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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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目覚め-アルベルトside-

アルベルトside



「「セティー!/マリー!」」


それは突然だった。

ダミアンと共に階段の踊り場でセティーが来るのを待っているとセティーが階段から突き落とされるのが見えた。


危ない!

そう思うよりも体が先に動いていた。


ダミアンもマリエット嬢を助けに向かっていた。


何とかセティーを受け止める事が出来たが、勢いを殺す事が出来なかった。


「クッ!!」


掴む所もない。

このままでは2人とも落ちる!

セティーに傷一つ付けてたまるものか!



全身が痛む。

特に頭部がズキズキと痛む。

ダメ……だ。

意…識が…。


「アル!セティー!無事か!?」


シャルの叫び声が遠く聞こえた気がしたが私はそこで意識を失った。





--------------------


「脈、呼吸共に問題ありません。頭部の外傷も幸いにも浅く既に止血が済み、縫うほどではありません。時期に目を覚ますでしょう」


ん……。

この声は…。

医務官長か。


「そうか、ご苦労であった。下がってよい」

「アル…。良かった…」


父上、母上。

心配を掛けてしまったな。

そうか、私は助かったのだな。


まだ全身が痛み目が開けられないが頭部にあった痛みが無くなっていた。


セティーは?

セティーはどうなったんだ!?


「セティーちゃんも無事で良かったわ。アルが助けたお陰よ。アル、偉かったわね」

「全く。目が覚めたら王として小言を言わねばならんが、ここでは良いだろう。良くぞ愛する者を護った。お前も強くなったものだ」


母上、父上。

そうか。

セティーは無事か。

良かった。


安心したからか。

体の力が抜け意識が遠のいていくのを感じた。


どれくらいの時間がたったのだろうか。

まだ目が開けられそうにない。

だが皆が慌てている声は聞こえている。


私が目を覚まさずにいるせいだな。

申し訳ないな。

皆んな心配するな。

私なら大丈夫だ。


「そんな!アル様が目を覚まされていないなんて!」

「数時間で目が覚めるとの見立てでしたが依然目を覚まされる気配はありません。幸い呼吸や脈は正常を保っておりますが、このままの状態ではいずれ衰弱してしまうかもしれません」

「そんな!?何とかなりませんか!?」

「手は尽くしております。王宮の医務官が総出で治療にあたり、知恵を絞っております」


この声はセティー。

思ったより元気そうだ。

良かった。


セティーの顔が見たいというのに目を開ける事が出来ない。



「アル様……」

私を呼ぶセティーの声が酷く震えている。


「私が1人で落ちれば良かったのよ!そうすればアル様がこんな事には!」


セティーの悲痛な声が聞こえ、シャル達がセティーを励ましているのがわかる。


「ヒック…。どうして…」


しばらくするとセティーの泣き声が聞こえ、握られた手は震えていた。


セティー。

もう二度と泣かせはしないと誓ったというのに、泣かせてしまったな。

泣かないでくれ。

セティーが泣いていると私も悲しい。



「こんなに好きなのに…。やっぱりそばに居てはいけなかったのね……」

「アル様…」


……は?

好き?

セティーが私の事が?


「アル様の笑った顔が好き。素の飾らない笑顔はもちろん、王族としての笑顔も。王子の仮面をつけたお顔もアル様が励んで来た証だから好き。国のために努力し続けて、キラキラと目を輝かせたアル様のすぐそばで支えていきたい。剣を握る姿も陛下や王妃様に揶揄われて困った顔もくすぐったそうな顔をする所も私を怒る顔も全部好き。ずっとずっと前から好きなの」


セティー。

こんなにも私の事を好いてくれているなんて。

目を覚まして、抱きしめて、私も好きだと伝えたい。


「こんなに好きで、好きで仕方ないのに。貴方のそばに居たいだけなのに…。」


心配するな。

すぐに起きてセティーを安心させるから。


「そうよ!私さえ居なければシナオリは元通りよ!アル様、今までありがとう…私は幸せだったわ。ただ一つ、貴方を好きという気持ちを持ち続けることを許して…。さようなら、どうかお幸せに。大丈夫、貴方は孤独な王子ではないわ。皆んながそばに居てくれる」


セティーは突然の別れの言葉を言い、私から離れようとしていた。


待て!

待ってくれ!

私だってセティーを失いたくない!


握れた手は離され、セティーが離れていく気配を感じた。


クソッ

起きろ! 動け!

今起きなければ二度とセティーに会えない気がする。


「セ…ティ-…ぃ…い…くな」


何とか目を開けセティーに言葉を伝えた。

薄っすら開けた目に映ったのは、目を涙で潤ませたセティーの泣き顔だった。


「アル様!!意識が戻ったのね!!今医師を!!」

「いく…な…。セ…ティー。あ…い…して…る…だ。だ…から。いく…な」

「!?いっ行かないわ!何処にも行かないから!」


自分では何を言ったのかわからないがセティーの何処にも行かないという言葉に安心した。





「アルベルト様!!」

「殿下!殿下がお目覚めになられたぞ!」

「王子様!御気分は如何ですか?」


目が覚めたら

医務官達に囲まれていた。


「皆心配を掛けたな。私は大丈夫だ」

私は医務官にそう答え辺りを見渡す。


セティーが居ない…。


「セティーは。マルヴィン公爵令嬢はどうした?」

「マルヴィン公爵令嬢でしたら公爵家の邸宅に居られるでしょう。幸い令嬢は大きな怪我はありません。殿下が目覚められるまでお側にと仰ってましたが、殿下のことで酷く取り乱しておりましたから邸宅にお戻り頂きました」

「そうか。すぐにマルヴィン公爵邸に行きたいのだが」


すぐにセティーに会いたい。

セティーの顔を見てこの目で無事を確認したい。

そして、あの愛の告白が夢ではないことを。

いや、たとえ夢であってももう自分の気持ちを抑えることは出来ない。

セレスティーヌに思いを伝えたい。


「なっなりません!殿下は目覚められたばかりですよ!?それにもうじき夜です。マルヴィン公爵令嬢は明日も登城されますから今は休んで下さい」


外は既に月が出ている。

今から着替えて公爵邸に向うとしたら遅くなってしまう。

しかし、どうしても一目会いたい。


「わかった。お前達は下がってくれ。私はまた休むとする」

「わかりました。 何かあればお呼び下さい」


医務官に護衛官を下がらせ私はいそいそと着替えをする。

外套を羽織った所で一呼吸つく。


うん、思ったより身体は動くな。

さてと、抜け出すとするか。

護衛官達は下がらせた所で近くにいるだろ。

仕方ない。

久々にこの道を使うとするか。


部屋の照明をズラすとそばにあるチェストが動く。

秘密の抜け道だ。

ここから城の門より外へ行ける。


こうして私は城を抜け出し、公爵邸へ向かった。

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