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魔王、現地の銃器に興味を持つ

「ゲオルグ殿、そちらの衛兵の銃を見せてもらっても?」

「ふむ…… 当家の最新武器なのだが」


ちらりと壮齢の男が随伴する人狼兵の散弾銃を一瞥する。それは当然に彼らが持つ原始的な銃器と比べるまでもない。


「お父様、良いではありませんか、僕達の工夫なども魔族の方々からすれば既に遥かな過去のものでしょうから」


「……業腹だが正論だ、おい」

「はッ、どうぞ」


恭しく衛兵が両手で主へと銃を捧げ、無造作にそれを掴んだゲオルグ殿が此方に差し出す。


「これは…… まさに種子島だな」

「色々と創意工夫させてもらいました♪」


レドリック少年が良い笑顔で言う様に、マッチロック式の西洋銃というよりは凝り性の日本人が改良に改良を重ねた瞬発式軽量火縄銃に近い。


見た目よりも軽いそれの火蓋が閉じている事を一応確認して銃身を覗き込むと、やはりライフリングは無いものの、大口径で重い鉛玉を込める仕様を考えれば威力は現代的な銃を凌駕するだろう。


「あ、“らいふりんぐ” ですか? ついさっきエルミア班長に教えてもらったばかりで、今はありませんけど今度試してみます。ん~、銃身に溝を掘るってどうやるんでしょうね! いくつかは思いつきますけど、興味が尽きませんッ」


「…… エルミア、後でお仕置きですわね」


「すみません、つい青銅のエルフの方々の装備に興味が沸いて、しつこく聞いてしまいました。お詫びと言ってはなんですけど、僕もとっておきをお見せしますよ」


背筋が寒くなるようなスカーレットの声を聞きながら、お詫びどころか是非見て欲しいという雰囲気でレドリックが懐のホルスターから護身用の短銃を取り出す。


「ちょっ、レド!?」


兄であるクリストファが止めようとするも間に合わず、俺は差し出されたそれを受け取った。


「こんなものまであるのか……」


「ふむ、ホイールロック式ですな」

「“ほいーるろっく” 式…… それは何ですの、ゼルギウス?」


最早や近頃は銃器と料理のスペシャリストと化した老齢の吸血鬼が自らの主に懇切丁寧に説明する傍らで、俺はホイールロック式短銃の構造を確認する。


ゼンマイを動力としてホイールを回転させ、火打石を打ち付けて発火させる気密性の高い機構をしており、雨の日でも問題なく扱う事ができるようだ。


「クリストファ殿、此れは一般的にあるものなのか?」


「いえ、弟の自作です。でも、似たような構造の銃を先進国の好事家は自前で作っていると聞き及んでおりますが……」


ホイールロック式があるという事はフリントロック式の銃があってもおかしくはなく、近いうちに出てくるのかもしれない。パーカッション式に至るまでは時間がかかるだろうが、惑星ルーナに持ち込んだ地球製銃器の影響でそれも早まるのかもしれないな……


「魔王殿、そろそろ……」

「あぁ、すまないゲオルグ殿、手間を取らせた」


ミザリア領主に促されて応接室に通された後、ミツキ麾下の鬼人兵から報告を受けていた内容とほぼ同じ状況を聞かされ、二日後にゲオルグ殿が指揮するミザリア領兵達と城塞都市ワルドに出立する事が取り決められる。


なお、滞在中は城に泊るという事で部屋へと案内されたのだが……


「何故、スカレが此処に……」


「む~、おじ様、最近はリーゼロッテやイルゼにばかり構って、私の扱いがぞんざいなのですわ!それに此処はベイグラッド家の城、護衛も必要でしょう?」


「いや、お前も護衛が付く立場……」

「うぅ~、えいッ!」


 カプッ


言い切る前に飛びつかれて思わず抱き留めると、首筋にちくりと久しぶりの痛みが走り、例によって少々の血と力が抜け落ちる。あぁ、寧ろお前が襲ってくるわけだな……


「野暮な事を言ってはいけませんよ、おじ様♪」


そのまま有無を言わさずに押し倒されてしまうのだった。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

ブクマや評価などで応援してくれれば、本当に嬉しく思います!!

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