魔王、状況を整理する
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輜重兵卒を含む総兵数で3000名強とすれば旅団規模になる。
「…… イルゼ殿、ミザリア領の戦力は?」
「クリストファ殿から聞いている話では、開戦までに2000名強の領兵が山岳地帯の城塞都市ワルドに集結しているようです。多分、ミザリア領で動員できる兵の最大数ですね……」
ミザリア領の人口は約30万なので、その辺りが現実的な数値だろう。先程と同じく輜重兵卒を20%ほど割り当てて補給を維持するとすれば…… 戦闘に参加できる兵数は1600名程だ。
実質的には、山岳地帯の城塞都市ワルドを擁する1600名程のミザリア領兵と2500名程のリベルディア騎士国の旅団との戦いと考えれば良い。
「………… 援軍、要らないんじゃないか?」
地の利と補給線の維持しやすさ、堅牢な城壁があれば単独でもリベルディアを押し戻せると思うが…… ぴこんとケモ耳を動かして、呟きに反応したヴィレダに否定される。
「それは違うよ、イチロー。相手は何か勝算があるから動くんだよ、用兵の基本!」
軍事に関する場合に限定すれば、戦いの中で生きる人狼族である彼女は理屈を抜きにしても正鵠を射る事が多い。
「それもそうだな」
「ですね、“利が無い限り攻撃するな”とも言いますし……」
頷きながらミツキもヴィレダに同意を示す。
「恐らくドラグーンの存在ですわ、おじ様。飛兵で圧倒する事ができれば、城門破りも容易くなります」
「だからこそ、ミザリア領のゲオルグ殿も魔王殿にその対応を期待しているのでしょう。スカーレット殿麾下の吸血飛兵がありますから」
いつもの癖で金糸の髪を弄りながら思索するイルゼ嬢の言葉に、スカーレットが嫌そうな表情を浮かべた…… まぁ、300年前の戦争でも吸血鬼とドラグーンは互いを潰し合う天敵同士だったからな。どちらが優位という訳でもない故に泥沼の潰し合いになる。
「ふっふ~、ここで妾がトウドウに取り寄せさせた “H&K PSG” が役に立つのじゃッ!」
「うぅ~、あれ、当たらない」
「と、ヴィレダは言っているが…… というか、流石に訓練期間が足らないだろう」
「一応、ゼルギウスがある程度使える様になりましたけど…… ですよね?」
「はい、お嬢様」
聞けば、扱いづらい武器を好んで使う玄人志向の吸血鬼の数名が狙撃銃に嵌り、相応の腕にはなったらしい。
(しかし、何でも卒なくこなすな…… ゼルギウスは)
最近は地球の料理研究ばかりしていると思っていたが、炊事洗濯から狙撃まで……
「後は当てやすいという事で、“ぶろーにんぐ” が役に立つかもしれんのぅ」
BT98は狙撃銃と一緒に藤堂氏に取り寄せてもらった散弾銃だ。確かにドラグーンが駆る飛竜とすれ違いざまにぶち込めば効果があるかもしれない。
が、ゼルギウスに藤堂氏も、うちの御老体たちは無駄にハイスペックだな……
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