。


「それで犯人がクリスティーヌ様だと判明した理由は何?」

「ああ、犯人の証言からマルヴィン公爵家ではなくらセティーに恨みのある人物、それも学園に関係していることがわかった」

「なんで学園が…」

「買い物の話しは学園内でしかしてないからな。依頼が行われた酒場の一室を隈なく調べ誘拐犯と酒場の従業員以外の指紋があった。その指紋の調査をして浮かび上がったのがクリスティーヌ嬢だ」

「指紋…」


この世界に指紋鑑定なんてあったんだ…。


「指紋の鑑定には正確な指紋の採取が必要だ。セティーは私の婚約者という立場上、疎ましく思う者も多いだろう。学園関係者に絞っても相当な数だ。その上鑑定には時間が掛かる。そしてこの事件は秘密裏に動いているため公に捜査出来なかったため、ここまで時間が掛かってしまった」


秘密裏に捜査してたのは私の立場を守る為よね。


「それとセティーの物を盗むストーカーが居たがその犯人もクリスティーヌ嬢だ。ストーカー騒動からしばらくしてセティーの物を捨てる所を公爵家の影が発見した。その捨てた物から採取された指紋が誘拐事件の指紋に一致し、クリスティーヌ嬢を容疑者として調査を行ったんだ」

「あれもクリスティーヌ様だったの?じゃあもしかしてお花も?」

「ああそうだ。不吉な花言葉を使ったおまじない適度の嫌がらせだかな。容疑者に上がったが相手は侯爵令嬢だ。慎重に動き、証拠や証言を集め父親であるガジミール殿に罪状を突き付けた。本当ならクリスティーヌ嬢を法廷で裁きたかった。だが、この事件は表沙汰にする事は出来ない。そして、相手が高位貴族の令嬢という身分と被害者であるセティーが当時は正式な婚約者ではなく、候補者という事で重罪に問う事が出来なかった。そこで取り引きが行われ、貴族派であるアルベール侯爵家が派閥替えをする事になった」

「アルベール侯爵家の派閥替えにはそんな事があったのね」


ゲームのセレスティーヌみたいに処刑されたり国外追放されるわけじゃないのね。

えっと良かったのかな?

私の勘だけど、クリスティーヌ様は殺しまでは依頼してないと思うのよね。

再び現れた人が怪しいけど、もう侯爵家と取り引きが終わってるならこれ以上の調査は難しいかもしれない。

そうなるとクリスティーヌ様が1人で罪を負う事になるし。


「学園でクリスティーヌ嬢に会ったのは、今後学園でも私達に近づく事は禁ずると警告する為だ」

「それでわざわざ護衛を連れてたのね」

「それと来期からはクリスティーヌ嬢はクラス替えになり、卒業まで私達と同じクラスになる事はない。卒業後間も無くして病気になり、親類の貴族と結婚して病気を理由に領地で余生を過ごす予定だ」

「え!?それって幽閉ってこと?」

「幽閉と言っても牢ではなく、領地幽閉だ。侯爵家から持参金を持って嫁ぐ。社交界には出てこれないが、生活には困らず、慎ましく婚家で暮らせば平民よりも良い暮らしが保証されている。誘拐犯達やあのルビーという女生徒に比べると破格の待遇だ」

「確かに、まぁそうよね。強制労働とか身分剥奪の上国外追放とかよりよっぽど良いわね」

「学園がクリスティーヌ嬢が自由に過ごせる唯一の場になるだろうからな。自由を履き違え、再びセティーを害する様なら次は容赦はしないと伝えたんだ」


アル様の顔、本気だわ。

でも、今後クリスティーヌ様はアル様と話す機会がなくなったのね。

学園を休んでいた間は侯爵家の自室幽閉され、夏休暇も自室から出されないみたい。

嫁ぎ先の領地で余生を過ごすには人生は長いわ。

私は怪我一つしていないし…。


「アル様、クリスティーヌ様が反省して更生する事が出来れば、領地幽閉を見直してはダメかしら?」

「はぁーセティーは甘過ぎる。そこもセティーの良い所ではあるが」

「だって、もしクリスティーヌ様の他に殺しを計画した人が居たとしても、もう調査をここで打ち切りでしょ?だとしたらクリスティーヌ様が1人で罪を背負うことになってしまうかもだし」

「まぁクリスティーヌ嬢本人の証言の内容は、ここまで大きな誘拐や殺人を依頼していないとの事だが…」

「それにガラス細工!わたしにとって日用品を盗まれるよりこのガラス細工が盗まれた事の方が大事だわ!あの時のクリスティーヌ様の様子だと嘘をついている様には思えないわ」

「確かに、セティーがガラス細工を持っている事を知はなかった様子だったが…」

「最後のチャンスとして、クリスティーヌ様が更生出来るかどうか見定めてはどう?クリスティーヌ様のお義兄様や公正な先生ならクリスティーヌ様も更生出来ると思うの。ああなったのも教育の問題もあると思うし…」


クリスティーヌ様は学業や教養の授業では及第点は取れているし、問題なのはあの性格だけど。


「はぁわかった。被害者であるセティーがそこまで言うなら、話し合いの場を設けよう」

「良かった!ありがとうアル様。それに話してくれてありがとう」

「こっちこそ変に誤解させて悪かった。ただ今後一切、セティーを害そうとした者に減刑をするつもりはない。私の愛する婚約者であり、恋人なのだから」

アル様はそう言うと私を抱きしめた。

無理矢理感が否めない感じになってしまいました。


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