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城塞、北門が解放される

「死ねやぁああッ!」

「なにをッ!!」


傾斜のある土塊の橋を駆けあがってきたミザリア領兵は敵兵が繰り出した斬撃を中型盾で脇に弾き、間髪入れずに渾身の力で鉄剣を腹に突き込む。


この時代の基本的な兵士の鎧は生産性に重きを置いて数を揃えた粗悪なチェインメイルであり、斬撃耐性はあれども衝撃を殺すことができずに損傷を受けるし、刺突ならば防ぐことは難しい。


「ぐぶッ、あぁ……ッ、く、道づれに、してやる……ぜ」

「お、おまッ、うわぁあああッ!?」


リベルディア兵は貫通した鉄剣に構わず一歩を踏み出し、ミザリア領兵の手を掴んで諸共に落下していく。それにより空いた空間を埋める様に、両軍とも後続の兵士達が歩を進めて無骨な鋼を打ち鳴らし合った。


同様の光景は複数ある土塊の橋で繰り広げられており、鋭く突き込まれたショートソードを鉄剣で逸らしながら半身で躱したミザリアの熟練兵が返す刃で敵兵の喉元を切り裂く。


「がはッ!? ッ……ッあぁ……」

「遅いんだよッ!!」


血飛沫を飛ばした喉を左手で抑えたリベルディア兵の腹を蹴り飛し、止めの突きでチェインメイル越しに心臓を穿つが…… 斃れた相手の後ろからホイールロック式短銃の銃口が向けられる。


「うおわッ!?」


慌てて後ろに倒れ込んだ彼の頭上を紙一重で弾丸が通り過ぎ、背後から被弾した仲間の呻き声と倒れる音が聞こえた。


「ここで押し留めるッ、気合を入れろ!!」

「「「応ッ!!」」」


先ほどの銃撃を放ったリベルディアの騎士長レナードが北門を突破させまいと剣戟を重ねる配下に檄を飛ばすものの、援軍に駆け付けた第三中隊は狭い城壁に上がる事ができずに遊兵となっている。


さらに先日の都市ウォーレン空襲で大敗を喫したドラグーン中隊は数を半減させており、空には上がっているだけでミザリア領に肩入れするノースグランツの吸血飛兵を警戒し、北門を護る第四中隊の直掩には来ない始末だ。


いくら精強たるリベルディアの騎士長でも思わず愚痴が零れてしまう。


「ちぃッ、真面目に戦うのが馬鹿らしくなるッ!!」

「くッ、レナード様、吸血鬼どもが攻勢に出たら北門を放棄しましょう!」


「支えきれませんし、こんな縁の無い土地で死にたくないです!!」

「えぇいッ、泣き言をいうなッ!!」


とはいったが、そろそろ限界が近づいているのはレナードも理解しているし、均衡が崩れれば鎧袖一触となるだろう。


「引き際か……ッ!?」


険しい表情で戦況を俯瞰しようとした彼の視線がミザリア領兵の背を踏みつけ、軽やかに中空へ舞う銀毛の人狼娘が構えた銃口を捉える。


「その大将首ッ、もらうよッ!!」


素早く狙いを付けたヴィレダがAK-46の銃床を肩に押して当て、トリガーを二度引いて北門に詰める中隊を指揮していると思しき騎士へと射撃を行う。


「ぐッ、うあッ!」

「レナード様ッ!!」


チェインメイルを貫通して脇腹に一発、防具に覆われていなかった太腿を弾丸が貫通して、リベルディアの騎士長がよろめいて倒れるのを配下が支え、防壁の内側へと退避させていく。


被害はそれだけに留まらず、至る場所で人狼兵がミザリア兵に混じってBT98やAK-46による散発的な銃撃をリベルディアの者達へと浴びせ、機を窺っていたスカーレット麾下の吸血飛兵も動き出した。


「くそがッ、勢いづきやがって!!」

「「うぉおおおおッ!?」」


「ぐッ、つぅ……ッ、総員退避だ、第三中隊と合流して一時後退する!!」


従騎士の肩を借りながらも責任を果たすようにレナードが声を張り上げて撤退命令を発し、彼が指揮する第四中隊は徐々に後退を始める。


対峙するミザリアの攻城隊第一陣の指揮を執るゼルライトは性急な進撃を選択せず、多くの住民が別区画へ避難しているために人気が少ない北門周辺の確保を優先し、日が沈みゆくのと共に城塞都市での初戦はひとまず終了した。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

ブクマや評価などで応援してくれれば、本当に嬉しく思います!!

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