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魔王、ミザリア領を勢力下に置く

一見すると険悪な雰囲気で双方が対峙し、傍に控える衛兵と人狼兵も鋭く睨み合うような絵面だが…… そこで話されている内容は情報共有を旨とした城塞都市ワルドでの顛末についてだ。


「ふむ、一度占領された事による損害はあれども、無為(むい)な略奪などが行われていないのは流石にフレスト卿麾下の軍団といったところですな」


「あの御仁と知己があるのか、ゲオルグ殿?」


俺が軽く疑問を投げれば、ミザリア領主は蓄えた顎髭(あごひげ)を撫でながら苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。


「勝敗が付くほどの大負けはしてないものの、手酷くやられた事がありましてな…… その時は(くだん)の城塞都市に籠城して彼奴(きゃつ)らの兵糧が尽きるまで粘ってやりました」


「それは…… 災難だったな」


一般的に籠城戦は心理的な負担が大きいため、嫌な記憶がいつまでも残ってしまう。


(まぁ、攻め手側が圧倒的に有利かと言えばそうでもないが……)


かつての大戦で別動隊を率いてゲリラ戦を仕掛け、敵方の補給線を分断させた事を頭の片隅で思い出しつつもゲオルグ殿との話を詰めていく。


「基本的には所属が王国から魔族側に変わるだけで、大きな変化を求めている訳ではないが…… ミザリア領内への根回しは済んでいるのか?」


「えぇ、うちの息子と魔王殿が遠征している間に済んでおります。ヴェルギア領とエルゼリス領の援軍拒否が許せなかったのか、すんなりと配下の貴族達も頷きましたぞ」


恐らくはその流れを考慮してなお、魔族と協調するノースグランツ領を警戒して軍の派遣を避けたのだろう。俺が言う立場でもないが、まさに内憂外患だな……


「ともあれ、これでミザリア領も我らと道を同じくするわけですわね」


「あぁ、そうだな…… 先ずはゲオルグ殿が以前提案していたように街道の整備などから始めよう」


ノースグランツ-ミザリア間は平地が多いために工事がし易く、既存の街道を一般的な蒸気トラックが走れるように再整備するだけでも十分な効果が得られる。


(であれば、動力に魔導式蒸気機関ではなく通常のものを用意すべきだな)


魔力の高い青銅のエルフ達が運用するのは良いとして、それ以外でも扱えるような汎用性も必要となってくるだろう。代替となる燃料は石炭か、若しくはそれを乾留させたコークスか……


「おじ様、どうかされましたの?」

「いや、 少々考え込んでしまった」


小首を傾げて金糸の髪を揺らし、深紅の瞳で見つめてくる吸血姫に暫時の思考から引き戻され、対面の相手に意識を向け直す。


「…… どのような協調ができるかについては互いの官吏を交え、追々検討させましょう。それで宜しいかな、魔王殿?」


念を押してくるゲオルグ殿に頷いた後、スカーレットも交えて残りの合意事項を取り纏め、魔族による中核都市占領と領主の恭順を領内全域へ通達する準備が整う。


その翌日には報せを届ける伝令が各都市へ向かい、想定される混乱に備えた俺達は半月ほどベイグラッド家の居城に留まる事になった。


全てが終わるまでに相応の時間を要したものの…… 遅れて城塞都市ワルドから帰還したクリストファ率いる領兵と入れ代わり、勢力下にミザリア領を組み入れた俺達は約ニヶ月振りにノースグランツ領へ帰還していく。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

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