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魔王、会社設立を許可する

「シャーリーテンプルはありますか?」

「はい、ありますよ」


「それでお願いします」


シャーリーテンプルとは、レモン・ライム・ソーダを基礎にグレナデンシロップを加えたカクテルである。つまり、アルコールは入っていない。西洋の酒場で家族連れが子供にのませるアレである。


それに加えて鶏の唐揚げなどを頼んだ令嬢が一息つき、先に来ていた皆を見渡す。


「今日はよく集まってくれました。では、それぞれにお願いしていた事の進捗を伺わせてもらいます……」


「では、私から話させて頂きましょう」

「宜しく頼みますね、カシワラ」


主の微笑みを受けた柏原は革鞄から白封筒と何枚かの書類を取り出した。


「先日、お預かりしていた宝石と貴金属類ですが、ご指示通り森宮さんと協力して、複数回に分けて別々の店で換金しました。当面の活動資金980万円余りを獲得しています。今ここに、100万円ほどお持ちしておりますが、残額は自宅の金庫の中にあります」


「分かりました、資金繰りは全てカシワラに任せますので、引き続き換金をお願いします。モノの品質は保証できますからあまり問題とならないでしょうけど…… あまり、一定地域ばかりで偏らないようにお願いしますね。モリミヤ、カシワラの補助を引き続き頼みます」


コクリと頷く森宮にイリアは追加の宝石と貴金属類の入ったバッグを渡し、各自の活動資金と報酬は柏原から受け取るように言付ける。


「…… それと提案のあった合同会社設立ですが、魔王様から許可が下りました。全てカシワラに一任しますので、代表社員の登録も貴方にしておきなさい。確か、勤め先のIT企業は副業推奨でしたね?」


「はい、恐らく就業規則にはかからないかと。イリアさん、資本金はどれぐらいにしましょうか? 設立したばかりの会社ですと資本金そのものが信用力になりますので……」


「そうですね、魔王様は800万~1000万円ぐらいが望ましいと仰っておりました。事業目的は実際に商品開発を行う青銅のエルフ達と相談し、後日連絡します。この件に関しては皆にカシワラの補助を頼みますね」


各々頷いた眷族たちをイリアが満足そうに見遣り、他にも拠点とする物件の契約など必要な打ち合わせを進めて区切りが付いたところで、今まで黙っていた山之上が手を上げた。


「イリアちゃん、俺なにも仕事頼まれてないんだけど?」


「ヤマノウエは無職という利点がありますので、これから頼む事も多いでしょう。皆、昼は自分の仕事がありますからね…… 貴方の無職という個性を活かしてください」


「うわ~、褒められてる気がしねぇわ…… 無職は個性じゃないし!」


イリアとしては褒めたつもりなのに、結構凹んでいそうな山之上に対して小首を傾げ、扱いが難しいものだと思いつつも話題を移す。


そうして飲食と談笑を挟み、各々が交流を深めて多少の面識ができた頃合いで“チームイリア”の初会合はお開きとなる。


「さて、今日泊まるホテルを探さないといけませんね。帰還のゲートを開いてもらうのが明日の今頃ですから、一応2泊で入れておきましょうか…… さっさと用事を終わらせて、買い物を楽しみましょう♪」


月夜の下、軽い足取りで黒髪紅瞳の吸血令嬢は街の雑踏に消えていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かに無職の強みを活かせと言われても褒められてる気はしないねw イリアの下僕達は色々個性がありそうで面白そう(*゜▽゜*)
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