表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/196

死因?それは強制転生です

「…… スカーレット様、地下30階層が突破されました」

「そう、ギリアム卿は?」


「我が主は討ち死に致しました、申し訳ございません、ご遺体を持ち帰る事も出来ずにッ」


此処は北部森林地帯に入り口があるダンジョンの最下層、謁見の間。そこには300年間、座る者の無い玉座が設置されている。魔王城陥落時に持ち出したものだ。


それを眺めたスカーレットは強く唇を噛む、尖った牙がその唇を僅かに裂き、血が滴るも気に留めない。自分が幼い頃に魔王レオンハートが勇者と刺し違えてから長い時が経ち、仲間を失う事には慣れた彼女ではあるが…… 天狼のギリアムは幼馴染みだ。


「この話、既にヴィレダには?」

「…… 怒り狂うヴィレダ様を一族総出で抑えております」


「彼女に伝えてください、卿の死は無駄ではないと。先程魔王の魂を呼び戻すために必要な魔力が揃いました。それが卿の犠牲によるのは皮肉な限りです……」


魔族に残された最後の生存圏であるダンジョンでは、彼女の術式により敵味方問わず、落命した際に拡散する魔力が聖杯に集められる。故に先程、良質な魔力が一息に注がれてきた事もあり、地下30階層の防衛に出ていた天狼の幼馴染みが死んだことは薄々ながら気づいていた。


一礼して下がる人狼の兵士を見送った後、スカーレットは謁見の間から王の寝室へと向かい、そこに変わらない姿で眠る自身の主を見遣った。既にかつての致命傷は治癒されているが、身体には魂が宿っていない。


「おじ様、先程、ギリアムが逝きました。彼や私の父母も既に亡くなっています。きっと貴方でしたら、悲しまれるのでしょうね…… 碌に皆を護れなかった私を叱ってください」


そっと魔王の身体を起こし、口元に聖杯をあてがって赤い液体を飲ませる。それは奇蹟を成すため、彼女の血を触媒として集められた膨大な魔力を含む生命の水だ。


「さあ、起きてください、おじ様」


……………

………


それは、問題の見つかったシステムのバグを徹夜で修正している時だった。不意に誰かの声が聞こえ、直後に異常な睡魔に襲われて意識が朦朧としてくる。


「しまったな…… もう若くないアラフォーのおっさんに徹夜はキツかったか?」


目頭を押さえて揉み解し、何とか頑張ろうとするも眠気を堪える事が出来ない。


「ああ、これは無理だな…… 部長、すいません、復旧は間に合いそうにないっすわ」


そう呟いて、机に突っ伏したにも拘らず、微睡む俺の頭の中では何故か“起きてください”との若い女性の声が聞こえる。


「いや、無理言うなよ」


だって、君の声を聴くたびに眠くなるんだぜ?

どうしろと言うんだ…… も、駄目だ。


その日、東京にあるシステム開発系会社のオフィスで一人の男の遺体が発見され、ニュースに取り上げられるも大した扱いをされず、大半の人々の記憶に留まる事なくさらりと流れていく。


“田中一郎(35)が都内のオフィスで机にうつ伏せになったまま亡くなっており、過労死とみられます”


これは絶滅寸前、来年の春を迎える事ができないと言われた魔族を、強制的に転生させられたおっさんが救う物語である。


……………

………


面白いと思っていただけたなら幸いです!

ブクマとかで支援して頂けると小躍りして喜びます!!


★ 物語の書き手としての御願い ★


私の作品に限らず、皆様の応援は『筆を走らせる原動力』になりますので、縁のあった物語は応援してあげてくださいね。


『面白い』

『頑張ってるな』

『応援しても良いよ』と思って頂けたら


下記の評価欄から応援をお願いします。

※広告の下あたりにポイント評価欄があります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 死因が強制転生って言うのは斬新ですね! 更新通知で気になってきちゃいました! のんびり読み進めていきまーす!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ