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悪役令嬢だけど両思いになりたい  作者: 月乃
第3章
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目覚め

誤字報告ありがとうございます。

「セティー様が用意して下さった記録のおかげで接近禁止令が取れましたわ!これで彼女が学園に残っても安心です!」

「いえいえ大したことではありませんよ」

「それでも私が調べて残していた記録だけでは足りませんでしたから、助かりました」

「ふふ。 元々困ったら協力する約束でしたもの。マリー様こそ男子生徒達の家に釘を指して頂いたようでありがとうございます」


は!?

何それ。

ダン様に近付くのを邪魔した黒幕はセレスティーヌだったの?

しかもマリエットも今回の裁判に関わってたなんて!

セレスティーヌさえいなければ、接近禁止になんてされなかったのよ。

そうよ。

そもそもセレスティーヌ達が居なければこんな騒ぎにならなかったのよ。


慰謝料の交渉してたけど、陰でルビーを笑ってたやつらと一緒よ。

王子の婚約者で公爵令嬢なんて生まれてからずっと恵まれてた女。

マリエットもダン様の隣に当然のようにいる女。

こいつだって生まれが良かっただけよ。


〝婚約者の立場を降りるようになれば良いのですわ。たとえば怪我をして療養が必要になることでしょうか〟

クリス姉様との話が頭によぎる。


そうよ。

これは当然の報いよ!





身体が宙に投げ出され階段の下へと向かって落ちていく。

突然の事で声が出せない。


「キャアー!」

声でマリー様も一緒に落ちているのだと気づく。


「「セティー!/マリー!」」


アル様とダミアン様の声が聞こえた。

走馬灯のように時間がゆっくりになっている感覚になる。


ああそういばゲームのセレスティーヌもこうやってヒロインを階段から突き落としたなぁ。


まさか自分が落ちる側になるなんて。

マリー様は私に巻き込まれてしまったのね。

ごめんなさい。


アル様が私の真下に居るのが見える。


ダメよ!

アル様避けて!



セレスティーヌとマリエットは階段の踊り場に落ちそうな状況で、アルベルトとダミアンは婚約者を受け止めようとしている。


ドサッ!

「「クッ!!」」


ダミアンはマリエットを受け止める。

受け止めた衝撃により後ろに倒れそうになる所を階段の手すりを掴み耐えた。


ゴロゴロ!

ドサッ!!


アルベルトはセレスティーヌを受け止めるが掴む物がなく、衝撃を受け止めきれず後ろへふらつく。

そのままアルベルトとセレスティーヌは一緒に階段を転げ落ちた。



「うぅ…」

痛い……

痛い… 生きてる…。


「アル!セティー!無事か!?」

「アル様!セティー!」

「皆さん!ご無事ですか!?」


「俺とマリーは無事だ」

「セティー様は!?」


皆んなの叫び声が聞こえる。

良かった。

マリー様は無事だったのね。


「大人しくしろ!」

「嫌よ!離して!こいつらが悪いのよ!全部こいつらのせいよ!」


ヴィクトルの怒鳴り声がする。

ルビーさん捕まったのね。


「アル!セティー!しっかりしろ!」

「アル様!セティー!目を開けて!」

「セティーさん!セティーさん!」

「リア!あんまり動かさない方がいい!」


あぁ皆んなに心配をかけてるわ。

全身が痛いけど大丈夫よ。

あれ?

アル様は?

確か一緒に落ちて…。


「うぅ、アル様…」

「セティー!良かった!気がついた!」

「今医療隊が来るわ!」


目が覚めると皆んなが泣き顔になって私の周りに居た。

やっぱりアル様が居ない。


「アル様は?」

「アルは……」

シャル様が辛そう表情をする。

シャル様の答えを聞く前に横を見るとアル様が居た。


いつもの綺麗なお顔が見えたがすぐに異変に気づく。


えっ血?

嘘。


頭から血を流して横たわっているアル様が居た


「アル様…」

アル様に名前を呼んで触れるが反応がない。


嘘。

そんな。


「アル様!?アル様!?」

「セティー!落ち着け!」

「気を失ってるだけよ!」

「血を流してるけど深い傷ではないし、息もちゃんとあるから!」


無理に体を起こして取り乱す私を皆んなが止める。



そうしているうちに医療隊が到着してアル様を王宮の医療室へ連れて行った。

私も診察のため連れて行かれた。





-------------

医師の診察を終え、私は幸いにも軽い打撲で骨や筋肉に異常は無く、鎮痛剤を飲めば動けるようになるとのことだった。


アル様も頭の傷は浅くすぐに止血出来て幸い傷跡も残らないだろうと言われていた。

身体も特に異常はないからすぐに目を覚ますだろうって。


駆けつけたお兄様やお父様に支えられて自分とアル様の診断を聞いてホッとした。


寮には帰らずしばらく家に帰ることになった。

家に着くとレオ君を抱いたお母様に迎えられギュッと抱きしめられ安心したのかポロポロと泣いてしまった。


「今日はこのままお休み。殿下もすぐに目を覚ますだろうから明日王宮に行けば会えるから安心して寝なさい」


軽く食事を取った後お父様にそう言われて私は休むことにした。


大丈夫だよね。

明日になればアル様に会えるよね。

会ったら謝って、助けてくれたお礼が言いたい。


そんな事を考えながら眠りについた。





「アル様……」

呼び掛けても返事がない。


朝目が覚めて真っ先に王宮に来た。

王宮に来た私に告げられたのは昨晩考えていた状況と真逆だった。


アル様が目を覚さない。

医師達も何が原因かわからない。

ただ、このまま目覚めなければ食事を取る事が出来ず、衰弱してしまう。

そんな医師達の話を聞き目の前が暗くなる。


あぁ!

どうしてアル様が!?


「私が1人で落ちれば良かったのよ!そうすればアル様がこんな事には!」

「セティーのせいではない!」

「そうよ!セティーは悪くないわ!」

「そうだよ!アル様はきっと目を覚さすよ!」

「セティーさん信じましょう!」


取り乱す私を皆んな励ましてくれる。

だけど私の落ち着く事が出来ない。


「しばらくそっとしておいた方がいい」


しばらくしてようやく泣き止んだ私を見てシャル様が皆んなを連れて部屋を出た。


私はアル様の近くに座り眠るアル様を眺める。



アル様。

どうしてこうなってしまったの?

階段落ちだって本当はセレスティーヌがヒロインを突き落とすはずなのに。

階段の踊り場まで突き落としてそこを攻略対象者が助けるのよ。

アル様ルートとお兄様ルートではそうだったもの。

ルビーさんは牢屋に入っている。

間接的とはいえ王太子を害してしまったから、極刑が下されるかもしれない状況みたい。

だけど今の私にとって、ルビーさんの処罰なんてどうでもいいことのように思える。

アル様さえ無事なら。


私がちゃんと悪役をしなかったからこんな事になってしまったの?

私さえちゃんと悪役をしていればルビーさんのような人も出て来なかったし、アル様だってこんな事には…。


「ヒック…。どうして…」

せっかく泣き止んだのに、また泣き始めてしまった。


「こんなに好きなのに…。やっぱりそばに居てはいけなかったのね……」

「アル様…」

「……。(ピクッ)」

呼び掛けても返事はない。


「こんなに好きで好きで仕方ないのに。貴方のそばに居たいだけなのに…。」

「……。(ピクッ)」

「アル様、貴方に嫌われることも怖いけど、貴方を失うのはもっと怖い」

「ぅ…。」


アル様が元気になるなら何だってするわ。

それこそ二度と会えなくてもいい。


「そうよ!私さえ居なければシナオリは元通りよ!アル様、今までありがとう…私は幸せだったわ。ただ一つ、貴方を好きという気持ちを持ち続けることを許して…。さようなら、どうかお幸せに。大丈夫、貴方は孤独な王子ではないわ。皆んながそばに居てくれる」


私は部屋から出ようとアル様のそばから立ち上る。


とりあえずお母様の実家である辺境伯領へ行ってそこから隣国への国境を越えよう。

大丈夫。

今まで学んだことを使えば何とか生活出来るはず。


歩き始めようとした所でドレスが何かに引っかかっている気がした。


 

「セ…ティ-…」

「え?」

「ぃ…い…くな」


わずかに聞こえるアル様の声。

引っ掛かりを感じたドレスを見るとアル様の指でドレスを掴まれていた。


「っ!」

思わず息を呑む。

アル様の方へ向き帰ると薄っすらと目を開けているアル様の顔が見えた。


「アル様!!意識が戻ったのね!!今医師を!!」

「いく…な」


アル様は再び私のドレスを握り辛そうに声を上げる。

開けられた瞳もとても辛そう。


「セ…ティー。あ…い…して…る…だ。だ…から。いく…な」

「!?いっ行かないわ!何処にも行かないから!」

私はドレスを握るアル様の手に自分の手を重ねて安心させる。


私の返事に安心したのかアル様の手がドレスから離れ、私は医師を呼ぶ為に扉前の護衛官の元に走る。


間も無くして医師が到着しアル様の意識が戻った事を確認された。


ホッとした所でさっきアル様に言われた事を思い出す。


〝セ…ティー。

あ…い…して…る…だ。

だ…から。いく…な〟


愛してるんだ。だから行くな。


愛してる!?

えっ!えっ!?


医師がアル様を診察している横でオロオロしはじめた私を見て、皆んなが私が体調を崩したのだと思って心配し始めた。


ちっ違うのよ!

体調は悪くないわ!


医師からアル様が寝たが数時間で起きるだろうと報告を受け、起きるまでそばに居ると申し出たけど、あまりの挙動不審さに休むように部屋を追い出されてしまった。

ついに100部目になりました。

次はアルベルト視点の話にしようと思います。

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