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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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思いの丈

「論外か……。まぁ当然だな」

ささやく様に話すシャル様は憂いを帯びている。

「シャル、本気なのか?」

「ああ、勿論だ」

「シャル様はいつからマリアさんの事を好きになったんですか?前はセティーさんのことを好きって言ってましたけど?」

「え!?」


エメリアの質問に驚く。


「セティー、勘違いするな。セティーの事は出会った頃に俺の価値観を変えてくれた事や大事な事に気づかせてくれた事で好意に思っただけだ」

「なんだ、びっくりしたわ」

「ただ、価値観が変わったからこそマリアを好きになったのだろう。初めは本を読みながらコロコロ変わる表情や珍しい物に目を輝かせている所が可愛らしいと感じていた。明確にこの思いを自覚したのは、マリアが通訳をしている時だったな」

「通訳?」


「ああ、度々他国の大使と外交会議があってな。その際、花を添えるという意味もあるだろうが、語学に堪能なマリアが我々の通訳をしてくれていた。マリアは会議の前は不安そうにしていたが、会議では通訳をしっかりとこなし、求められた意見にも答えていた。嫌味を言われても自分の役目を全うする姿に心が打たれた。マリアが俺の隣で共に国を支えてくれたら、どんなに良いかと思ったんだ」

マリアの事を語るシャル様は頬を少し赤くさせ目をキラキラと輝かせている。


「良く恥ずかしげもなく話せるな」

「俺はアルと違ってヘタレではないからな」

「誰がヘタレだ!」

「ハハ。ただ、まだマリア本人に伝えるつもりはなかった」

「シャル様、どうして?」


私の質問にシャル様が悲しそうな顔をする。


「それは、俺の国は一夫多妻制でハレムがあるからな。この国の女性には受け入れ難い事だろ。それに既に俺のハレムの準備が進められているからな」

「「!?」」

「たっ確かに、難しい問題ですが、愛さえあればきっと」

「でっでも王族なら側室があるのは仕方ない事だわ。それに貴族では妻を2人持つ方も居るわ。」

「良いんだ。ありがとう2人とも。俺もハレムに対して特に何も思っていなかった。しかし、アルとセティーを見てマリアと2人で寄り添い、共に国を支えていけたら、どんなに良いかと思ったのだ。このまま卒業すれば、簡単に会うことも出来なくなる。何も出来ないまま諦めることは出来ない」

「シャル様…」


そんなにもマリアのことが好きなのね。


「ヴィが怒るのも無理はない。俺の国は王妃教育などない。王妃は王子を産んだ者がなり、王の隣で笑っているのが仕事だ。ハレムは血縁を絶やさないために作られた物だが、今では権力の象徴だな。家の繁栄の為に送られてくる者も多いが、その多くは寵愛が得られず冷宮で朽ちていく。ハレムは栄光と失脚、陰謀渦巻く巣窟だ。誰も真に王を愛している者は居ない。王もまた同じ。そんな所に最愛の妹を嫁がせたくないだろ」


シャル様。

なんて声を掛けていいのかしら。

私も元日本人だからか、正直後宮に入るって快く思わないわ。

後宮で全員が幸せになることなんてないし。

何よりマリアに苦労してほしくない。


「それで?何か考えがあるんだろ?」

アル様がシャル様に問いかける。


「ああ、俺はハレムを解体させようとしている」

「やはりか」

「アル様、何か知っていたの?」

「いや、しかしシャルが王妃宮の予算などについて聞いてきたからな」

「驚くことに、ハレムではこの国10倍以上の出費を必要としている」

「「10倍!?」

「そっそんなにお金が掛かるんですか!?」

「王妃宮の予算って決して少なくないわよ!?」

「ハレムに嫁いできた女以外にも世話係もいるしな。それに皆着飾ろうと必死だからな」

「その点では議会に挙げられるかもしれないな」

「それだけではない。他国に比べて王子の亡くなる割合が多い。5歳まで母親と共に後宮で過ごすしきたりだが、5歳までに亡くなった者は数えきれない。もちろん他の人間もだが、その殆どが不慮の事故というとこにされる」

「ハレムがある事でのデメリットか。しかし、根強い文化だ、簡単に無くす事は出来ないだろ」

「既に必要な書類は作成している。ついでに高級官僚達の汚職も証拠を掴んでいる。こいつらを処分出来れば、その娘である者達もハレムから出ていくしかない。それに、王もこの数年ハレムの女達に会っていないそうだ。これもハレム解体の後押しになるだろ」

「それじゃあ、ハレムを無事に解体することが出来たら」

「ああ、マリアに再び気持ちを伝えたい」

「シャル様!何も出来ませんが、応援してます!」

「私も!応援するわ!」


「セティーとエメリアは俺がマリアと恋人になって良いと考えているのか?」


その辺の人よりかは良いかな。

シャル様も攻略対象者だからイケメンだし。

サラッと軽い発言をするけど、女の人に対して節度はあるし、意外と真面目だしね。


「「もちろん/です!」」


「私はシャルが誰を選ぼうが構わないが、マリアが悲しめばセティーが悲しむ。そうなったら許さないからな」

「アル、なんだそれは。素直に応援してくれ。こうなったらすぐに取り掛かろう ということだ、俺はしばらく国へ帰る」

「えっ今!?」

「マリアさん、大使の方とデートするって言ってましたよ! 気になるんじゃないんですか?」

「それはマリア次第だ。俺は気持ちを伝えただけでマリアを縛る権利も、マリアが他の男と接する事を禁止する権利もない。それにしばらく顔を合わせてくれないだろうからな。その間に出来る事をしに行く」

「学園側には私から言っておく」

「アル、すまない。感謝する」


こうしてシャル様は国に急いで帰っていった。




--------------------

コンコン。

寮に帰りマリアに会いに行こうとしていると部屋のドアがノックされた。


「お嬢様、マリア様が訪ねてきています」

「マリアが!もちろん会うわ!もしかしたら今日は部屋に泊まるかも。それとエメリアを呼んできてちょうだい」

「畏まりました」


部屋に入ってきたマリアは泣いていた。

マリアの泣き顔なんて久しぶりに見たわ。


「セティー、私、私どうしたらいいの!?」

「とりあえず座って、落ち着いて話をしましょう。ね?」


間も無くしてお茶が運ばれて来て、エメリアも到着した。


「突然の事で驚いたわよね」

「うん、まさかシャル様が私をなんて思ってもみなかったわ」

「でも、シャル様は本気でマリアさんのことが好きと言ってました。気持ちを持たれたということだけは受け止めてあげられますか?」

「それは、もちろんよ。ただ私がシャル様の好きかと聞かれると困るわ」

「マリアはシャル様のことどう思っているの?少しも恋愛の気持ちは持てない?」

「シャル様は仲の良い友達だと思っていたわ。最近本の話をするのが楽しくて、私が本に夢中になっても怒らないし、私が本の感想を言い続けても笑って聞いてくれるの。それに、私が外交官になりたいなんて言った時も笑わないで応援してくれたわ」


マリアが外交官になりたいなんて初めて知ったわ。


「聞いてる感じでは相性が良さそうですが」

「でも恋愛ってセティーとアル様みたいに手を繋いで、キスしたりする仲になるってことよね。想像が出来ないの。明日からシャルにどういう顔で合えばいいのかわからないわ」

「シャル様なら国に帰られてますよ」

「え?」

「ハレム解体するんだって。無事に解体する事が出来たら戻ってくるって言ってたから、少しの間居ないわ」


私達の発言にマリアが固まる。


「なっなんで突然ハレム解体を!?」

「ハレムはお金が掛かるし、陰謀や暗殺も多くてデメリットばかりだからって。でも何よりマリア1人を愛したいからでしょうね」

「っ!まっまさか本気で改革をしようと」

「マリア?改革って?」

「シャル様が自分の国は貧富の差が激しいと言っていたわ。ハレムや次々と生まれる王族に予算が割り当てられるせいだと。それに姫が多いから持参金も財政を圧迫してると。それらの予算を福祉と物流に当てたいって言っていたわ」

「それを聞いてマリアはどう思ったの?」

「普段は捉え所のない感じで、女性に対して甘い台詞を簡単に言うと思ってたけど、真面目な話をする時はちゃんとしてるし、何より目が真剣だなって思ってたわ」


私はエメリアと顔を見合わせる。

中々の高評価だと思うのよね。


「シャル様の事は恋愛として好きかはわからないけど、嫌いじゃないって事ですね」

「えぇ、嫌いではないわ」

「良かったです。じゃあシャル様はしばらく帰ってこないですし、とりあえず今度のデートについて考えましょう!」

「エメリア、シャル様のこと後回しでいいの?」

「頭で考えるんじゃなくて、心で好きになるんですよ。それに、これ以上は私達がシャル様をマリアさんに推す形になります」

「まぁそうね、何よりマリアの気持ちが大事だわ。デートは何処に行くの?」

「それが、お断りしたオペラをシャル様と見に行ってカフェでお茶をしたことを知られて、同じコースでデートしてほしいと言われたの」

「自信家ですね。あえて同じにするなんて」

「でもどうしたらいいのか、わからないの。シャル様の時は、唯々楽しくて。一緒に行ったカフェがね、私の好きな本の世界観が味わえるカフェだったの。もうずっと興奮してたわ」


そういえば、シャル様にマリアが好きな本と新しく出来たカフェについて聞かれたわね。

そっか、マリアの為にリサーチしてたのね。


「楽しかったら楽しんで良いと思いますよ?」

「そうよ。逆に楽しくなかったら、楽しくないで素直に反応したらいいのよ」

「でも、それじゃあ失礼にならない?」

「マリアさん、その方はお断りするつもりなんですよね?そんなお断りする予定の人に遠慮なんてしなくて良いですよ!むしろデートのチャンスをあげてるんだと思って下さい!」

「エメリア、わかったわ」

「不安なら私達が尾行するから、安心してオペラを楽しんでね」

「わかったわ。2人ともありがとう」



マリアはようやく笑顔になった。

やっぱり笑顔が1番ね。

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