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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
112/236

心遣い

皆様は新型ウィルス、コロナの影響は如何でしょうか。

コロナの影響で仕事がさらに激務となり、緊急事態宣言が解除されたしたが、自宅に戻れない日々です。

創作意欲が湧かず最後の投稿から1ヶ月以上経ってしまいました。

申し訳ありません。

「はぁー」


ジェラルドは机に積み上がっている書類を見て溜息をつく。


「ジェラルド様、頼まれていた資料をお持ち致しました」

「ありがとう、リーゼ」

「いえ、こちらに置いて……。あの、こちらの書類は…いったい…」

「ああ、これかい?これは個人的な物だから気にしないでほしい」

「そうですか、失礼しました。資料はこちらに置いておきます。他に何かご入り用でしょうか?」

「いや、大丈夫だよ。ありがとう、リーゼは先に上がるといいよ」

「わかりました。お疲れ様でした」


部屋を出たリーゼ(エリザベート)は動揺を厚いビン底メガネで隠しながら自分に用意された部屋へと帰る。


「あれは…お見合いの釣書ですわ…。そんな…」

自然と涙が溢れ、エリザベートは眼鏡を取り涙を拭う。


「ダメですわね。ちゃんと覚悟していたはずですのに」


学園でジェラルド様の側に居られるだけで幸せだというのに、いつの間にかさらに多くを望むようになってしまったようですわ。


例の男爵令嬢、エメリアさんとジェラルド様が恋人ではないと知り、気持ちが緩んでしまったんですわ。


気持ちを締めなさければなりませんわ。

釣書をきちんと見ているということは、御結婚に前向きになられたということ。

ジェラルド様のように素敵な方ですもの。

すぐに婚姻を結ばれるはずですわ。

その時、心から祝福出来るようにしませんと。


そこから数日、減っては増え、減っては増える釣書と格闘するジェラルドは心なしか顔色が優れない。


「ジェラルド様、少し休まれては如何ですか?」

「いや、本日中に目を通さないといけない資料があるからね。リーゼ、コーヒーを入れてもらえないだろうか?」

「すぐに入れて参ります」


ここの所ずっとこの調子ですわ。

釣書に目を通して選別しては増え、減ることがない釣書。

流石はジェラルド様ですわ。


エリザベートはコーヒーを入れる手を止める。


コーヒーを飲まれる回復も増えましたわ。

1日に数杯とはいえ、ここの所毎日ですし。

いくら何でも多いと思いますわ。

カフェインの取りすぎは良くないと言いますわ。




「ジェラルド様、コーヒーをお持ちしました。こちらに置いて置きます」


ジェラルドはエリザベートの方へチラリと視線をやり応える。

「ありがとう。君はもう上がって大丈夫だよ」

「わかりました。お疲れ様でした」

「お疲れ様。また明日もよろしく」



「この家は動きが最近怪しいな。こっちの令嬢はセティーの将来的に味方になるとは思えないな」


ジェラルドはしばらく黙々と釣書に目を倒して選別する。


「はぁー疲れたな。そろそろ一息入れるとしようかな」


ジェラルドはエリザベートが入れたコーヒーに手を伸ばし書類を置きながらコーヒーを飲み始める。


「ん?甘い…」

ジェラルドは飲んだコーヒーに違和感を感じ、カップの中を見る。


「ミルクが入っているのか…」


胃の調子が悪い時は自分でミルクを入れる事はあるけど……。

確かにこの頃、仕事が忙しいからとコーヒーを多く取り過ぎていたな。

おそらく、彼女の気遣いだろうな。


さらに書類の山に隠れていた皿を見つける。

皿の上には一口サイズのサンドイッチが盛り付けられ、側にメモが添えられていた。



『良ければ夜食にどうぞ。 あまり遅くならない内にお休み下さい。  リーゼ』



「これも彼女の気遣いかな。ありがたく頂くとしよう」


思いの外、心配を掛けてしまっていたのかな。

だけど、誰かに心配されることなんていつぶりだろう。


公爵家跡取りとして、アル様の側近候補として他人に頼らないようにしていたし、他人も干渉してくることはなかったのに。

よく私が不調だとわかったなぁ。


「本当に彼女が助手で良かった」


資料をまとめのが上手いだけではなく、仕上がるのが早い。

しかもこちらが頼んでいないのに、必要な時に最適な資料を用意してくれている。

それだけに彼女の知識の広さに関心する。

こうした人への気遣いも彼女の暖かい人柄を感じる。


私がこの職を辞めたら彼女は領地へ戻ってしまうのはなんだか惜しい気がする。


王宮でも彼女が居たら頼もしいだろうな。

彼女なら素晴らしい高官になるだろう。

もし彼女にその気があるなら喜んで推薦状を書くのに。





----------------

「お兄様、今度はこちらのお茶会に参加します」

「セティーにまで苦労かけてしまってごめんね。帰りは兄様が迎えに行くから」

「良いんですよ。お兄様のお見合い相手に相応しいかどうか、この目で確かめられますから」

「あぁセティー。なんていい子なんだ。虐められたらすぐに兄様に言うんだよ?」

「ふふ、お兄様ったら。私はもう子供ではありませんよ?」

「それでも女性達の戦いは側からはわからないけど、恐ろしいものだからね。セティー、嫌なら行かなくて良いからね」

「お兄様、大丈夫ですよ!この機会にたくさんの人と交流するって決めたんですから!」

「セティーがそこまで言うなら、もう止めはしないよ」

「えぇ、頑張ります。それじゃあお兄様、私は教室の方へ戻りますね」




「セレスティーヌ様」

「リーゼさん、どうしました?」

「お茶会に参加される女性達の趣味や趣向、最近の動向をまとめた資料です。何かのお役に立てればと思いまして」

「ありがとうございます!私のことまで気掛けて頂いて嬉しいです」

「いえ、ジェラルド様の妹様であるセレスティーヌ様のことですから当然のことです」

「リーゼさんありがとうございます。それと、私のことはセティーと呼んで下さい」

「いえ、そんな恐れ多いことできません」

「私はリーゼさんとは主従関係ではありません。兄からとても優秀で暖かい人だと聞いております。出来たらリーゼさんとお友達になりたのです」

「セレスティーヌ様……。そのように言って頂いて光栄です」

「では!呼んで下さい!」


セレスティーヌは目を輝かせてエリザベートを見つめる。


「うっ。セッセティー様」

「はい!そのうち『様』を外してもらえたら嬉しいです。今度2人でお茶をしましょうね。それでは私は授業がありますので失礼させて頂きます」


 

「はぁー可愛すぎですわ。あの目は反則ですわ。伯爵家のお茶会でしたわね。私も招待されていますのよ。何もないと良いのですが」




「セレスティーヌ様!お会いできて嬉しいですわ!」

「今日のドレスも素敵ですわぁ」

「ありがとうございます」


「セレスティーヌ様とジェラルド様は本当に美しいですわね」

「御兄弟共に美しいだなんて羨ましいですわ」

「弟様も美しい顔立ちだとか。お披露目が今から楽しみですわ」

「ふふ、ありがとうございます。レオは私と同じ白銀の髪にお兄様と同じ翡翠の瞳なんです。私はお兄様に似ていると思うんです」

「まぁ!ジェラルド様似でしたら美男子間違いなしですわ!」

「セレスティーヌ様とジェラルド様の色をお持ちだなんて!」



「それにしても本当に仲の良い御兄妹ですわ」

「お2人の仲に入れる女性は居るのかしら?」

「セレスティーヌ様!私はお2人が一緒にいる事が尊いと思っていますから、お2人の仲を邪魔することはありませんわ!」

「抜け駆けはよしてくださいな!セレスティーヌ様、私はセレスティーヌ様とお買い物やお茶をするのが夢ですわ!私はセレスティーヌ様のことを本当のいもう…「貴方こそ抜け駆けですわ!」

「皆さん落ち着いて下さいませ。セレスティーヌ様が困ってらっしゃいますわ」

「「「……。申し訳ありません」」」

「いっいえ、気にしてませんよ」


(はぁ、こうなっちゃったわね。後少しだから頑張ろう)




お茶会終了間際、主催者の令嬢はセレスティーヌに近づき小声で話し掛ける。


「セレスティーヌ様この後私の部屋に来ませんか?私が着ているドレスと同じ生地を使ったドレスがありますの!」

「確か東の国から取り寄せた生地でしたね。珍しい物を見せて頂いてありがとうございます」

「そうなんですの!実は私のドレスと色違いの物があるですの!ぜひセレスティーヌ様に着て頂きたくて!!」

「私だけ着せて頂くなんて他の皆様に申し訳ないです。また別の機会にお願い出来たら嬉しいです」

「そろそろお開きですもの、大丈夫ですわ!セレスティーヌ様もこの生地に興味を持たれていたではありませんか!」

「えぇそうですが(そうだけど、誰か1人と親しくするのはまずいわ)」

「遠慮することはありませんわ。セレスティーヌ様とお揃いだなんて義姉妹のようですわ!」

(まずいわ。お兄様のお見合い候補の方が私と義姉妹みたいだなんて。他にも候補者が居るし、距離を置かなきゃ)


セレスティーヌは距離を置こうと離れようとするが令嬢は諦めずに更に距離を詰める。


「(中々手強いですわ。そうですわ!ドレスにお茶が掛かれば、着替える必要がありますわ!茶も適度に冷めて火傷になる恐れもなくて好都合ですわ!)セレスティーヌ様、ドレスは諦めますわ。ですが、お茶はいかがです?我が家自慢のお茶ですのよ!」


令嬢はお茶が入ったカップを持ってセレスティーヌに詰め寄る。



「あら、カップをを持ったまま人に近づくだなんて、危ないですわ」

「!?えっエリザベート様!?あちらでお話ししていたはずでは」


エリザベートはセレスティーヌの真横から現れ、令嬢とセレスティの間に割ってはいる。


「そろそろお開きだと思いまして、主催者である貴方とセレスティーヌ様にご挨拶をと思って来ましたの」

「そっそうでしたの」


エリザベートはお茶を持つ令嬢の手に自身の手を添える。

「えぇ。さぁお茶を置きましょう。溢れてドレスにでも掛かっては大変ですわ」


(エリザベート様、もしかして私を助けてくれてるのかしら?)


「(自分がジェラルド様とのお見合いが断られたからって邪魔をしないで下さいませ!)えぇそうですわね。あっ!」

「「あっ!」」


令嬢は手が滑った振りをしてセレスティーヌの方へカップを落とす。

カップから溢れたお茶がセレスティーヌのドレスを濡らす。

目の前にいたエリザベートは落ちるカップを咄嗟に掴む。


「あっドレスが……」

「セレスティーヌ様!大丈夫ですか?」

「ああ私ったらなんてことを(上手く行きましたわ!)これでは着替えが必要ですわね」


「セティー!!」

「お兄様!?なっ何故ここに?」

「セティーを迎えにきたんだよ。それより大丈夫かい?」

「えぇなんともありませんわ」


この時、ジェラルドの目にはセレスティーヌのドレスがお茶で汚れ、すぐそばにカップを持ったエリザベートの姿が映った。


まるでエリザベートがセレスティーヌにお茶を掛けたように。


「エリザベート嬢、これはどういうことでしょうか」

「えっ?ジェラルド様?」

「貴方が妹のドレスを汚したのですか?」

「いっいえ!私はその様なことは」

「ジェラルド様、きっとエリザベート嬢もわざとではございませんわ」

「なっ!?」


「おっお兄様!違いますよ!これは……」

「セティー、帰ろう!我々は失礼させて頂きます」


ジェラルドはセレスティーヌを横抱きにし、その場を後にする。


「ジェラルド様!」


エリザベートがジェラルドの名前を呼ぶがジェラルドは応じずにセレスティーヌを連れて馬車へ乗り込む。


(そっそんな。私はただ、セレスティーヌを助けようとしただけですわ)


やっとリーゼをエリザベートを出せました。

次もエリザベート回の予定です。

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