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天狼、ガンランスを気に入る

(おじ様が帰ってしまわれました……)


想い人を見送った後、私室に戻った吸血姫は昨夜の事を思い出して何やら身悶えてしまう。


「はぅ……」


吐息を吐き出した彼女が一人赤面していると、部屋の扉を叩く音が響いた。


「スカーレット様、イリアです。入って宜しいでしょうか?」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


慌てながらも顔をペタペタと触り、問題がない事を確認して心を落ち着け、澄ました態度で扉越しに言葉を紡ぐ。


「…… どうぞ、いらしてください」


「おはよう御座います、スカーレット様。昨日はあれからどうでしたか?」


いきなり核心を突かれて躊躇するも、背中を押してくれた友人をないがしろにする訳にはいかない。


「ん、貴女にはお礼を言わなければなりませんね。ありがとう御座います」


「いえいえ、さっきゼルギウス様にお礼を言われましたので、察しはついていました。おめでとう御座います」


「こほん…… それはさておき、お仕事の話もしなければなりませんね」


近しい者には筒抜けな状況を察した吸血姫が照れ隠しに咳払いをし、少々強引に話題を転換する。


「えっと、賃貸契約の話ですね。ヤスダもテラサキも昼は仕事がありますので、予定通りに午後に向こう側に赴きます。地球との時間差を考えれば夜頃かと……」


「因みに、連絡手段はどう確保しているのですか?」


自身の種族を纏める姫君の問い掛けに応じ、吸血令嬢は長方形の機械を懐から取り出してテーブルに置いた。


「これは“すまぁとふぉん”という通信機器です、ご存知ですよね?」

「えぇ、おじ様からいただいた知識の中にあります……」


「ヤスダを眷族化した翌日、彼に資金を預けて契約してもらいました。なので、これは彼の名義になっています。ここに先日の滞在期間中に得た協力者達の連絡先を登録しましたので、特に問題はありません」


 淀みない言葉に吸血姫が頷き、事が上手く運んでいる現状に満足そうな表情を浮かべる。


「それとヤスダのマンションは最初に確認して合鍵も預かっておりますから、彼に関しては連絡が取れずとも合流できます。他の者は滞在時間の都合で住居を実際に訪れる事まではしておりませんけど……」


「構いません、報告書に記載されていた個人情報で十分です。それと、おじ様から向こうに滞在させる魔人を一人選ぶように言われています。誰か思いつくものはいますか?」


「う~ん、そうですね……」


顎先に人差し指を添えて考え込む吸血鬼の令嬢と姫君が意見を交わし、他にも幾つかの確認を済ませていた頃…… 彼女達がいる屋敷から戻り、私室で少し寛いだ魔王は最下層の一つ上にある訓練区画へ足を運んでいた。


なお、この階層は中央部の吹き抜け付近に環状の工房区画があるため、その外側を囲むように訓練施設が設けられており、その中の一つに天狼ヴィレダの姿がある。


上機嫌な彼女は尻尾を左右に振りながら、楽しそうにガンランスをぶっ放していた。


「あ、イチロー」

「よう、ヴィレダ、そのガンランスはどうだ?」


「あたし、コレ好きかもしれない。AZ-47と違って“どすん”ってなる!」


第二工房区画の青銅のエルフ達はミノタウロス族を想定してガンランスを作ったようだが、よくよく考えれば、速度と突撃力を持つ人狼族にも向いているかもしれない。


「何本か人狼族にも回してもらうか?」

「いいの?」


「あぁ、構わないさ、人狼族用にもう少し取り回しをしやすいように改良してもらおう。気づいた点があれば、第二工房にレビューを上げてやってくれ」


「わかったッ! 皆、コレあたし達も貰えるよ!」

「「「おぉ!!」」」


後日、嬉しそうな声を上げた彼らの希望を全て反映し、第二工房が心血を注いだガンランスは極端に短くなり、相手に突き刺して口径の大きい弾丸を直接撃ちこむ銃短剣(ガンナイフ)が生まれる。

面白いと思っていただけたなら幸いです!

ブクマとかで支援して頂けると小躍りして喜びます!!

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