天狼、魔王を家に招く
泥まみれで最下層のひとつ上、青銅のエルフ達の工房区画に戻ってくる。鉱山区画で採掘したボーキサイトと珪石を運んでくれている33階層の非戦闘員の人狼族も一緒だ。
つまり俺はもう一度、転移ゲートを開かねばならないと?
結構な負担だ……
「あのぅ、魔王様、これは何処へ運べばよいのでしょうか?」
「あ~うん、ちょっと確認する。おいッ、リゼ!!」
「ん、どうしたのじゃ、レオン?さては妾にかまってほしいのじゃな!愛い奴め♪」
「いや、この荷台のボーキサイトと珪石は何処に運べばいいんだ?」
「おぉ、すまなかったのじゃ…… 妾としたことが鉱石を得た事で、つい浮かれておったのじゃ。人狼族の皆、荷台ごと作業場に搬入してほしいのじゃ」
「承りました、リーゼロッテ様」
「うむ、手伝ってくれてありがとうなのじゃッ!」
「いえ、先日、我らの居住区に建てて頂いた水車小屋のお礼ですよ。おかげで粉挽きが楽になったと女房も喜んでいました」
「そう言ってもらえると嬉しいのぅ、やはり製作物は使われてこそなのじゃからの」
リーゼロッテの背後で聞き耳を立てていた青銅のエルフ達がうんうんと頷いている。
「では、運ばせて頂きますね。作業場はどちらになりますか?」
「ん、妾についてくるのじゃッ!」
人狼達は荷台を押しながら、リーゼロッテに続いて中央工房の中へと消えていく。
そして、おれはボッチになった。
まぁ、人狼達を地下33階層に送り返してやる仕事が残っているから帰るわけにもいかないか……
そんな事を考えていると、訓練場の方から向かってくる人影が見える。
あれはヴィレダとベルベアか?
「イチロー、うちの皆がこっちに来てるって聞いたけど?」
「…… さっき…… 聞いた」
うぉ、ベルベアが喋っただとッ!?
俺が密かに動揺していると、きょろきょろとヴィレダが辺りを見回す。
ちょうどその時、工房から人狼達が戻ってきた。
「おぉ、ヴィレダ様!」
「族長!それにベルベア殿も」
彼らはヴィレダとベルベアの下に集まる。
「皆、どうして工房区画に?」
「……(コクッ)」
「青銅のエルフの方々に頼まれて鉱石を運んできたのですよ」
「すまないヴィレダ、人狼達に手伝ってもらった」
「別にいいよ、青銅のエルフには世話になってるからね」
彼女はセーフティにしてあるAK-46を掲げる。
最初に奪った弾丸はとっくに無くなっているので、今の弾丸は全て中央工房産の雷酸水銀を点火薬として、黒色火薬を燃焼させる形式のものになっている。
「皆、ご苦労様ッ!ありがとう」
ヴィレダが同族達を労う。
「さて、そろそろ転移ゲートを開くか……」
俺は虚空に向けて手を翳す。
「あ、イチロー、あたし達も人狼の森に帰るよ。いい機会だしね、そうだ!イチロー、家に泊っていきなよ」
「……(コクッ)」
そうして、流れのままに俺も地下33階層に一緒に行き、ヴィレダの家で一泊をする事になった。
読んでくださる皆様には本当に感謝です!!
ふと気づけば評価やブクマを頂けていた時とか、すごく嬉しいです!
拙い作品ではありますが、頑張って書いて行こうという励みになります。




