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魔王、事の顛末を聞く

前々年以降、魔族側との対立が激化した経緯により王都(よう)するヴェルギア領は取り付く島もなく、現状改善のためには多少強引にでもエルゼリスの領主を此方(こちら)側に引き込むしかない。


(ゆえ)に領地貴族の(せがれ)として面識がある事や機微(きび)(さと)い性格から、橋渡し役を頼んだ伯爵家の次男坊に顛末(てんまつ)を問えば、彼は意味ありげな苦笑と共に肩を(すく)めた。


「“自ら選択肢を狭める愚行はしないが、取引相手とは直に会って話したい” との伝言を貰いました。何やら、ロイス侯爵の使い走りにされたようで(しゃく)ですけど」


「…… 我が君に足を運べと?」


軽く小首を傾げて、言外の圧力を掛ける鬼姫はさておき…… 仮に交渉が上手く運んだ場合、シュタルティア王国を構成する四大領地の内、三つまでが自勢力と良好な関係を持つことになる。


最後に残る王家の直轄領は軍事力や経済面で他より優れているものの、孤立した状況だと迂闊(うかつ)な行動はできないだろう。


そんな諸々の事情を踏まえ、“どちらが先に出向くべきか” など不毛な水掛け論を展開し始めた二人に対して、やや(わざ)とらしい溜息を吐いた。


「少しの労力で物事が円滑に進むなら重畳(ちょうじょう)だ」

「申し訳御座いません、出過ぎた真似を……」


しれっと何食わぬ態度でミツキが(うやうや)しく()び、変わり身の早さに呆れたクリストファが胡乱(うろん)なジト目となるのを見遣(みや)りながら、彼の立場に配慮した言葉を選んで掛ける。


伝手(つて)を頼っている訳だからな、(いな)やは無いさ」

「そう言って貰えると助かります」


「すまないが、顔合わせの段取りが付くまでは世話になる。差し当たり、他に聞いておくべき事柄はあるか?」


転ばぬ先の杖とやらで確認すると会談を想定してか、都市エベルの街中を流れる河川に新設した水車動力の冷蔵倉庫など、食糧保管の話に交易都市を治める侯爵が喰い付いた事も教えてくれた。


「冷却技術の原型になった製氷機は弟に勧められて二台購入しましたけど、夏場に温いワインを飲まずに済むので重宝してます」


「そうか、喜んでもらえて何よりだ」

「っと、少し話が()れましたね、後は……」


少々考える仕草をしたクリストファは少し暗い表情となり、エルゼリス領南部で蔓延しつつある疫病に言及する。


冬場に僻地の村落から始まり、今は近隣の町や小都市にまで被害が拡大しているとの事だ。


「… 具体的な症状をお聞きしても宜しいでしょうか?」

「えぇ、伝え聞いた範囲で良いなら」


愛用の鉄扇で口元を隠し、興味深げな視線を向けるミツキに応え、先日まで()の領地に滞在していた某家の次男坊が頷き、仔細(しさい)を語り出す。

★ 物語の書き手としての御願い ★


皆様の応援は『筆を走らせる原動力』になりますので、私の作品に限らずに縁のあった物語は応援してあげてくださいね!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] さっすが~侯爵様、話がわかる~ という訳で、次回は会談回ですね。 [気になる点] 良家の娘をくれてやるとか人間族に尻尾を振れとか言われたら…… 魔王様がドゥガチ総統みたいに……(-_-…
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