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魔王、概念装 “造成” を活用する

「くそッ、ミザリア領兵が攻めて来やがる! もう少し待てねぇのかよ!?」

「後、半刻もあれば第三中隊と交代の時間だったんですけどね……」


城塞都市北門に陣取るミザリア領軍を睨みつつ、第四中隊総勢200余名を指揮するリベルディアの騎士長レナードは内心で溜息を吐いた。自身も部下と同じ事を考えていたものの、指揮官がそれを口にする訳にはいかないのだ。


「グダグダ言わずに、フレスト師団長へ伝令を出せ! 弓兵隊ッ、奴らが外堀で足を緩めたところを狙い撃つぞ!!」


事前に部隊の過半数に弓矢を装備させて防壁へ昇らせ、残りの兵は北門裏に控えさせて万全な体勢を取っているため、早々に此処が落ちる事は無いのだが……


眼下の光景に彼は強い違和感を覚えてしまう。


「奴ら、一体どういうつもりだ」

「…… 何やら気味が悪いですね」


迫るミザリアの歩兵隊は碌な攻城装備を持たず、無謀にも中型盾を構えたまま距離を詰めてくる。まるで、自分達が取った戦術を模倣しているようで笑えない。


だが、先日の奇襲はドラグーン第二小隊の騎士リリアが保有する “偏光” の概念装が前提となっており、同種の異能を持つ者が相手方にも都合よくいる可能性は限りなく低い筈だ。


「まさかな……ッ、何だ!」


もう少しで連中が弓矢の攻撃範囲に入ると思った瞬間、鈍い地響きと共に外堀の向こう側の大地が隆起して、防壁へ広い幅を持つ土塊の橋が次々に架かっていく。


「おじ様の概念装 “造成”、ここまで大規模なものを直接見るのは初めてですけど…… お父様の “万物流転” に匹敵する程の汎用性ですわね」


敵弓兵隊から十分な距離を空けて滞空し、上空から様子を眺める吸血姫が思わず感嘆の声を漏らして、それを成した自身の主へと視線を転じた。


彼の魔王はミザリア領兵の第二陣後方にて大地へ掌を突き、周囲を固める魔人兵から共鳴魔法の応用で魔力供給を受け、自身の異能を駆使して大地に干渉している。


「ははッ、やってくれるじゃないか!ノースグランツの魔王殿!!」


防壁の上に伸びる土塊の橋を目の当たりにして、先陣を切るミザリアの騎士長ゼルライトは口端を釣り上げて惜しみない喝采を上げた。


軍議の段階で聞いた時は眉唾物だったが、これで一気に北門へ攻め入る事ができると思えば否応にも士気は高まる。


「総員吶喊ッ、リベルディアの愚者どもから我らが都市ワルドを奪還するぞ!借りを返してやれッ!!」


「「「うおぉおおぉおおッ!!」」」


気勢を上げたミザリア領兵の第一陣が防壁に架かる橋へ向かって、斜め上に盾を構えながら駆け出し、リベルディア騎士国の弓兵隊がそれを迎え撃つ。


「ちッ、遠慮するなよお前ら、総員撃てーッ!!」

「「「応ッ!!」」」


響く怒号に従い、防壁の端に片足を掛けたリベルディアの弓兵が一斉に矢を射かけていく。


その中には鏃に火薬を詰めた陶器製の炸裂弾が紐で括り付けられた矢が少々混じっており、陶器から伸びた導線には火が点いていた。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

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