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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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ペアリング

「ゔー」

王宮に向かう馬車の中で私は落ち着かずソワソワする。


落ち着かない理由は2つ。

1つはアル様とのことを一晩たって意識し、嬉し恥ずかしい気持ちでいること。

そしてもう1つの理由は自分の格好。

お母様プロデュースにより全身甘々コーディネートなのだ。

何時もは無難なデザインや色ばかりだが、今日はフリルとレースたくさん付いて色もパステルカラー。

パニエでスカートを膨らませ、頭にはドレスと同じボンネット。

ボンネットを被っているので今日の髪型はツインテールだ。


何時もと違いすぎるよー!

凄い甘々。

前世でいうとロリータ系かな。

幸い前世の自分と違ってセレスティーヌだから変ではなというか、むしろ似合うとは思う。

だけど…。

アル様に引かれたらどうしよう。

せめてボンネット外そうかな。


「お嬢様、ちゃんと可愛いので自信を持って下さい」

「そうですよ!殿下もメロメロですよ!」

「お嬢様は普段は綺麗系ですが、こういった服装もお似合いですよ」


メイドの3人が励ましてくれる。


「皆、ありがとう」

でも落ち着かないのよー。




「アル様、セレスティーヌです」

「ああ入ってくれ」


「アル様おはよう」

「っ!ああ、おはよう」


今アル様が一瞬目を見張ったわ。

うぅ。


「いつものと装いが違うんだな」

「うっうん。お母様の薦めで」

「そういったのも似合うな。可愛い」

「あっありがとう」

「もうすぐ皆も来るから、先にサロンで待っていよう」

「ええ」


アル様はいつもどおりエスコートをしてくれようと手を差し出してくれた。

だけど、いつもより距離がある。


「その服装ではあまり近づけないだろ?」

「あっこの服は大丈夫なの。クリノリンじゃくて布なのよ。パニエっていうのよ」

私はスカートの裾を持ち上げてスカートの中のフリルでボリュームたっぷりのパニエを見せる。


「っ!?セティー!?」

「クリノリンと違って布だからいつも通りで平気よ」

「セティー、スカートをめくるなんて!」

「?スカートの下も布だから平気よ?足も見えてなかったでしょう?」

「ああ、もう!絶対他の男の前ではしないでくれ」

「わかってるわ」

「はぁ、ならいい」





「お2人ともご無事で本当に良かったです」

「アルが頭から血を流しているのを見た時は肝が冷えたな」

「意識が戻らない時も焦ったわ」

「セティーも取り乱して大変だったよね」

「セティー、アル様、本当に良かった」


「皆心配を掛けたな。この通り大丈夫だ」

「その節はごめんなさい。冷静じゃなかったわ」


エメリア、シャル様、マリア、ヴィクトル、お兄様。

何時ものメンバーが揃いお茶をする。


「ジルも後処理に追われて大変だっただろ」

「えぇまぁ。でもセティーを害そうとしたんだから、容赦はしません」

「お兄様、ちゃんと休めましたか?」


お兄様は昨日は帰らず王宮に泊まり込みだった。


「大丈夫だよ。そうそう彼女は終身刑の強制労働に行くことになったよ」

「極刑は免れたんですね。良かった」

「楽に死なられたくないからね。彼女は借金もあるし、自由の身になることはないね」

「ハハ、やっぱりジルは怒らせてはいけないな」

「まぁ私としてもセティーにしたことは許せないからな。刑罰に異論はない」


私もアル様にしたこと許さそうにないわ。

だから同情はしないわ。


「それでアル様とセティーはいつ私達に話してくれるのかな?」

「えっあっああ」


さっきからお兄様の笑顔が怖いような。


「昨日セティーと晴れて恋人になった」

アル様が咳払いをして皆んなに報告する。

その顔は少し頬が赤く照れている。


ああ。

私まで照れちゃう。


「「きゃー!!!」」

「やったわねセティー!やっと両思いよ!」

「おめでとうございます!お2人ともお幸せに!」


マリアとエメリアは大はしゃぎ。


「2人ともいつも応援してくれてありがとう。2人がいつも相談にのってくれて背中を押してくれたおかげよ」

「セティー、良かったわ。出会った頃からずっとアル様のことが好きで、アル様もセティーが好きなのに中々くっつかなくて焦ったわ」

「そうですね。お2人はどう見ても両思いなのに、恋人ではないと知った時は驚きました」


えっ。

皆んなはずっと知ってたの!?

はっ恥ずかしい。


隣をチラッと見るとアル様も顔が赤い。


「やっとか。これでセティーはヴェスタトールの王太子妃確定だな」

「良かったねアル様。俺も2人の幸せを守るれるよな騎士になるからね」


シャル様とヴィクトルもお祝いしてくれた。


「そっか。ついに恋人に…」

「お兄様?」


お兄様は何処か寂しそうな顔をする。


「アル様、セティーのことよろしくお願いします。身内の贔屓目に見ても、努力家で可愛い妹です。どうか幸せにしてあげてください」

「お兄様…」

「セティー、幸せになるんだよ。これまで良く頑張ったね。これからはアル様が幸せにしてくれるはずだよ。だけど何かあったらいつでも頼って?私はずっとセティーの兄様だから」 

「お兄様…ありがとうございます」


私とお兄様はギュッと抱き合う。

うぅ泣いてしまいそう。


「まるで嫁ぐみたいだな」

シャル様が冷静にツッコミをいれた。


「実際結婚の時は父が取り乱すでしょう。私はセティーの思いが実り、アル様と恋人になったら祝福すると決めてましたから」

「ジル、ありがとう。必ずセティーを幸せにする」

「はい。それはそうと、セティーは嫁入り前にの娘です。恋人となったといえど節度ある付き合いをして下さい。くれぐれも昨日のような事はないように」

「うっ。わかっている」

「セティーもくれぐれもだよ?もしまた夜遅くにアル様と会っていたら外出禁止にするよ?」

「はい。わかりました」


お兄様、目が本気だわ。


その後は昨日の事を根掘り葉掘り聞かれた。


「それにしても今日のセティーの格好可愛いわ!」

「素敵です!私も着てみたいです!」

「ちょっと可愛すぎないかしら?」


「そんな事ないわよ!こういう色合いのドレスが似合って羨ましいわ。私は髪の色が強いから色合わせが難しくて…」

「私もレースを重ね過ぎるとカッコ悪くなっちゃうんです」

「そんな!2人とも絶対似合うわよ!」



「女性陣は盛り上がってるな。確かに今日のセティーは普段の装い違って可愛いな」

「セティーは何を着ても似合う」

「当然です。セティーは本当に可愛いですから」

「マリアもこれでまたドレスを作るのに時間かけるよ。いくつもの生地を当てがうから時間掛かるんだよ」


「所でアル、例の指輪は渡せたのか?」

「それが、あの後エドガルド殿や父上達まで来て邪魔されて渡せていない」

「なんだ、締まらないな。告白の時に渡すのが良いシチュエーションというものだろ」

「早く渡してあげなよ。セティー、絶対喜ぶから」

「ああ、わかってる」



「それでは我々は失礼するとしましょう」

「そうね。ジル様の言う通り私達は帰りましょうか」

「え?みんな帰っちゃうの?」

「セティーはこの後アル様と共に医務官の診察を受けるだろう。その後はアル様と過ごすといいよ」

「お兄様、良いんですか?」


絶対2人きりにさせてくれないと思った。


「恋人でいられる期間は短いからね。今のうちに楽しんでほしいだ。アル様さえ節度を守ってくれれば父様には言わないから」

「お兄様、ありがとうございます」


「皆せっかくなら俺が借りてる宮に来ないか?俺の国の茶葉や菓子もあるし、もてなすぞ」

シャル様の提案により、みんなシャル様が泊まってる来賓様の宮殿に行った。



私とアル様は医務官の診察を受け、私はメイド3人に身支度をしてもらっている。

このために今日はフルメンバーを連れてきてるのよ。

この服も髪も色々大変だから。


「アル様、お待たせ。時間掛かってごめんね」

「いや、待っていない。それに私の為に可愛くしてくれていたんだろ?」


アル様は私の髪に触れ、そのまま髪を持ち上げて髪にキスをする。


「っ!はっ反則だわ。ただでさえカッコいいのに、そんな事されたらドキドキしすぎて顔が見れないわ」

私は顔を赤くしてやや俯いてしまった。


「はぁ、それは私のセリフだ」

「うぅ」

恋人になって、アル様けっこうストレートな言い方するのね。


「医務官からは運動はまずは散歩から始めるよう言われたことだし、庭園を一緒に歩かないか?」

「ええ、行きましょう。王宮の庭園はいつ来ても綺麗で大好きなの」


アル様にエスコートされ庭園へ向かう。


「あれ?アル様そっちは…」

「ああ、今日は特別に許可が降りてるから大丈夫だ」


アル様が連れて来てくれたのは普段は入る事の出来ない庭園だった。


「わぁ!凄い!」

「私も久しぶりに来たな」


門を潜り、歩いた先の庭園は沢山の花が咲いていた。

庭園の中央は水上庭園になっていて中央に白いガゼボがあり、そこに通じる通路は透明で光の反射を受けて光ってみえる。


「ゆっくり見て回ろうか」

「えぇ、そうしましょう!」


この庭園の花はどれも珍しい種類の花ばかりでつい見入ってしまったわ。


「そろそろ休もうか」

アル様にガゼボへと誘導される。


ガゼボに通じる通路は透明だから水に落ちそうで少し怖そうとおもったが、その思いは一瞬で消された。


「水中に花が咲いてるわ!」

「ああ、珍しいだろ。この水中花が見える為にこの通路をガラスにしたんだ」

「綺麗だわ…」


私は水中の花に見入ってしまう。


「セティー、あまり覗き込むと落ちてしまう」

「ああごめんなさい」

「ガゼボからもこの水中花が良く見えるからベンチに座って見よう」


ガゼボのベンチに座ると驚いた事にガゼボの床がガラス張りになっていた。


「わぁ!」

「上も中々だぞ」

アル様が指で上を指し上を見るように指示する。


ガゼボの天上は細かい彫刻で光が透けて見える。


「凄い!光が透けて光り輝いてる!」

「気に入ったみたいで良かった」

「えぇ!アル様、連れてきてくれてありがとう」

「ああ、セティーの笑った顔がみれて私も連れてきた甲斐があった」


アル様! 

またそう言うこと言って! 


「こっこんな素敵な場所なのに他に誰もいないなんてなんだか勿体ないわね」

私は話題を逸らす。


うぅ。

もっと可愛く反応出来たらなぁ。


「私は誰にも邪魔されずにセティーと2人っきりでこの場所を楽しめることが嬉しい」

「うぅ」

「セティーは私と2人では嫌か?」

「そんなことないわ!」

「それなら良かった。意識してくれているのは嬉しいが、恋人になれたのだから、少しぐらい恋人らしい事をしたい」

「うぅ、少しずつじゃダメ?ただでさえ毎日アル様にときめいて、心臓がドキドキしてるのに。これ以上ときめいたら心臓がもたないわ」


私の言葉を聞いてアル様は手を頭につき、天を仰ぐ。


「はぁ。ダメだ、可愛すぎる。セティー、手を出してくれないか?」

「え?こう?」

私は右手をアル様の前にアル様の前に出す。


「いや出来たらこちらの手を」

アル様はそう言って私の左手を取る。

「ここに、私との絆の証を付けてほしい」


左手の薬指に指輪がはめられた。

金の指輪に白銀の模様が描かれ、中央には私とアル様の瞳の色の宝石が付いていた。


「指輪…。あっでも指輪なら婚約式に頂いた物があるわ」

「あれは代々王家に嫁ぐ者に贈られる物だ。これは私個人がセティーに贈りたくて作った物だ。これならそちらの指輪も着けられるだろ」


確かにアル様から頂いた指輪は細身の指輪だから婚約式で頂いた指輪を上から重ねて着けても良い感じだわ。


「それと、この指輪は実は私とペアなんだ」

アル様はそう言うと自分の手に指輪をはめて私に見せる。


アル様のは白銀の指輪に同じ模様が金で描かれ、宝石は私のと同じ指輪だった。


ペアリング!?

うっ嬉しい!!


「その、外国では愛の証に男性も同じ指輪をはめると聞いた。これは私からセティーへの愛の証だ」

「!?愛の証。嬉しい、こんなに幸せで良いのかしら」

「良いに決まってる。それに、これからもっとセティーを幸せにするんだ、これくらいで満足されては困る」

「うぅ、私はだってアル様を幸せにして見せるわ。私もアル様をあっ愛してるんだから」


うぅ、噛まずに言えたら良かったのに。


アル様に抱き寄せられる。

ボンネットのせいでアル様の顔が見えない。


そう思っているとアル様が覗き込んできた。アル様の手が私の顎を優しく掴みクイッと私の顔を上にむかせる。


あっ。

私は自然に目を閉じる。


唇に優しい感触が当たるのを感じ、しばらくして離れていった。

目を開け目の前のアル様の顔を見る。


私はアル様と今度こそ、誰にも邪魔されずにキスをした。

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