天狼、かき氷に悶える
エタらない様に頑張ります!
都市エベルの会議室にシャクシャクと細かく砕かれた氷にスプーンの刺さる音が鳴る。
「まさか、氷にこんな使い道があったとは……」
しきりに頷きながら魔人グレイドが食べているのは言わずと知れた“かき氷”だ。
「あたし、これ結構好きかも♪」
「~~♪ (おいしぃ)」
ヴィレダとベルベアの人狼娘達がしっぽをフリフリしながら、勢いよく食べているが……
「ッ、うぅう~、頭痛いぃ~~」
「ッ、くぅ…… (何、毒なの!?)」
例によって頭痛を覚え、頭を抑えて身悶える。
「…… 魔王殿、まさかとは思いますが」
その光景にかき氷を食べる手を止め、イルゼ嬢が碧い瞳をすっと細めながら訝し気に俺を見詰めてきた。
「冷たいものを一気に食べるとあの様になる、自然の摂理だ」
「おじ様の言う通りですわよ、イルゼ。美味しいからといっても拙速は禁物ですの」
しれっと、金髪紅瞳の吸血姫がスプーンで大粒イチゴのジュレと餡がのったかき氷を掬って口に運ぶ……
先日、俺とスカーレット、イリアの三人で新宿区内にあるTOR〇YA CAFÉでかき氷を食べた際、未経験の彼女だけが頭痛に苛まれてテーブルに突っ伏していたのは内緒だ。
「妾は事前に “いんたーねっと” で調べたからのぅ、学習済みじゃッ! 故にゆっくり、そーっと食べておるでのぅ、頭痛はこないのじゃッ」
という、青肌エルフの手にはスマートフォンが握られており、その付近に飴玉程の大きさをした転移ゲートが開いている。
「ふっふ~、どうじゃレオン、妾の考案した小規模転移方陣は便利であろ? このゲートの先はベイやミア達の部屋に繋げてあるでの、そこの “わいふぁい” とやらを経由しておる。じゃから、“ぱけっと” の制限も受けないのじゃ!!」
因みにそのスマホは合同会社“IRiA”が法人契約しているもので、向こうとの連絡手段としてリーゼロッテとスカーレットの二人に渡してある。
さて、ゼルギウスが作ってくれたかき氷も美味しいが、本題に入らねばなるまい。
「では、都市エベルの魔族区画建設についての打ち合わせを始めよう」
その言葉に皆が頷いて、リーゼロッテが用意したA4サイズの企画書を手に取る。
「新しい区画を作ると言っても先ずは箱物からなんだが…… 手筈はどうなっている?」
「うむ、先日からエルミア達が開通させた道路を経由して、木材と鉄骨、煉瓦を運んでおるのじゃッ! 鉄骨はダンジョンの反射炉で作っておるのじゃが…… 生産性があまり高くないでのぅ……数が足らないのじゃぁ」
しょんぼりと彼女は黄金色の瞳を曇らせる。
「…… 区役所と主要施設のみ鉄骨コンクリートで、その他の住居などは煉瓦と木材で作りますわ、おじ様」
という事は、鉄骨コンクリート造りと煉瓦造りが混在するわけか……
「コンクリートの生産状況…… というか、コンクリートって何で出来ているんだ?」
「乾燥粘土、石灰石、珪石、鉄鉱石じゃッ! それを“アルミナ”精製でも使った蒸気機関式粉砕ミルに適切な割合で放り込んで、粉砕混合させるのじゃッ!!」
俺の呟きに水を得た魚の如くリーゼロッテのテンションが上がる。先程、ちょっとだけ凹んでいたのは何だったのだろうか……
「で、程よく混ざり合った混合物を焼成すると “くりんかー” の出来上がりじゃ! これを石膏と一緒にまたミルってしまえばセメントができるでのぅ、これに砂利と砂、水を加えると “こんくりーと” が生まれるのじゃッ!!」
「セメントは煉瓦の接合に用いるモルタルの原料にも使えます、中々に有効な建築資材だと思いますわ」
との吸血姫の言葉にイルゼが食いつく。
「…… 魔王殿、建築作業にエベルの大工達を加えてもらえませんか?」
「構わんが…… 可能なのか?」
「異種族共栄の思想を持つ星の使徒の信者から選抜します、それに質の良い建築資材や技術に関われるとあれば職人達に、ひいては都市にも利がありますから」
この騎士令嬢改めノースグランツ領主は地下ダンジョンで見聞した技術を都市エベルに普及させていこうと考えている節がある。既に工芸職人ギルドへの蒸気機関の提供依頼も来ていた…… まだ、返答は保留しているが。
「わかった、現場指揮は青銅のエルフ達、実働はミノタウロス族とエベルの建築従事者で進めていこう…… 建設従事者への支払いはどうする?」
「そこは都市エベルの事業の一環として予算を組みますので…… 後、気が早いですけど、新しい区画への徴税権はどうなるのでしょうか?」
あぁ、その問題もあったな。
「そこは要検討だが、あくまで都市エベルの一区画として融和させるつもりだからな、都市法に準拠するつもりだ」
「ありがとうございます、魔王殿。それならば安心して開発援助を出せますね」
にっこりと金髪碧眼の美女が微笑む。彼女にとっては新区画の管理権限の問題は割と重要な案件なのだろう……
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