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魔王、グリフォン牧場へ赴く

()したる問題も無く、成功裏(せいこうり)に終わったディルド商会主催の(つど)いから一ヶ月半ほどが()ち、夏季を迎えた中核都市エベルでは早くも十数台の製氷機が稼働している。


ただ、一緒に昼食を取っているリーゼロッテは不満顔で愚痴など零していた。


「売れるのは分かっておったのじゃが、こうも忙しくなるとは……」

「ゲオルグ殿に懇願されてミザリア領にも(おろ)しているからな」


しかも既製品に加えて、エルミア(よう)する第3工房区画へ蒸気自動車に対応した車載型を発注していた筈だ。


他にノースグランツ領第二の都市エルメリア等からも発注書がマルコの下に届いており、幾つかは返事を保留していたりする。


如何(いかん)せん、現段階では工場制手工業(マニファクチャ)といった様相に近く、蒸気式の旋盤機や金属プレス機などは各工房に設置されているものの…… そこまで効率的な生産体制は構築されておらず、大部分の工程は青銅のエルフ族による職人技で成されていた。


「うぅ~ッ、このままじゃと新しい研究に着手できないのじゃあ。妾の溢れんばかりの熱意と知的探求心をどうしろと?」


「俺に聞かれてもな。部品単位の製造をエベルの鍛冶師達に任せたらどうだ?」

「下請けと言う奴じゃな! クックッ… 安い賃金で扱き使ってやろうぞ♪」


相応に欲求不満が溜まっていたのか、何故か悪い顏になったリーゼロッテがほくそ笑むのを見遣(みや)り、軽い溜息と共に地下ダンジョン第49階層にある食堂の席を立つ。


「やり過ぎてイルゼ嬢から苦情が来ない(よう)に抑えてくれよ」

「むぅ、付き合いが悪いのぅ、単なる諧謔(かいぎゃく)(たぐい)じゃぞ?」


愛らしい少女の姿でむくれる年齢不詳の青肌エルフにひらひらと手を振って別れ、幾つもの排気管が中央部の吹き抜けへ伸びる街並みを進んで階層連結部に向かう。


一階層(くだ)って辿り着いた謁見の間、そこにいつもの吸血姫はおらず、二本の小角を持つ和装の鬼姫ミツキが(たたず)んでいた。


「悪い、少し待たせたか?」

「多少は…… されども些事(さじ)に過ぎませんよ、我が君」


暗器の鉄扇で口元を隠しつつ、気に留める必要など無いと(うそぶ)くが、利に(さと)く腹黒な側面がある相手の言葉なので鵜呑みにしてはいけない。


そう理解していたところで微笑という名のポーカーフェイスの裏側、彼女の内面を推し量るのは困難かと僅かに思案していたら、小首を(かし)げられてしまう。


「ミザリア領への転移ゲート、私が開くべきでしょうか?」

「いや、此方(こちら)で受け持つ。場所はグリフォン牧場だったな」


長閑な名称が付けられた目的地は普通に軍事施設なので、例によって遠見及び転移の魔法を阻害する魔導装置により直接的な転移ができない。


一度、多少離れた外縁部まで視覚を飛ばし、念の為に周囲の状況など確認した上で漆黒の転移門を開いた。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

ブクマや評価などで応援してくれれば、本当に嬉しく思います!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] もうかる事は良いことだ 氷製機の量産化ですね あとはパチ物を作らせない仕掛けとか必要ですね。 たとえばスパイ大作戦の音声テープみたいに 〉この氷製機は分解すると自然に消滅する。また使用…
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