両思いへ
皆さんはコロナウイルス大丈夫でしょうか。
私は煽りを受け連日勤務が続いています。
季節の変わり目で普通にしてても体調を崩しやすい時です。
皆さん体調には充分お気をつけ下さい。
あぁ〜!!
アル様が愛してるって!
夢じゃないわよね!
鎮痛剤の効果が切れはじめ全身に鈍い痛みを感じ、夢かもなんて思いは吹き飛ぶ。
夢じゃない。
夢じゃないのよ〜!!
気持ちが高まり過ぎて、私はベッドの上で足をバタつかせたりゴロゴロしたり、枕をボフボフさせてみたりする。
「あっ痛!とりあえず鎮痛剤飲んで落ち着こう」
ふぅ。
それにしても、今1人で良かったわ。
ベッドの上でジタバタしてる姿なんて誰にも見せられないわ。
明日も王宮に行くけど、どんな顔して行けばいいのかな。
意識がしっかりしてない時だったし、アル様は自分が言ったことは覚えてないよね。
でももうアル様の前で平然としてるなんて出来ないよ。
コンコン。
「はい、どうぞ」
「セティーちゃん、具合はどう?」
「だぁ!」
私が悶々としているとお母様とレオ君が部屋に入って来た。
「大丈夫です。鎮痛剤さえ飲めばある程度動けるようになりました」
ベッドの上でジタバタするくらいには…。
「良かったわ。明日からはまず散歩をして身体を動かしていきましょう」
「はい、ご心配をお掛けしてごめんなさい。お母様、心配してくれてありがとうございます。あっもちろんレオ君も」
「大事な大事な娘の事だもの、当然よ。ねぇレオ、大好きな姉様だもんねぇ〜」
「あーい」
「レオ君!返事をしてる!」
「う?」
「はぁ!!可愛いぃぃー!!」
レオ君で癒されたわぁ!!
「セティーちゃんったら。そろそろ夕食にしましょうか」
「もうそんな時間なんですね」
「今日はエドもジルも王宮から帰って来ないだろうから私達だけでゆっくりサロンで食事をしましょう」
「やっぱりお父様もお兄様も戻られないんですね」
アル様の事はもちろん、ルビーさんの事もあって2人ともとても忙しいみたい。
お兄様も王宮での仕事が山積みらしい。
私だけ休んでるのが申し訳ないわ。
「大丈夫よー。アルベルト様が意識を取り戻されたし、仕事が落ち着けば帰ってくるわ」
「そうだと良いんですが。せっかく家に居るのに家族が揃わないのは何だが寂しいです」
お父様もなんだかんだ忙しくても必ず家に帰ってきてたし。
いつも抱きつかれ、何かとスキンシップ激しめなお父様だけど、会えないとなると寂しいわね。
「ふふ、エドが聞いたら泣いちゃうわね」
「いくらお父様でも流石にそれは……」
ないとは言い切れないわ。
「そんな事はないわよ。後1年ちょっとでセティーちゃんはお嫁に行ってしまうんだから」
「お母様……」
「お嫁に行ったらエドと違って私は中々会えないもの。私だって寂しいわ」
いつになく真面目な顔をしたお母様に私はキュッと胸が締め付けられる気持ちになる。
「だからね、私との時間も大切にしてほしいの。私ね娘が出来たらしたい事沢山あったのよ。セティーちゃん、叶えてくれるかしら?」
「もちろんです、お母様!」
私の返事にお母様の目がキランっと光る。
「良かったわー。じゃあサクッと夕食を済ませたら新しいドレス選びましょう!」
「えっ!?」
「だって花の乙女だというのに、セティーちゃんったら、最低限のドレスしか作らないじゃない。親の贔屓目を抜きにしても、こんなに可愛い娘を着飾らないなんて無理よ。それに嫁いだらこうして私とドレスを選ぶことないから、今だけのお願いよ」
「わかりました。でも手加減して下さいね」
「もちろんよ!病み上がりのセティーちゃんに無理なんてさせないわ!もう商人が来る手配はしてあるから、ゆっくり選びましょう!」
「うーんこれも可愛いわね。これも買いましょう!」
「ちょっと可愛すぎませんか?」
何層にも重なるレース。
所々のリボン。
広がったスカート。
頭にはドレスに合わせたボンネット
全体的パステルカラーで甘々なデザインだわ。
それに、これクリノリン着けないとだよね。
あれ動き辛いのよ。
「こういうのは着れるうちに着ないと!ほらドレスに合わせた手袋もあるわよ。」
「えっとその、こんなに広がったスカートだとクリノリンがその…」
「こちらのパニエというものがございます。これは布ですので、椅子に腰掛けるのも楽ですよ」
「まぁ!良いじゃない!」
お母様、マダム。
着る本人を置いて盛り上がらないで。
「そうですわ!ドレスもいいですが、こちらを是非お嬢様に!」
「こっこれは!?」
ナイトドレス!?
マダムが出したのは数種類のナイトドレス。
普通のナイトドレスは飾り気のないワンピースなんだけど、マダムが出したのは普通のとは異なるデザイン。
ちょっと待って胸元開きすぎじゃない?
これだって布が少し透けてるわ!
これなんてリボン解いたら脱げちゃうよ!
「あら可愛いわね、全部買うわ!セティーちゃんが今使ってる物は地味だし、この際全部捨てて新しい物にしましょう!」
「奥様、ありがとうございます」
「お母様!?」
「セティーちゃん、こういうの少しずつ慣れないと。結婚したらもっと凄いの着ることになるわよ」
「これより!?」
「お嬢様、こちらは一見露出が多いようですが、しっかりとバストの両サイドを支えており、機能性に優れているのです。 従来の物はそのような機能はありません」
「たっ確かに」
「お嬢様はこれから体系維持の為にもしっかりと機能性に優れているものを常に身に付けた方が良いと思いますわ」
うぅ確かに。
「じゃあ早速今日から着ましょうね」
はぁ。
私は新しいナイトドレスを身につけバルコニーでため息をつく。
うーん。
普通に可愛いけど、この布の透け感。
胸元の開き具合。
恥ずかしくて誰にも見せられないわ。
まぁナイトドレスは誰かに見せる物じゃないけど。
今日買ったドレスで王宮に行ったらなんて、お母様は言ってたけど。
あのドレス。
私は可愛いと思うけど、男性から見て可愛いのかな?
甘々過ぎるのって男性から引かれないかな?
明日王宮に行ったらアル様に想いを伝えよう。
勇気を出さないと。
その為にも少しでも可愛く、綺麗にしたい。
はぁ。
早く寝ないといけないのに。
明日、告白するんだと決めたらドキドキし過ぎて寝られないわ。
でも明日アル様に会える。
元気な姿が見れると良いんだけど。
「セティー」
「え?」
今アル様の声が聞こえたような。
そんな、まさか。
いくら会いたいからってこんな幻聴を…
「セティー」
「えっ本当に声がする」
下の庭を見渡すとアル様の姿が見えた。
「アル様!?どうしてここに!?まっ待って今そっち行くから!」
私は慌ててカーディガンを羽織り庭に出る。
「アル様!」
「セティー」
「アル様、どうしてここに?身体は何ともないの?」
「ああ、目が覚めてセティーにどうしても会いたくて来てしまった」
会いたかったと言われ私は顔を赤くする。
「そっそうだとしても普通に玄関から来れば良いじゃない。 どうして庭になんて」
「それは、先触れもなく突然に、しかもこんな時間では入れてもらえないと思って。しかし、どうしても明日まで待てなかったんだ」
アル様。
私も会いたかった。
「セティー、無事で良かった」
アル様が私の顔に手を添えて安心した顔をする。
自然と私もアル様の方へ手が伸びる。
「私の方こそ、アル様が目覚めて良かった。凄く心配したのよ?このままだったらって」
「ああ心配かけてすまない。セティーの声眠っていても聞こえていた。私を呼んでくれていただろ?」
「えっ?ええ」
聞こえていた!?
どこまで聞こえてたの!?
「セティーの私への思い、確かに聞こえていた」
まっ待って!?
私が言ったこと聞こえてたの!?
どっどうしよう。
告白するなら今なのかしら。
思いがけない出来事に私は明らかにアタフタする。
意を決してアル様の顔を見る。
「あっあの、アル様。私は、アル様の事がずっと、ずっと…」
「セティー、私から言わせてくれ」
手を握られたままアル様が片膝をつく。
「私は王太子としてではなく、アルベルト・ヴェスタトール個人として、セレスティーヌ、君を愛している」
「……」
「初めてあった時からずっと好きなんだ。セティー、どうか私の恋人になってくれないか?」
月明かりに照らされ輝くアル様。
前世で見たどんなスチル絵より素敵。
心臓がバクバクと激しく鼓動を立てる。
次に目からポロポロと涙が出てくる。
「セティー?」
「……ハイ」
「っ!」
「わっ私もずっと、ずっと昔からアル様の事が好き」
「セティー!愛してる」
アル様にギュッと抱きしめられる。
本当にアル様の恋人になれたのね。
「夢みたい」
「夢じゃないさ」
再び顔を触れられる。
頬からゆっくりと顎に手が移動し自然とアル様を見上げる形になる。
ゆっくりアル様の顔が近く。
私はそっと目を閉じて、その時を待つ。
ガシッ!!
唇に期待した感触はなく、そのかわり後頭部に激しい衝撃が走った。
「「え?」」
目を開けるとアル様と目が合う。
アル様もポカンとしている。
「何をしてるんだい?」
ゆっくり声がする方へ向くとそこにはお父様が居た。
「「お父様!/エドガルド殿!?」」
後頭部の激しい衝撃はお父様の手だった。
「アルベルト殿下。病み上がりなお身体で何故王宮ではなく、我が屋敷?そして今私の天使に不埒な真似をしようとしてませんでしたか?」
「お父様!アル様は病み上がりなんですから乱暴なことはしないで下さい!」
「セティーは黙っていなさい!そもそも、そんな格好で男の前に出るなんて!」
そんな格好ってただのナイトドレスよ。
それにカーディガンだって羽織ってるし…。
ハッ!
そうだった!
何時ものじゃないんだった!
私は改めて自分の格好見る。
カーディガンの前を握っていた手を離してしまい、目の前に居るアル様に新しいナイトドレスが見えてしまった。
「えっと、その、似合ってる。とても綺麗だ」
「っ!あっありがとう」
アル様に褒められてカァッと顔を赤くする。
「セティー!前を閉めなさい!アル様!王宮を抜け出すなんて、それでも王太子ですか!?」
「もうエドったらダメよ良い所で邪魔しちゃー」
お母様がトコトコと呑気な声を出してやってくる。
お母様の後ろには陛下と王妃様まで居る。
「エレオノーラ!どうしてアル様が入ってこれるようにしたんだ!?」
「だって門番から殿下の様子を聞いて、これはラブロマンスの予感!って思ったのよー。庭の塀に掛けておいたハシゴも役に立って良かったわ。それにセティーちゃんのナイトドレスも新調して良かったわぁ!」
「エレオノーラったらナイスだわぁ!流石ねぇ!」
「エレオノーラそういうのは阻止するのが母親の役目じゃないのかい?」
「もう何を言ってるのよ!セティーちゃんの恋が実るチャンスなんだから全力で後押しするわよ」
「通りで。不自然なくらい警備に穴があると思った」
お母様。
全部計算してたのね。
「というか、父上に母上までどうしてここに?」
「それはこっちのセリフだ。お前が目覚めた直後に王宮から行方をくらましたんだ、どれだけ心配したか(ニヤッ)」
「そのニヤケ顔で言われても信じませんよ」
「なんだ、小指の先くらいは心配したぞ。お前が目覚めた際にセレスティーヌ嬢に会いに行こうとしていたのは聞いていたからな。そして、病み上がりの身体で王宮を抜け出すくらいだ。これは一世一代の告白をしに行ったと見ていいだろう。こんな面白いこと、見逃すはずがないだろ」
「このっ」
アル様は拳を握り怒りに耐えてる。
「今日は祝杯よぉ!アルが両思いになった記念よぉ!」
「ロベルト!お前は息子にどういう教育をしてるんだ!?嫁入り前の娘の唇を奪おうとするなんて!」
「もうエドったらキスくらい良いじゃない」
「そうだ、そうだ。むしろ良くぞ可愛い義娘を手に入れてくれたと褒めたいくらいだ」
「「はぁー」」
盛り上がる両親を尻目にアル様と同時に溜息をつく。
これからもこうやって揶揄われたり、面白がられるのね。
やっとやっと両思いです。
まだクリスティーヌのこととかもあるので続きます。
だらだら長い小説ですが出来れば最後までお付き合い下さい。




