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そうだ、喪女になろう

作者: 虹乃夢見

最近何も書く気が起きない、それは非常にマズイと言う訳でリハビリも兼ねて筆を執ってみました。

それと尻切れトンボ気味なのはちょっと見逃して下さい。

「――はぁ、憂鬱」


そろそろ入学式(高校デビュー)の時期。

何時も以上にブルーな気分になる。

目が覚めて開口一番、溜息を吐いた。


「おはよ、お兄ちゃ…何でも無いや」


「んー…」


自室のドアを開けたら同時に妹も出て来た。

まぁ何時もの光景だけど双子の兄妹だからなのかね?

歯磨き、朝食、自室に戻って着替え。

何時もの代わり映えの無いシンクロ率で動く僕と妹。

ふぅ、と一息吐いた所でPCに向かい、電源を入れた。


「さて、やっちゃりましょーか。でゅふっ」


目には隈、ロングな黒髪はちょいボサ気味で、顔はにやけたヤンデレ美少女気味。

その画面には――――ゲームに登場するイケメン達の画像で一杯だった。


◇ ◇ ◇


平穏無事にに学生生活を送りたい。

それが目下、一番の目標である。

でも其処には最大の障害が目の前に立つ。

なので卒業と共に温めて来た作戦を実行する事にした。

その名も『JK喪女っぽくしてカースト最下位でのんびりまったり学園生活を送っちゃるぜ作戦』

実を言うと中学時代は色々酷かったので卒業と同時、親の転勤に合わせてここぞとばかりにそれを決行する事にした。


――さて、今日は入学式(高校デビュー)の日。

と言う訳で若干陰鬱(ブルー)な気分になりながらも入学式を終えた僕は流れのまま、クラス内での自己紹介をする形となったのであった。


「…白姫小雪しらひめこゆき。あ、イケメンは二次元にしかキョーミ無いんで」


言っちゃった。

ふぅ、でもこれで良し。

その後は気味悪い目で周りは見る様になった。

よしよし、作戦は今のところ順調っと。

体育の時間とかもそれっぽくトイレとか、人目の着かない所で着替えたりしてる。

それから帰宅部を希望したかったけど流石に部活は絶対何処かに所属して居なければならないので、アニ研同好会みたいな所に幽霊として所属して貰う事にした(偶に顔を出す程度)。

う~ん、でもちょっと効き過ぎたみたいなのか偶にちょっとしたイジメに遭ってます。

上履きの中に画鋲が仕込まれてたりとか、無視シカトされたり、机の下に脅迫状?みたいなものが仕込まれてたり|(文章の内容的にも多分女子辺りだろう)。


◇ ◇ ◇


好調な出だしで早一ヶ月。

球技大会。

運動神経は悪くないけど、喪女設定なので辺に活躍するとイジメがヒートアップしかねない。

なので敢えて控え目に動いた結果手加減が意外とポンコツレベルだった事が解った。

流石に今の今まで全力疾走に慣れてたこの身体を恨めしく思った。

因みに出た種目はバレーボールとバドミントン、卓球。

但し卓球だけは全力を出した結果最後まで勝ち残ってしまい、更に優勝してしまったと言う。

いや、どうしてこうなったんだろう。

その結果、イジメがちょこっとキツ目になったのは言うまでも無い。

無視できるレベルだけど。


◇ ◇ ◇


さて、期末試験を終えて夏休み。

喪女なんで誰も(妹さえ)助けてはくれないけれども元々そう言う所はきっちり出来るタイプなので挑んだ結果中間より上がってベスト10にランクインしてしまった。

いや、やらなきゃ生き残れないならやるしか無いじゃないか。

喪女だってこれ位朝飯前だよ?

勉強も乙ゲーと同じでちゃんとしたロジックで攻略できる。

ならばそのやるしかあるまいよ、と気合入れた結果がこれです。

因みに妹は一五〇位くらいだったそうな。

そんな訳で妹からも嫌われてしまった。

それは兎も角、海を楽しまなければ。

今の僕の装備はスク水…では無くビキニ。

以外だと思われるがいかんせんボッチなもんで違和感の無い様、パーカーと併せる様な形になった。

知人が居ないので通常バージョンであるが、今更普通の男子に戻れる気がしないのでこんな感じになってしまったのは言うまでも無い。


ひとしきり遊んだ後はホテルにに突いて早々自前のノートPCを開く。

さて、第二ラウンドの開始じゃい。

と言う訳で一晩中新作の乙ゲーの攻略を開始した。

当然寝落ちして、漸く起きた時には一二時回ってたという。


◇ ◇ ◇


あたしのお兄ちゃんは最近おかしい。

先ず、女の子っぽくなった。

っというか元々そんな感じはしてたな―って思ってたけど下手な女装より似合っていくもんだから吃驚して思わず「キモい」と言ってしまった。

それだけには留まらず、何故かヤンデレっぽい見た目に…何て事!

おまけに気持ち悪い笑い声まで発して…本格的にキモくなっちゃった。

見た目が美少女な所為でマジ台無し!

…まぁ訊けば演技らしい。

と言うか喪女って何!?

それやる必要性とか有るの!?

――え、男子に絡まれない様にするため?

マジ意気地無しじゃん!

何だよ、度胸ぐらい見せろや!

「度胸? なにそれ美味しいの? それより推しメン攻略中だから手が離せない」ってそれマジで言ってんの!?

て言うか推しメンって何!?

――は? 乙女ゲーム? しかもその新作あたしまだ未プレイぃっ!!

とまぁ入学前に壊れた。


どうやらお兄ちゃんはカースト最下位の底辺らしくイジメられているらしい。

と言うのもその光景をよく見掛けるから。

多分あれはB組の”古谷奈緒美ふるやなおみ”の取り巻きだろう。

お兄ちゃんの机とかに色々悪さしてる。

勿論逆らえば一般人の私とて無事じゃ済まない。

最悪お父さんとお母さんの明日が決まってしまう可能性が高い。

無視し続けた結果、無意識にお兄ちゃんを避ける癖が付いちゃった。

も~、最っ悪!


そんなうっ屈な日々を過ごして早三ヶ月色々あってプチ絶縁状態の様な感じになってしまったお兄ちゃんは独りで海へ行くみたいだ。

と言うかそんな軍資金どうやって算出したのって驚いて訊いたらどうやらバイトをしてたらしい。

しかもシックな感じの喫茶店で。

でも買ってきたものが問題だった。

ビキニ…そう、ビキニ――女物。

気持ち悪さが増すかと思いきや…うわぁ、それ程筋肉が付いていないせいで逆に似合ってるし。

そもそもお兄ちゃんってぺたんぬ以外は、私に似て意外とプロポーションが良くて可愛い。

変態が通り過ぎちゃった、もう泣きたい、泣いても良いよね?

帰って来た時、中学卒業当時の様な何時ものお兄ちゃんだった。

でもそれまで男の子だったお兄ちゃんの影がぷちんと切れて女の子になっちゃった。

昔のカッコいいお兄ちゃんはもう居ない…おのれ高校


◇ ◇ ◇


夏休みが終わって運動会。

喪女にはキツい。

特に親の目があるからこそ心臓がマッハで何時も以上にポンコツ(手加減モード)を演じる羽目になった。

学園祭。

メイド喫茶にされた恨みで投げやりになった結果ドSヤンデレになり掛けた。

んで普段イジメて来る女子も、この日ばかりは味方になった、なってくれた。

いや、この日を境に少なくともクラスの女子からのイジメが撲滅した。

そりゃ男子もメイド服を切る破目になった事が原因。

と言うか今更ながら僕が男子生徒として学校に登校しているという事実にクラスの全員(担任教師除く)が驚いた訳だけど。

其処からが地獄だった。

お客様対応で喪女を演じ辛くなった。

そのせいで涙目になってやけくそ対応したら逆に鷲掴みになった男性のお客さんが続出して休みもロクにとる事が出来ないままフル対応、マジで死ぬかと思った。

営業が終わって外部の人が居なくなって緊張が解けた途端泣き崩れてしまったのがトドメなのか、クラスの全員が慰めてきてくれたのは僕にとっての救いだった。

兎も角、或る程度事情を話して今まで敢えて根暗なボッチ喪女を演じて来た事を打ち明けた。

勿論皆受け入れてくれたので作戦は終了、路線を修正して男の娘としての高校生活が幕開けたのであった、まる。

そうそう、妹とも仲を取り戻せた。

兎に角ほっと一息、良かった良かった。


◇ ◇ ◇


学園祭の一件からお兄ちゃんが根暗キャラを止める様になった。

クラスの仲も目に見えて良好になったし、他クラスや学年のイジメを受けなくなった。

それでも昔のイケメンなお兄ちゃんには戻れないみたい。

何だか男の娘として生きる羽目になってしまい、それを友達に打ち明けた所、いっその事お姉ちゃんとして付き合ったらと諦められてしまった。


雪が降ってきた。

今日はホワイトクリスマス。

それにしても色々あったなぁ。

お姉ちゃんとなり果てたお兄ちゃんの元に突然中学時代に一目惚れした女子が現れた時は卒倒しかけた。

いや、あのおにいんちゃんに、だよ!?

気が付かなかったけど生徒会に所属する先輩だったってのに驚く他無かった。

訊けばお兄ちゃん、演劇部の部長に捕まって、所用で一時期離れた主人公役の生徒の代役として公演に臨ませられたらしい。

その時メインヒロインの役をやっていたのがその先輩らしい。

お兄ちゃん何やってるの、なんてこれは流石に突っ込めない。

そりゃ巻き込まれた挙句にぶっつけ本番の舞台の壇上に立たされたんだもの。

あの時珍しく遅い時間に帰って来た時憔悴してたし、目も死んでた。

ごめんね、もう少し労わってあげれば良かった。


――閑話休題それはともかく


突然の押し掛けだったものだったから、お兄ちゃんは止む無く嘗てのお兄ちゃんと共に先輩を敢えてばっさり拒絶。

それから今の自分となら友達として付き合って欲しいと願って、改めて縁を結んだみたいで、これはこれで一件落着なのかなぁ。


◇ ◇ ◇


説明も今更過ぎるけど、今在籍している学校は地方だけれども古巣とほぼ同等の、格式の高いお坊ちゃまお嬢様が通う学校である。

二年生に進級した僕を待ち構えてたのはこの学校で初めての社交界デビューという苦痛過ぎる行事だった。

何しろ男子生徒では異例のレディスドレス。

この時ばかりは他クラスからの絡みの所為で心労で卒倒しかねない事態に追い込まれ、その後の卒業生の婚約破棄騒動に巻き込まれた腹いせにその怒りをぶつけまくり、兎に角吐血程度じゃ済まない程心身ともにボロボロになり果てた。

癒しとばかりにアニ研に入り浸り、ひたすら乙女ゲームについての談義で花を咲かせた。


三年生。

受験生に入り、僕は再び古巣である東京の麗志区の奉学園付属の大学に進級する趣旨を彼女――氷室樹里亞ひむろジュリア先輩――に伝えた。

既に彼女はそこに在籍しているので追っかける風な感じになった。

とはいってもあの鬼の様な試験を突破して合格の切符をもぎ取った時点で確定しており、再び雪姫真白ゆきひめましろとして改めてあの学園へ戻る様な不思議な感じに入り浸りながら空を見上げた。

学校最後の社交パーティーで三年生徒会会長兼主席になっていた僕は次代の生徒会会長の引き継ぎの際、入学したてのあの頃を告白した。

無論、中学時代のとある事情もまるっと含めて。


古巣に戻った僕を待ち構えていたのは中学時代同じ学年のイケメン四天王――妹尾大樹せのおだいき京橋雅きょうばしみやび蒲生征周がもうせいしゅう、パウロ=芳樹よしき――だった。

凍りついた肝が砕け散るかと思ったが、それは向こうも同じだったらしい。

何しろ幻の五人目がよもや高校デビューの際に男の娘になろうとは思ってもみなかったらしい、との事。

恐怖心から彼らを振り解き樹里亞先輩に泣き付いたのは良い思い出。


◇ ◇ ◇


――今思えばあれは偶然だった。

それでもあの偶然の共演以来、私の心はちりちりと燻り続けていった。

少女の様な、幼い顔立ちながら凛とした出で立ちは、他の殿方には全くないものだった。

”ハンサムガール”。

イメージとしてはそんなところだろうか。

演技ではあった物の、彼の台詞に私は強く惹かれてしまったのだ。


高等部に進学するという選択肢を、捨て、別の地方の学校へ。

もうあの頃からお見合い写真だのが親からもたらされたからだ。

お見合いも断った。

しかしこのままではいけないと、私は療養のために学園を離れたいと懇願した結果念願叶って地方の、古巣にも劣らない学校へと進路を進める事が出来た。


それから一年後、奇跡は降りた。

――雪姫真白ゆきひめましろ

あの公演以降逃げる様に舞台からフェードアウトしてしまった彼がこの学校へとやってきた。

しかし、初めはその子が彼だと解らなかった。

何しろ根暗と呼ばれる少女に見事に扮していたからだ。

名前も白姫小雪と名を変えていた事もあって、学園祭の時まで見事に気付く事が出来なかった。

以降、私の心は再び彼の事で満たされてしまった。

そしてあの時、私は彼を呼びだした。

目の前に移るその美少女は先の学園祭の一件のお陰か明るさを取り戻していた。

そんな彼に思いを思いっきりぶつけた。

結果、拒絶、私の中の何かが砕け散った瞬間だった。

それでも絶望を通り越して虚ろな私を繋ぎとめたのは彼だった。

嘗ての彼に二度と戻れない、それでもまた彼と共に歩めるのなら――


あれから二年、そろそろ真白ちゃんがこの古巣に戻ってくる。

一足先に戻った私は彼を迎える為に生徒会室へ待機していた。

もう直ぐ来るだろうと丁度玄関口に移動するやいなや真白ちゃんが涙目になりながら急に飛び込んで来た。

どうやら噂を聞き付けたあの四人が門前に立っていたので怖くなって逃げ出したのだとか。

全く、仕方ない。


「貴様等…私の真白ちゃんを泣かせるとは、奴等良い度胸をしてくれるではないか」


その罪、購って貰うぞ。

――――覚悟は良いな?

どうでも良いですがイケメンキャラの名前を考えるのに苦労しました。


補足としてはイケメンズは兎も角、終ぞ名前が出てこなかった妹ちゃん。

ちゃんとありますとも。

雪姫まひろ(真尋)

兄、ましろちゃんとは一字違いです。

因みに演劇部で所用で外れたキャラは妹尾大樹で父親が俳優で、そんな父親に憧れて演劇部に入った様です。

何に期待していたかは不明ですが所用は遅刻で、偶然通り掛かった際に発見した怪我人を救急車で運ばれるまで付き添ってたからだそうです。


2018.6/7 少しだけ文章を修正、追加しました。

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