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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第1章
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お披露目会(アルベルト視点)

私はアルベルト・ヴェスタトール

ヴェスタトール王国の王太子だ。


生まれた時から、王太子としての地位が確立され、私の周りは、権力に媚び、擦り寄ってくる大人ばかりが居た。

そのせいか、物心がついた時には、笑顔を貼り付け、本心を隠し、大人達と上手く付き合っていくことを覚えていた。


そんな中、私が信頼し心を許している、数少ない者の1人が、ジェラルド・マルヴィンだ。


宰相のエドガルド公の子息で、5歳年上の彼は、私の良き話し相手になってくれている。


彼のことは、ジルと愛称で呼び慕っている。

最近になって、王太子としての行動や発言に、周りがより厳しくなっているため、彼から学ぶことは多く、尊敬している。


しかし、そんな尊敬するジルでも、1つだけ尊敬出来ないことがある。

妹のセレスティーヌ嬢のことだ。

ジルの妹への愛情は並ではない。

妹の言動全てが可愛いようで、話し出すと止まらない。


公爵家跡取りとして、立派な姿は私の憧れであり、兄のように慕ってはいるが、妹の話題になると立派だった姿はなく、締まりのない顔になってしまう。

宰相も全く同じか、それ以上に酷いようだが……。


宰相もジルもセレスティーヌ嬢のことは、天使のようだと言っていたが、私はそうは思えない。


周りから甘やかされた人間は、ワガママにしかならない。

自分を世界の中心と勘違いしてしまうに決まっている。

現にセレスティーヌ嬢は度々ドレスやら、飾りやらを強請っていると聞いているし。


セレスティーヌ嬢が私と同じ年で、彼女が公爵令嬢でなければ、気にも留めていなかっただろう。


セレスティーヌ嬢の年齢と身分は、私の婚約相手として、他のどの令嬢より相応しい。


実際、婚約の話も出ているようだ。

正直、自分の中ではイメージが悪い。

セレスティーヌ嬢との婚約はご遠慮願いたいが、これも王太子の務め、我慢しなければいけない。


今度の私のお披露目会で出会うだろうと考えたら、ため息が出てくる。



------------

お披露目当日、私は笑顔の仮面を貼り付けて、私に挨拶をしようとする子息令嬢達に心の中で呆れていたのである。


家の者に私と必ず仲良くなるように言われているのだろう。

そう思いながらも、私は次々に挨拶をしてくる子の話を聞き流しながら応対をする。


よくもまぁ、こんなに話すことが尽きないな。


令嬢達には当たり障りなく、容姿やドレスを褒める。

すると、令嬢達は頬を赤く染め、嬉しそうに自分の事を必死にアピールをしてくる。


はっきり言って令嬢達の盛りすぎた姿に少しも感情が動かされない。


盛りすぎていて、とても可愛いなどと思えないな。

はぁ、早く終わってくれ。


行列も後少しという所で、ジルが挨拶に来た。


「アルベルト様」

「ジェラルド、来てくれたのか、ありがとう。ジェラルドに祝ってもらうのは嬉しい」


疲れている時に気心の知れた者と話すのは、やはり落ち着く。


すぐにジルから、後ろにいたセレスティーヌ嬢を紹介された。



まず目にした、彼女の装いは意外だった。

たくさんのドレスや宝石を買い漁っていると聞いていたので、てっきり、他の令嬢達よりも目立つために盛りに盛った装いで来ると思っていたのに。

瞳の色に合わせられたラベンダーのドレスは彼女にとても良く似合っている。

彼女の頭に咲く小さな花が可憐で、まるで花の妖精のようだと不覚にも思ってしまった。


確かに、ジルや宰相の言う通り可憐で可愛い。


だが、中身はどうだ。

外見は誤魔化せても、内面を誤魔化すのは難しいはずだ。

確か、ピアノを始めたとか言っていたな。

大方その自慢でもするだろう。


他の令嬢と同じように当たり障りなく外見を褒め、セレスティーヌ嬢からのアピールを聞こうと思っていた。


しかし、予想とは外れ、セレスティーヌ嬢は私と同じ仮面のような笑顔で、挨拶のみを済ませ、その場を離れた。


「セレスティーヌ嬢!?」

驚きのあまり、思わず表情を顔に出し、名前を呼んでしまった。


ジルは申し訳なさそうに礼をし、セレスティーヌ嬢を追いかける。

そんな二人を驚きながら眺めていると、すぐに令嬢達に囲まれた。


なんだったんだ?

私は王太子なのに。

少しもアピールしてこないなんて……。


セレスティーヌ嬢のことが気になり目線をそちらに向けると、セレスティーヌ嬢は庭園の花を見ていた。

すると、セレスティーヌ嬢は、頬を薄っすら赤く染め、目を輝かせ、満面の笑みを浮かべさせている。


なっ!?なんなんだ、あの笑顔は!?

珍しい花でもあったか?

さっきの笑顔とは、まるで違う!


セレスティーヌ嬢の笑顔を見た時、胸が跳ね上がるような感じがした。


もっとセレスティーヌ嬢と話をしてみたいな。

そんな思いが胸に広がるが、目の前の令嬢達が邪魔でセレスティーヌ嬢の元へ行けない。


くそっ。

令嬢達が邪魔だな。

だいたいこんな大勢で押しかけて迷惑だと考えないのか!?

これだから媚びてくる者は嫌なんだ。


セレスティーヌ嬢の方を見ると、他の子息達に話しかけられているのが見える。


私だってセレスティーヌ嬢と話したいのに。


現実的にこの令嬢の群れを巻くことは不可能だと諦め始めた時に少し離れた所から視線を感じた。


セレスティーヌ嬢がこちらを見ている。

だか、なんだか悲しいような、何かを悟っているような、辛そうな顔をしている。


セレスティーヌ嬢の顔を見ていると、胸がなんだかザワザワしてくる。


この感情がなんなのかわからないまま、パーティーは終了した。


やっと物語進みそうです。

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