魔王、戦いの勝敗を決する
「構え、撃てーッ!」
前進するミノタウロスの重装歩兵を十分に引きつけたところで、城壁からその後ろ側に向けて矢が放たれる。それはミノタウロス兵の頭越しに軽装の人狼兵を狙ったものだった。
「悉くの悪意を吹き飛ばせ、旋風結界ッ!!」
人狼兵に随伴するグレイド達、魔人兵が複数人で組み上げた広域結界を人狼兵の頭上に展開する。そこに大きな風の渦が生じて、降り注ぐ弓矢を飲み込んでいった。
その渦を避けるように高く飛翔した吸血鬼の飛兵2小隊がAK‐46を単射モードで撃ちながら、それぞれ左右の城壁を目指して降下していく。
「グゥッ!」
「くそ、化け物めッ!!」
上空からの銃撃に対して、城壁の王国軍弓兵は損害を受けつつも弓矢の狙いを定めて応戦する。
攻撃と防御の切り替えが間に合わず、その矢を受けた吸血鬼飛兵隊の数名が負傷して高度を下げていく。中には翼を撃ち抜かれて落下していく者や、運悪く胸を貫かれて落命する者もいた。
「……… やってくれますわねッ!各自、結界を展開ッ!このまま城壁に降下し、制圧しますッ!!」
同時に地上でも、吹き飛んだ城門まで近接したミノタウロス兵が屈みこみ、その背を踏み越えて城塞内部へ向けて人狼突撃兵隊が動き出す。
「突入と同時に城門周辺を制圧する!征くよ、皆ッ!!」
「……!(コクッ)」
ヴィレダを中心に人狼兵達が駆け出そうとしたその時、不意に虹色の結界がその眼前に展開する。
「わぷッ、むぐぅ」
彼女の突撃は聖女ミリアの柔らかい結界に受け止められる。
「ッ、皆!銃短剣を使うよッ!抜剣ッ!!」
人狼兵達はそれぞれに腰の鞘から銃短剣を引き抜き、眼前の結界に突き刺していく。それはやはり“緩衝”の性質を持った聖女の結界に受け止められるが、人狼達は諦めない。
結界に銃短剣を突き刺したまま、グリップ部分に付いている発射ボタンの安全カバーを器用に親指で外して、ボタンを押し込む。
ドオンッという発射音と共に大口径の弾丸が結界に突き刺さる。
同じようにミリアの結界に次々と銃短剣が付き刺され、銃撃が行われた。
「ッ、だめ……維持できないッ!」
乾いた音を立てて彼女の結界は壊されてしまう。
「聖女様、お下がりくださいッ!」
王国軍の盾持ち歩兵がミリアを下がらせて前面にでる。
「……邪魔」
そんな彼らにヴィレダ指揮下の人狼兵達はAK‐46の銃弾を浴びせていく。
「ぐッ!!」
銃撃により、歩兵の数名が倒れるが、すぐさまに柔らかい結界が展開して銃弾を受け止める。
「貴方達の盾では彼らの攻撃は受け止められませんッ!下がりましょう」
ミリアは本来、転移ゲートによる矢の雨で魔族の陣形を崩した後に突撃させるはずだった王国兵の撤退を支援する。
ちょうどその頃、城壁の戦闘も決着が付こうとしていた。
城壁の下に到着したミノタウロス兵が狙いを定めてガンランスによる射撃を行い、城壁の上からは吸血鬼の飛兵が滑空射撃をしてくる。
そこに展開していた弓兵隊は既に潰走を始めていた。
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