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竜騎兵、吶喊する

「ふっ、燃えるぜッ」

「そんな事言ってたら、真先に死ぬんじゃね?」


「隊長、マジ突っ込むんすか?」

「仕方ないだろう、フレスト師団長の厳命だ」


比較的低い高度を漂う雲間に隠れ、砕けた雰囲気で軽口を交わしながら、篝火が幾つも灯る城塞都市を高空から見下ろすのはドラグーン第二小隊の竜騎士達10名だ。


今回投入されている第一から第十二小隊の中でもその実力は折り紙付きだが……


「たいちょ、この作戦が上手く行った結婚してください~」

「やめろ、リリア、変なフラグを立てるなッ、死ぬ時は一人で死にやがれ」


「え~、昨夜はあんなに可愛がってくれたじゃないですかぁ」

「勝手に話を捏造するんじゃねえッ!」


小隊長リディックの下に一癖ある精兵達が集まるこの部隊はそれ故に “第一” の名を冠する事は出来ない。もっとも、彼らは仕事が忙しく成りそうなだけの称号など興味もないが。


ともあれ、一つ咳払いを入れて皆の意識を切り替え、小隊長は改めて言葉を紡ぐ。


「いいか、機会は一度だ…… いけるか、リリア?」


「ん、任せて♪」


“偏光” のリリアを中心に燐光を放つ球状結界が生じて、小隊の竜騎士達を覆う。


幼い頃、孤児院で苛烈ないじめを受けていた彼女が発露させた物理法則に干渉する “偏光” の概念装、それは光を捻じ曲げて姿を隠す特殊な結界を形成する。なお、効果範囲は最大で半径20m前後となる事が軍部の調査で判明していた。


結界内部から発する光は捻じ曲げられるため、外側から内側を窺う事はできないが、逆に結界外部からの光は通常通り直進するので、内側から外側の景色を直視する事が可能である。


地球で言うところの高度なステルス性能を持つ不可視化の結界を展開し、小柄な騎士は “ふうっ” と短く息を吐き出した。


「いつもながら不思議なものだな、俺達からは普通に見えているのに……」


「まぁ、そんなものだと思うしかないですよ、概念装なんて」


淡い燐光越しに上空から山脈地帯と城塞都市を眺めて感慨にふけるリディックだが、悠長にしている暇はない。何しろ “偏光” の竜騎兵リリアが纏う概念装には時間制限がある。


(さっさと終わらせて、のんびりと風景でも堪能しながら凱旋させてもらおう)


この世界において、竜騎兵だけが見る事ができる高空からの展望は格別だ。


恐らく地位や名誉なんてくだらないモノより、竜騎士を志す者が欲して止まないのは大空への憧れだろう。


少なくとも自身と部下である第二小隊の面々はそうだった。


ただ、空を飛ぶためには軍に属する必要があり、戦の度に駆り出されてしまう。今も眼下では歩兵連隊が喊声を上げながら碌な攻城兵器も無しに吶喊し、それを竜騎士の三個小隊が支援する。


同時に東西からも各三個小隊の竜騎兵が襲撃を仕掛ける手筈だが、不用意に接近すればバリスタの餌食になるため、自分達以外は陽動に過ぎない。


「さて、我らが殿下の為に槍働きをするかッ、総員突撃!」

「「「応ッ!」」」


号令一下、喧騒のただ中にある城塞都市南門へと彼も身を投じていく。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

ブクマや評価などで応援してくれれば、本当に嬉しく思います!!

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